平成23年度『公共建築の日』フォーラム

北海道の木と建物づくり
〜木の特性と可能性を探る〜

日  時
平成23年11月16日(水) 14:00〜17:00
場  所
札幌第1合同庁舎 2階講堂
講演 1
「北海道の木材と建物利用の可能性」
      大橋 義徳 【(地独) 北海道総合研究機構 林産試験場研究主任】
講演 2
「木造とヒューマンスケール」    井端 明男 【(株) アトリエアク 取締役】
コンテスト結果発表
フォトコンテスト
審査委員長 佐藤 雅英 【(財)日本写真家協会会員、(有)フォート・アクト代表】
ポスターコンテスト
審査委員長 後藤 精二 【北海道芸術デザイン専門学校校長】
(敬称略)



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■開会

●司会:皆様、本日はお忙しい中、お越しいただきましてまことにありがとうございます。私、本日の司会を務めさせていただきます門脇めぐみと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それではこれより、「11月11日公共建築の日」を記念いたしまして、フォーラムを開催いたします。
 開会に先立ちまして、主催者である公共建築協会北海道地方代表委員長でございます、北海道開発局営繕部長、内野井宗哉よりご挨拶を申し上げます。

●司会:皆様、本日はお忙しい中、お越しいただきましてまことにありがとうございます。私、本日の司会を務めさせていただきます門脇めぐみと申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 それではこれより、「11月11日公共建築の日」を記念いたしまして、フォーラムを開催いたします。
 開会に先立ちまして、主催者である公共建築協会北海道地方代表委員長でございます、北海道開発局営繕部長、内野井宗哉よりご挨拶を申し上げます。

■主催者挨拶

●内野井:皆様、こんにちは。ただいま紹介のありました北海道開発局営繕部長の内野井と申します。本日は、皆様ご多忙のところ、このように大勢お集まりいただきましてまことにありがとうございます。

 皆様ご承知かと思いますけれども、11月11日を「公共建築の日」としております。併せて、11月が「公共建築月間」ということになっておりまして、平成15年 にこういう形で創設されています。創設の目的は、広く公共建築について国民の皆様がたに理解を深めていだきたいということで、今回 で9回目のフォーラムということになっております。
 今年のフォーラムのテーマは「北海道の木と建物づくり」ということで、木材をターゲットとしたテーマ設定になっています。今回、なぜ木を取り上げたかと

いうことですけれども、昨年、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定され、施行されています。これは、私ども国交省だけではなくて、農林水産省との共管法ということになっています。法律の名前のとおり、公共建築においては木材を利用していかなければいけないということになっているわけですけれども、利用するに当たっては、実際には木材の供給サイド、つまり森林の健全な整備といったことまで考える必要があるということになっています。そういうこともあり、共管法ということで定めています。
 また、この法律を受けて、昨年10月、両省の告示が出されています。これは国の基本方針という形で取りまとめされており、耐火建築にしなくてはいけないものでない限りは、原則木造で造り、木造にできないものについても積極的に木材を使っていこう、といったことが書かれています。また、国の基本方針を定めなければいけないということで定めたわけでありますが、今後、都道府県あるいは市町村はそれぞれの方針を作ることができる、となっていますので、それぞれの市町村なり都道府県で独自の方針が作られていくものと考えています。そうしたタイミング、時期ということもあって、今回、木材をテーマとして取り上げています。
 この後、お二方にご講演をお願いしております。お一人は北海道立総合研究機構林産試験場の大橋様、もうお一人は株式会社アトリエアクの井端様です。お二人にはお忙しいところ快くお引き受けいただき、まことにありがとうございます。改めて、御礼申し上げます。さらに、公共建築月間ならびに公共建築の日の関連でフォトコンテストとポスターコンテストを行いましたが、審査結果を発表し、グランプリ等を取られたかたへの表彰も考えております。皆様がたには、講演だけではなく、その後もおつきあいいただければと考えています。
 私ども国交省では、木材を活用していくに当たって、「木造計画・設計基準」というものを作っております。これに基づいて今後、計画なり、設計を進めていくということになっていますが、これは、国あるいは地方公共団体だけではなくて、民間のかたでも十分使っていただけるようなものとしてまとめたものです。従前、木といえば、住宅では多く使われておりましたけれども、いわゆる事務所建ての建物については基準になるようなものはなかったと考えていますので、そういった意味で、活用していただけるのではないかと思っています。
 時間は限られておりますけれども、今日は最後までお話を聞いていただき、ポスターや写真を見ていただいて、公共建築について理解を深めていただければと思います。併せて、今日のメーンになっている木材のよさをしっかりと考えていただいて、今後、それぞれのお立場で扱っていただければと考えております。面白い話がいっぱいあると思いますので、楽しんで聴講していただければと思います。 (拍手)




