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石狩川治水史(3)

石狩川治水史(3)

  • 第1回石狩川治水史 前編
  • 治水にかかわる二つの思想がぶつかりあう -岡﨑文吉と沖野忠雄の対立-
岡﨑文吉が治水調査会を率いる
 原始河川そのままに暴れる石狩川は、いかにすれば抑え込めるのか。1898年(明治31)の大洪水の翌月に設立された「北海道治水調査会」の8人のメンバーは、さっそく調査にとりかかった。その中心となったのは、道庁の技師だった26歳の岡﨑文吉である。
豊平橋側面(岡﨑文吉設計)(明治31)の写真
 岡﨑文吉は1872年(明治5)に、岡山県に生まれた。よほどの秀才だったらしく、15歳で年を偽って、札幌農学校工学科に第1期生として入学。優秀な学生に対して学費が免除される校費生となった。
 当時の札幌農学校はほとんどの講義が英語で行われたというから、岡﨑の英語力も相当なものであったにちがいない。卒業後も給費研究生として学校に残り、2年後の1893年(明治26)には、21歳の若さで札幌農学校助教授に就任した。また、1896年(明治29)には、道庁の技師に任ぜられている。

蛇行した流れを生かす「自然主義」
 治水調査会は、水位観測所を設置して観測人を配置し、資料を収集して解析するという地道な作業を数年にわたって続けた。
 その一方、岡﨑は1902年(明治35)にアメリカとヨーロッパに1年間出張して、河川管理の実状を視察し、治水理論を学んできた。その成果は「欧米治水調査復命書」にまとめられているが、そこではフランスのローヌ川の捷水路(しょうすいろ・ショートカット)方式に批判的な立場をとる一方、アメリカのミシシッピー川の蛇行を生かした治水に共感している。
 岡﨑は、ゆるやかに蛇行する石狩川での水運を、将来も生かしたいと考えていた。
 岡﨑は、調査会による水位の調査結果、1904年(明治37)の大洪水の際の流量のデータなどを基に、欧米での事例を参考にして、「石狩川治水計画調査報文」を1909年(明治42)に道庁に提出し、石狩川改修の方向性を明らかにした。
石狩川鉄筋凝混土単床及び柳枝工護岸工事(大正初)の写真
 この調査報文で、岡﨑は蛇行した流れはそのまま残し、決壊しやすい護岸を補強するとともに、別に放水路を開削して、洪水時の水位を低くするという方針を打ち出した。
 これは岡﨑の「自然主義」と呼ばれているもので、河川を矯正し過ぎることを避け、自然との調和を図ることをもっとも大切にしている。また、岡﨑は森林が原始的河川の荒廃を防ぐことを明らかにし、河畔に多くの木を植えることを提唱した。

ショートカット工法への転回
 石狩川治水計画は、岡﨑の思想に基づいて進められることになり、岡﨑自身が「石狩川治水事務所長」として、1910年(明治43)に石狩川第1期治水工事をスタートさせた。工事は生振~篠路の放水路の掘削から始まった。しかし、工事は財政難でなかなか進まない。そのうち、岡﨑たちの行く手に思わぬ障害が現れた。
  • 生振捷水路計画図(昭和元年当時)の写真
 1917年(大正6)、沖野忠雄内務技官が来道し、石狩川の改修について岡﨑文吉との間で意見が交わされた。
 沖野忠雄といえば、日本の土木学会をリードしてきた重鎮であり、大阪築港、大阪水道、淀川改修工事などを、心血を注いで完成させたことで知られる。沖野は、1875年(明治8)にフランスに渡り、パリ中央諸芸学校に学んで建築技師の免状を得た。フランスのローヌ川に代表されるフランス流の河川工学を学び、日本でもそれを普及させてきたのである。
 岡﨑の自然主義と沖野の捷水路(ショートカット)主義は、真っ向から対立せざるをえなかった。当時、岡﨑45歳、沖野63歳。論争は、翌年、岡﨑が北海道を去ることで終結した。
石狩川の写真
  岡﨑の退任により、石狩川の改修の方向は、大きく転回することになる。
 1918年(大正7)から1969年(昭和44)までの半世紀にわたって、石狩川の改修は一貫してショートカット工法で進められることになったのである。たしかにショートカット工法により、流下能力が高まって洪水は抑えられた。
 また、水位が低下したことにより、泥炭地の開発が進んだ。もし、ショートカット工法が採用されていなければ、石狩川流域の開発は大きく遅れていただろう。沖野の主張した捷水路工法は、歴史的に正しかったといっていい。しかし、その一方でいま、“環境”の立場から、岡﨑の自然主義がふたたび評価されつつあるのも確かである。この二つの理論は、それぞれの歴史的な役割を果たした、あるいはいまも果たしつつあるといっていい。
《後編に続く》
※参考文献
 『石狩川治水史』北海道開発局・石狩開発建設部発行(1980年)
 『水害』北海道開発局・北海道発行(1981年)
 『石狩川通信-石狩川の流れ』久米洋三編、石狩川開発建設部発行(2000年)
 『流域発展の礎 治水』(財)石狩川振興財団発行(2002年)


お問合せ先

建設部 河川計画課 企画係

  • 電話番号:011-709-2311(内線5327)
  • ファクシミリ: 011-709-2144

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