■講演(大橋 義徳氏)

●司会: それではまず、最初の講演といたしまして、地方独立行政法人北海道立総合研究機構林産試験場研究主任の大橋義徳様から、「北海道の木材と建築利用の可能性」というテーマでご講演いただきます。
 大橋様は1969年、愛知県のお生まれで、北海道大学農学部林産学科をご卒業後、住宅メーカーを経て、北海道林産試験場に勤められ、北海道産の木材を使った建築材料の製品開発や技術支援に取り組まれています。
 それでは、大橋様、よろしくお願いいたします。

「北海道の木材と建築利用の可能性」

                          地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
                          林産試験場研究主任     大橋 義徳 氏

 私からは、勉強不足ではありますけれども、「北海道の木材と建築利用の可能性」というタイトルで、公共建築の話を含めて、これまでに見聞きし感じたことをお話しさせていただきます。
 昨今、国産材の利用が非常に進んできておりますが、まず国内の人工林の資源が非常に充実してきました。戦後の拡大造林によって整備された全国約1,000万ヘクタールの人工林が、成長量も蓄積量も増えて、ようやく使える時期になってまいりました。日本は世界有数の木材利用国ですけれども、世界じゅうから木材を輸入して、国内需要の8割近くを賄っています。ただ、昨今、中国や中東といった新興国の木材の需要が増え、関税問題でロシアの丸太が入ってこなくなるという資源ナショナリズムが進んできています。また、南洋材、北洋材の一部では違法伐採の問題もあり、木材の需給状況が厳しくなってきていると言えます。
 そんな中、国が一丸となって、林野庁を中心に国産材利用を進める施策を次々に打ち出してきました。すなわち、民主党に替わり「林業再生プラン」がまとめられ、国交省関係では長期優良住宅の推進方策の取り決め、今回の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の制定により、国を挙げて国産材を使おうということになってきております。現在、木材自給率は全国で約2割ですけれども、10年後には5割にまで引き上げようという計画です。現状では、建築用途の木材の主体は外材です。一方で、国産材の半分以上が建築用途に向けられていますから、そこを増やして自給率を上げようということで、建築分野の材料開発、供給体制の充実などが図られています。そこで、北海道は森林の豊富なエリアですけれども、森林資源と木材利用の状況についておさらいしたいと思います。
 北海道には554万ha、全国の2割ほどの森林面積があります。そこで生産される丸太の生産量は―ほかの都府県と比べたら大きなエリアなので当然ですけれども―都道府県ではトップを誇っており、まさに北海道は森林王国であります。そんな中、再生産可能な林である人工林を大事に使っていかなくてはいけません。道内の人工林は、森林全体の3割ほどです。そのうちトドマツが半分、カラマツが3割を占めており、北海道の人工林のほとんどはトドマツとカラマツの二つの樹種で占められています。面積はトドマツのほうが多いのですけれども、齢級構成を見るとカラマツのほうが先に植えられおり、蓄積としてはカラマツのほうが多く、トドマツよりカラマツのほうが使われています。
 では、年間にどれぐらいの丸太が使われているかといいますと、全道で約400万m切り出されています。そのうち半分がカラマツで、200万立方mほどです。次に、トドマツの人工林。あとは、まだまだ天然のエゾトドもありますし広葉樹もありますが、カラマツとトドマツが非常に大きな割合を占めていて、これを何とか使っていく必要があります。全国の丸太の生産量が1,800万m近く、その中でカラマツとトドマツが2割以上とかなり大きなウエートを占めていますので、北海道だけではなく日本全体から見ても、カラマツ、トドマツというのは非常に重要な資源となっています。本州はスギが多いのですけれども、スギはカラマツと似たような色合いで、赤みのあるものです。ヒノキは耐久性の高いものですが、色合いは、黄色っぽくてトドマツに似ています。
 では、トドマツとカラマツはどのように使われているかということです。
 トドマツとエゾマツは製材向けの原木が多く、製材に6割ほどが使われていて、そのうち建築用の製材に7割近くが使われております。一方、量の多いカラマツは半分ぐらいが製材されるのですが、建築用はわずか1%しかありません。最近、集成材のラミナが増えてきましたが、それを合わせても15%ぐらいしかなくて、残りは梱包用材ということです。これはこれで大事な産業資材ではあるのですけれども、できれば付加価値の高い建築用材を増やしていきたいというところであります。付加価値の低い用途がたくさんになってしまいますと、林家も、切った後、また植えようという意欲がなかなかわいてきません。最近は、皆伐面積を造林面積が下回る傾向が続いていて、植えられないところが少しずつ増えています。これは何とか、防がなければいけません。さらに、本州の合板工場向けが少しずつ増えておりますので、できれば北海道で価値を高めて、製品を作っていきたいというところです。
 そこで、北海道のトドマツ、カラマツといった人工林材を使っていくうえで、その材質と利用の特性というものを考えなければいけません。
 まず、カラマツの人工林材についてです。実はカラマツというのは、非常に残念なことに、ねじれやすく、割れ、ヤニが発生しやすいということで、三重苦といいますか、欠点の多い樹種です。ただ、ここ十数年の乾燥技術の向上によって、温度を高め、圧締、蒸煮処理をしながら、ねじれや割れ、ヤニを押さえ込む乾燥技術も普及してきており、製材でも使われだしています。また、集成材や合板のように、小さく切削したり、乾燥したり、接着したりすることでこういった欠点を取り除くことも可能となっておりますので、集成材とか合板の用途が増えてきています。
 一方、トドマツも欠点のない樹種であればいいのですけれども、人工林材ということもあって、高い含水率の部分が多いという欠点があります。そうすると、製品にしたときに含水率をそろえるのが大変という欠点があります。また、カラマツに比べても、木材の方向性によって収縮率の大きさがけっこう違って、スギとかカラマツよりも大きいので、どうしても割れが入りやすいという欠点があります。ですので、柱とか梁のような大きな断面を心持ちで作ると割れが入ってしまいますので、現状としては、板類ということで間柱とか垂木といった小さな断面で使われています。
 トドマツやカラマツは戦後、拡大造林によってたくさん植えられて人が手塩にかけて育てたものですが、天然林に比べると成長がいい分どうしても、初期の部分は未成熟でまだ子供の段階なので、木材の細胞自体が弱かったり、もろかったりします。さらに、割れたり、ねじれたりします。丸太の板を取ったときのヤング係数を測った場合、中のほうはヤング係数が低く、中のほうは強度的にも欠点の多いところです。
 ただ、木材を建築なり、製材として人間が使っていこうとすると欠点ではありますけれども、生物体としては、むしろ小さいときにねじれが大きいほうが……(木の)中心に近くなるほど繊維の傾きが大きくなっていくのですけれども、そうしたことで、風が来たときにもしなやかに曲がって倒れないということです。これは、生物としてはしかたのないといいますか、特性であります。ただ、これを何とか工夫して使っていかなければいけないことです。
 初っぱなから、トドマツ、カラマツの欠点ばかりを並べてしまいました。ただ、強度的には、国産の中では優れています。集成材というのは外側に行くほど強度の高いものを張り合わせて性能を出していくのですが、本州に多いスギに比べると、トドマツ、カラマツは1ランク、2ランクずつ強度の高いものを作ることができます。ですから、国産の樹種の中では比較的強度が高いと言えます。現状、建築材として広く使われているのが、北米のベイマツ、欧州のスプルースやアカマツといったものです。それに比べると1ランク、2ランク強度が落ちますけれども、国産の中では強度の高いところがトドマツ、カラマツのメリットです。
 これは、実際に在来工法で使っている、柱・梁等の横架材、土台、合板といったところの国産の比率です。柱にはけっこう国産のものが使われているのですが、強度の要求される、つまり曲げヤング係数の要求される横架材に関しては、本当に少ない。ですから、カラマツ、トドマツは強度がありますので、こうしたところに使っていける国産材だということで、可能性を秘めていると言えます。
  これは、左右どちらも径級が40cmぐらいのカラマツの丸太で、左は年輪数が約60年生、右は約30年生です。右は成長がよく、材積が増えるのはいいのですけれども、ヤング率は左の半分ぐらいしかなくて、強度的には半分しかありません。ですから、成長の違いによってこれだけ強度の違いがありますので、工夫して使っていく必要があります。
 こうしたトドマツ、カラマツを建築材に使っていくためには、やはり高次加工―積層したり、集成したり、複合したりということでこのバラツキを減らせば、平均値は変わらなくても、下限値、基準強度は上げることができます。また、製材などでも、例えば丸太の段階でグレーディングをしたり、材料の段階でグレーディングをすれば、それぞれ下限値を高めることができるので、こういった工夫がかぎとなってまいります。
 このように、いいところも悪いところもある北海道の人工林材ですが、実際にこれを使っている建築部材を幾つか紹介したいと思います。
 まず、代表的なものは集成材です。昔はプレカットもなく、生材で使って、大工さんが時間をかけて建てていたので集成材のようなものはあまり必要なかったのですが、昨今の建築様式やユーザーの変化もあって、狂わない材料というのが強く求められていて、集成材が増えています。北海道で実際に作られている集成材としても、トドマツ、カラマツの柱材のようなものや、梁せいが300mmぐらいの梁用の集成材もカラマツ、トドマツで普通に作られていて、入手することができます。
 また、カラマツの防腐処理塗剤というものもあります。カラマツやトドマツには実は、薬剤の注入性が悪いという欠点があります。特に土台などでは防腐処理をしなければいけませんし、今回の公共建築の木材仕様の中でも、土台などには防腐処理することが求められています。しかしながら、カラマツの場合、なかなか今までは薬剤が入らなかったのですが、薬剤を工夫し、(土台などに)刻みを入れながら、かなり入るように製品化したものもあって、大手ハウスメーカーでも使っています。集成材としてはすでにこういうものがあって、利用可能です。
 続いて、製材についてお話しします。トドマツは、厚さがせいぜい30mmとか45mmの小さな断面の羽柄材として大量に使われています。一部丸太のいいものを選びながら、こういった左側の柱とか、少し大きなものも、製材としては流通しています。最近は、ツーバイフォーのトドマツやカラマツのJAS製品なども市場に出る体制が整ってきております。また、柱とか梁といった大きな断面のカラマツの製材なども、乾燥技術の向上によって、少しずつ供給できる体制が整ってきています。
 次に、面材関係です。木造住宅の耐力壁として多く使われているのが薄物のカラマツ合板ですが、厚物になれば根太を省略できる根太レス合板といって在来工法の床組にも使われ、この辺りはかなり大量に使われています。先ほど齢級構成を示しましたように、これからトドマツも増えてきますので、合板工場ではトドマツを使った製品なども開発して、すでに市場に流れています。こういった30mmぐらいの厚物の合板ですけれども、カラマツに比べて軽いので、作業性がいいといったメリットがあるようです。そのほかに、苫小牧のほうでは廃材を使ったパーチクルボードなども構造用途として使えるようになっていて、面材にもいろいろなものがあります。
 構造材の最後です。これは新しい材料の部類ですけれどもI形ジョイストというものです。上下に小さな断面の製材とかLVLのようなものを組んで、中のほうに合板とかOSBのような面材を使った、非常に軽量で寸法安定性に優れた材料で、特にツーバイフォーの分野ではかなり使われております。これは在来工法とか屋根組でも使えるようなもので、道内でも製品化しています。この二つは今、もう少しで認定を取るところですけれども、こういう材料も使えるようになってきております。
 公共建築で木造化していったときには、構造材にはこれだけのバリエーションがあります。逆に言えば、まだこれだけしかないと言えるかもしれません。まだまだ開発の余地はあると思いますが、これだけのものが使えるようになっています。
 また、構造材だけではなく、公共建築の場合、内装その他のところにも地域材を使うようになっておりますので、内装材関係も紹介いたします。
 こちらはトドマツを使った羽目板とか合板などで、このあたりは大手の建材メーカーにも採用されている優れたもので、見た目も白くてきれいな製品です。またカラマツも、内装材、外装材として、製品として床板にしたり羽目板にしたり外装にしたりということで、数社の製材屋さんで使われております。
 また、北海道にはトドマツ、カラマツ以外にも、量的にそんなに多くはありませんけれども、道南地方でスギの丸太の生産が行われており、特に外装材関係でよく使われ出しています。スギというのは耐久性が比較的高い樹種ですので、外装などにも使われます。しかも軽くて扱いやすいというメリットがあって、外装材としてはトドマツやカラマツよりも多く使われているようです。
 もう一つ、無垢材ではないのですけれども、合板関係、接着製品関係でも、幾つか製品が使えるようになっています。こちらは三層パネルといって、板を直行方向に向きを変えながら3プライ張りつけて、これも30?ぐらいの厚物で、床にしたり建具にしたりということで使えるようになっています。
 また、複合フロアというのは、ラワン合板の上に突き板を張った一般的な複合のフロアで、道内でも何社か作って、たくさん販売しています。ただ、環境意識の高まりもあって、表には出てこないのですけれども、基材の部分は針葉樹の合板を使った製品なども道内で作られだしていて、これなども公共建築向けに作られております。また、針葉樹ではありませんけれども、広葉樹のほうでも、シラカバを使ったシラカバ合板といったものも製品化されて、こういったものももうまく公共建築の内装に使えるのではないかと思います。
 内装材関係の最後です。特に公共建築の場合、用途にもよりますけれども、このような多数のかたが利用する駅舎とかこういった建物の場合は、特に腰壁以上のところは防火材料でなければならないとなっています。これは旭川駅で使っていただいていて、林産試験場も一緒に開発した準不燃のタモの木材です。こういったものも開発されています。何社か道内で製造しているところがあります。
 また、内装材ではありませんけれども、サッシとかカーテンウオールのような防火性を付与したものも実用化されていますので、公共建築でさらに増えていくといいと思います。
 これは建築部材ではありませんけれども、先ほど紹介したカラマツの3層パネルを使った、非常にすてきなキッチンです。これはスギを使ったキャビネットで、これはカラマツの無垢板を使ったキャビネットです。これは、同じくカラマツの3層パネルを使った、中学校に納められている机とげた箱です。公共建築の場合、構造まで木造にするのは難しいところがありますけれども、こういったところで少しでも道産材を使っていただければと思っております。
 製品の最後ですが、そのほかにもまだまだ道内にはいろんな製品があります。これは苫小牧のほうで作っている、木質の繊維の断熱材です。あと、ペレットの工場も道内で10数工場ありますし、こういったカーポートのようなものも製品化されています。最近では木製のガードレールも、林産試験場も一緒になって開発し、実用化しています。こういったものも公共建築では対象になると思われますので、広がっていくように願っております。
 このように、構造材から内装材、その他のものまで、道産材ではいろいろなものがあります。ただ、まだまだ供給量が少なかったり、あるいは一般の流通に流れていなかったり、コスト的な面でも外材に比べると若干高いということもあって、なかなか利用が広がっていないものもあります。しかしそんな中、公共建築のようなところが起爆剤となって、使っていただけるようになればと思っております。
 木材を使うこと、さらになぜ、地域材を使わなければいけないかということをおさらいしたいと思います。
 木材は、鉄、コンクリート、アルミなどを使うことに比べて幾つかメリットがあります。それは、木材が二酸化炭素を吸収する再生産可能な生物資源であるということです。また、製造時のエネルギー消費が少ないので、エネルギーを削減する効果もあります。また、街中で建築物として長期間使うことは、樹木が成長するときに取り込んだ炭素を固定するということになります。さらに最終的には、燃料として使っても、COの排出と吸収が差し引きゼロ、カーボンニュートラルになり、COの排出削減にも貢献できるといったメリットがあります。特に公共建築は今まで、RCとか鉄といった材料が多かったと思います。そのすべてを置き換えることはできませんけれども、木材を使うことでこういったメリットがあると考えられます。
 さらに、われわれも日ごろ、外材ではなく地域材を使っていただきたいということで開発なり普及をしていますけれども、地域材を使う意義としては三つあります。まず、輸送距離が短くて済むということで、環境負荷が少ないということです。また、地域の木材を使うということは地域の森林整備が進むということで、間伐が進みます。三つ目としては、外材を使うよりも地域に回るお金が大きく、経済効果も大きいということです。
 まず、環境負荷についてです。木材の分野では今まで、LCA(Life Cycle Assessment:ライフサイクル評価)という評価手法のデータがなかったのですけれども、数年前からわれわれのほうでも個別の製品について実際にデータを取って、ようやく数字が出てきました。これは製材についてですけれども、カナダとかフィンランドから持って来た外国産材と国産材を比べて、製品を作り、利用するときの環境に与える影響をコストで表したものです。「潜在的な環境の被害額」という考え方ですけれども、LCAの最終的な評価として、こういうものが一般的なようです。これで見ると、国産の製品はカナダ、フィンランドといったところよりも外部コスト、環境に与えるコストが少なくて済むということで、環境の負荷が少ないという結果が出ております。
 もう一つ、(木材を)どれぐらい使ったら森林整備、間伐に貢献するかというのは―これは林野庁のホームページに出ているもので、詳細は割愛しますけれども―こういった簡単な計算式によって、どの程度間伐に貢献しているか明らかになっております。

 地域材を使っていくうえで、まだまだ課題があります。一番の課題は、輸入材との価格差です。今、北海道でも一般的に使われているのが欧州材や北米材で、どちらも針葉樹です。非常に年輪が緻密で強度も高く、しかも安いということで使われてきました。一方、カラマツ、トドマツは人工林で成長がいい分、輸入材に比べると強度的に劣っており、ねじれなど人工林の未成熟な部分の欠点を克服していかなければなりません。
 今まで、人工林材が使われなかった背景です。昭和30年ごろは日本でも自給率は100%近かったのですけれども、戦中、戦後の復興期の乱伐あるいは利用によって、資源が枯渇してしまいました。そこから拡大造林が進んで人工林が増えていったのですが、それとともに、経済的な発展によって国内の木材の需要が増えていき、結局追いつかなくて、それで外材が一気に入ってきたということです。そのときには、木材はいち早く自由化になって外材との価格競争にさらされてしまい、資源的にも十分でなかった人工林材に代わって、外材が一気に使われるようになったということです。それ以降、自給率はどんどん下がっていき、2〜3割の間にまで落ち込んでいた状態が続いておりました。この間、国内の林業、林産業が衰退してしまったということです。ただ、最近の資源の充実と国際的な需給の変化、あるいは地球温暖化等の環境志向の高まりによって、何とか国産材を使って、自給率を上げていこうというところです。ですから、国産材の場合、約50年にわたって空白の期間があったということで、コストとか品質の面で、今の段階で劣っているのはやむをえないところです。
 その間、特に林業の先進的な北米とか北欧といったところでは高性能な機械を導入して、しかもこういった機械がフル稼働するように集約化、大規模化しながら、それこそ2シフト、3シフトで丸太を収穫して、このようなトレーラーで大量に送っています。ですから、丸太のコストも非常に安く、収益も高いという林業経営が成り立っていて、国を支えています。一つの文献値ですけれども、国産のスギとヨーロッパのホワイトウッド、北米のSPFの立木、原木との価格差を見てみると、国産のスギの立木は、山の段階で立米1,500円なのに対して、北欧になると6,500円とむしろ高いのです。これだけ山にお金が返せています。北米については、500円と本当にただみたいなものです。これはもう国が資源を供給していますので、ほとんどただみたいな天然林を供給しているということです。次に、製材工場に入る原木価格で見てみますと、国産のスギが原木1万2,000円に対して、ヨーロッパでは9,000円、北米のSPFはわずか2,000円です。原木の段階でこれだけ値段が違っているので、残念ながら、現状では国産材が高いということです。
 また造林樹種についても、これはニュージーランドの例ですが、20年から30年で40〜50?、国内の樹種に比べて倍のスピードで成長し、なおかつ強度も高いラジアタパインという樹種を選抜して育種し、たくさん植えています。育種的にも成功している、こういった国もあります。
 さらに、製材を作る木材工業の分野でも、非常に規模が大きい。しかも、ハイテクを使った効率的な生産を行っています。製材工場の大きさを見るのに、年間に丸太をどれぐらい消費するかという原木の消費で見ると分かりやすいのですが、日本では年間10万m3の丸太を使えば大きいほうですけれども、ヨーロッパでは30〜100万m3ということです。もっと大きなところもあります。また、北米も平均で20万m3ぐらいですから、生産規模が違います。ですから、設備投資も技術の革新も進んでいて、生産コストが低い。製材のコストを比較しても、国産材は北欧や北米に比べて倍ぐらい、5,000〜6,000円違います。ですから、原木も違って、製材の段階でもコスト競争で負けてしまっている現状です。これは北海道に限らず、国内全般的な傾向で、こういった中で苦戦しています。ただ、外材のほうが品質がいいと言ってはおりますけれども、向こうでも低質なものは当然、たくさん出ます。いいものだけを日本に送っています。悪いものは自分の国で使うか、中国とか中東に送っているので、こういったところも本来は考えなければいけません。
 ただ、冒頭に申しましたように、林業再生に向けて、川、山から工場まで改革を進めてきております。まず、原木に価格差があるということですけれども、それを解消するには、林業を集約していけばスケールメリットが出ますし、ドイツとかオーストリアに比べて日本は、まだ路網も入っていないので、インフラが違ってなかなか効率的にできないのですが、少しずつ路網を増やそうとしています。また、海外ではフォレスターという森林経営のプロフェッショナルがいて、その時々に合わせて効率的な丸太の生産を行っているのですが、そういう人材育成にも着手しています。
 北海道においてもその流れを受けて、林業再生が少しずつ進んできています。これはヨーロッパの高性能な林業機械で、日本で初めて導入されたそうですが、こうした収穫する機械、あるいは引っ張り出す機械が入っていくと、生産コストも下がっていきます。ただ、経営を大規模化しなければいけませんけれども、こういう可能性が出てきています。
 また、ニュージーランドはいい品種を植えていますけれども、北海道でもカラマツとグイマツをかけ合わせたいい品種も作られて、これから増えようとしているところですけれども、カラマツに比べて強度も高いし、ねじれも少なく、さらに植えるコストも少なくできるというこうしたものが増えていけば、将来的には外材と対抗できる時代が来ると期待しています。
 また山のほう、川中のほうでも技術革新が進んでいるように、北海道は国内の中では比較的大きな製材工場や合板工場があるので、そういったところでも、今までは梱包材が中心でしたけれども、建築用材の開発、製品化も進められていますし、合板工場で新しい製品開発なども進められています。
 こういったこともあって最近では、大手のハウスメーカーも環境志向の高まりで国産材を使う例が増えてきていますけれども、道内の集成材工場でも大手ハウスメーカーに集成材を供給するところが出てきています。あるいは、トドマツの羽柄材とかトドマツのパネルの枠材をハウスメーカーに大量に供給する事例も出てきており、大規模化されていくと競争力が出てくるということで、道産材も少しずつ競争力が高まっていくと期待されます。
 最後に、公共建築の木造化に絡んで情報提供をしたいと思います。
 皆さんご存じのとおり、公共建築等木材利用促進法が昨年度制定され、それを受けて北海道でも、地域材利用推進方針が策定されました。読んでのとおり、公共建築については可能な限り木造化、内装の木質化をしていく、と。そのときの地域材としては、なるべくJASの製材の使用に努める、ということです。さらに、公共建築の整備に適した地域材の円滑な供給体制の確保にも取り組む、という方針を出して、公共建築には地域材を少しでも使っていこうということで北海道も取り組もうとしています。
 この制度が昨年できましたが、その前ぐらいから大手のハウスメーカーも国産材を使いだし、さらに環境志向の高まりもあって、数年前から、公共建築ばかりではなく、社会福祉施設、集合住宅、複合施設といった、民間、公共のけっこう大きな建物も増えてきております。ツーバイフォーにしても在来工法にしても耐火が求められるのですけれども、耐火の技術が開発されたこともあって、こういった建物が増えてきており、特にツーバイフォーでは、ここ二、三年で1,500棟を超える大型のものが増えてきております。この促進法によって、こういったものがさらに増えることが期待されます。
 ただ、今までRCなり鉄骨で建てていた公共建築をいきなり木造でやろうとするといろいろな課題があるようです。私は直接経験してはいないのですけれども、秋田とか宮崎という林業の盛んなところでは、こういう法律ができる前から地域の公共建築を木造で建ててきています。そういった研究のかたがたから話を聞いたり文献を読んでみると、やはりいろいろ課題があるということで、それを整理してみました。
 公共建築が大規模になって、構造計算が必要になりますから、JASの製品を使うことが原則ということです。そのときに、地域で調達できる材料―北海道ならカラマツとかトドマツですが―で無理のない設計をすることが大事です。集成材の場合、カラマツはヤング係数が95とか105といった製品であれば無理なく造れますし、トドマツであればE85〜95といったものなら無理なく造れます。ただ、外材にはあるのですけれども、地域材では、E120みたいなものを求められてもできませんし、あるいはよほどお金をかけて集め、かなり苦労しないとできません。ですから、こういったところが設計のかたがたと意思の疎通を執って、地元で無理なく供給できる材料で設計をしてもらえるような努力が必要のようです。
 乾燥製材の場合はどうしても、頼んだものと違うとか、含水率、寸法、グレードが関係者同士で統一できていないと返品や交換が起きて、それによって値段が合う合わない、あるいは工期が遅れることがあるので、品質に関して、関係者同士で統一的な認識を持つことが非常に大事だということです。
 国産材は外材より多少価格が高いと言ってはおりますけれども、RCに比べると、建物の条件、設計のやり方によってはむしろコストも安く、幾つかの物件では工期を短縮できるというメリットが出ているようです。あまりに凝った特殊な建物にしてしまうとやはりコストが上がるようですけれども、住宅ではもともと、RCよりも木造のほうが安いわけですが、その延長線上では、木造化すればコスト的にも有利になるといわれております。そのためには、中大規模建築に向けた部材を一品一品の特注とするのではなく、ある程度規格化することが大事で、学校とか体育館といったタイプに応じて、経済的、合理的、標準的なプランが必要となります。北海道でも過去にけっこう建てられておりますので、そういったことを検証し、どう適切なものを作ればいいかみんなで共有する必要があるということでした。
 もう一つは、技術的な課題です。公共建築は戸建て住宅よりもスパンが大きいです。おおよその目安ですけれども、教室で8m、会議室で10m、講堂では12mと、住宅の2間とか2間半よりも広くなります。階高も4mとか5mと、高くなります。さらに 設計荷重が大きくなるので、柱や梁の断面が大きくなってしまいますし、構造的な工夫が必要になります。特に2階、3階と多層高層になっていくと床が大事になってきますから、ピッチを狭くする、格子梁にする、トラスにするといった工夫で、地域にある材料で設計していく必要があるということのようです。壁についても、耐震性を高める必要があります。さらに防火については、技術開発を含め、まだまだ開発していかなければいけないところがあるようです。
 木造禁止から50年、日本ではある意味、公共建築でも木造が解禁されたわけです。今までは蓄積もないので、まだしばらくは戸惑いもあるか思いますけれども、海外ではすでに、中高層とか公共の木造化がどんどん進んでいます。カナダでは、真っ先に木材を使おうということで、今回の公共建築の先駆けとも言える「Wood First Act」という法律を作って、公共建築の木造化を進めました。今までは4階建てまでしか造れなかったものを6階建てまで認めて、木造を増やしています。フランスやニュージーランドでも同じような法律を作って、Green Buildingとして市場を拡大しようとしているようです。
 そんな中、ヨーロッパの特筆すべきものに、Massivholz(マッシブホルツ:「木の塊」の意)があります。先ほどご紹介した三層パネルよりさらに分厚くて大きい、1枚が30〜50?のものを、5プライ、7プライと分厚くした大きな板面にして、中高層の建物を建てる方法が増えているそうです。これは10数年前にオーストリアで開発された新しい技術で、この10年で一気に増えたそうです。北米でもこういうやり方を広げていくべきだということで、製造するメーカーも出始めて、四、五年後には建築基準も作っていくということです。ニュージーランドでも、メーカーが作りだすということです。日本でも今年から、この材料のJASの規格化や設計法について研究開発が始まっております。国内ではまだ建てることはできないのですけれども、森林総研、建築研究所、国総研といったところが3年ほどの計画で、こうしたものが建てられるよう法的整備に着手したということです。
 これは、イギリスの9階建てマッシブホルツです。分厚い木のパネルのプレキャストを組んでいくのですけれども、仕上がると木は全然見えません。これは恐らく、防火の関係で被覆されていると思われますが、こうして、木は見えないけれども使っているということで、RCに比べると工期も短かく、コスト的にもメリットがあるようで、こうしたものが増えているそうです。ドイツでも8階建て、スイスでも6階建て、北欧に至っては、1990年代に階高の規制が撤廃されて何階建てでもいいということで、7階建てのものもどんどん建てられているようです。
 そのほかの公共建築ということで、空港、道路の木橋、駅、飛行機の格納庫、こういったものもヨーロッパではかなり木造で建てられているようです。
 これはイタリアの例です。さすがに芸術の国といいますか、教会とレールカーの駅舎みたいなもの、そしてショッピングセンター、ワイナリー、こういった湾曲した材料が使われています。多分、これは通直よりは高いのでしょう。ただ、通直よりは接合の接点が少なくできるというメリットはあると思います。イタリアは石の国かと思っていましたけれども、こういった建物が増えています。
 一方、北米に行くと、やはりツーバイフォーが多いようです。ツーバイフォーでも、1階、2階はRCでも、その上の5階建てとか4階建てをツーバイフォーにする建物がとても増えています。特にカナダでは、Wood First Actということでこういった建物が非常に増えているそうです。
 皆さんもテレビでごらんになったかもしれませんけれども、オリンピックオーバル、スケートリンク、水泳会場などの建物も、ほぼ木造で建てたということです。
 極めつけは、今年スペインにできた、今のところ世界で一番大きい木造建築と言われているものです。これは商業施設ですが、極めて大きなもので、しかも芸術的な建物です。海外ではこうしたものが建てられるようになっています。日本のほうが木の文化の国と思っていましたけれども、実は海外のほうが、木材をグリーンマテリアル、木造をグリーンビルディングとして見直し、積極的に建てようということになっています。日本でもその兆しは見えています。これは、東大の腰原先生が中心になって進めている「ティンバライズ」という(新しい木造技術への取り組みです)。これはまだ設計段階であり、将来的には防火の技術とか構造的な技術を開発していかなければいけませんけれども、日本でも都市に木造の建物を建てよう、炭素を貯蔵しようという動きが出てきております。
 最後に、まとめです。
 北海道の人工林材には欠点もあるし、価格的にも厳しい面はありますけれども、地域の材料を使うことが地域の経済、森林整備にも貢献するということで、ぜひとも使っていただきたいと思います。北海道は日本の中でも森林資源が豊富です。うまくやれば産業クラスターとなって6次産業にもなっていくでしょうし、製材とか合板集成材といった製造技術や供給体制もあり、公共建築を切り札に、北海道の木材を適正に、かつ付加価値の高い形で使っていただき、何とか主要な産業になっていくようにわれわれも頑張りたいと思います。そういう意味では、今回の公共建築促進法に、われわれとしても大きな期待をしております。皆様のほうからもこういうものが必要、こうでなければだめといったご意見をたくさん頂きたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。そうすることで森が適切に整備されれば、きちんとしたいい丸太が出てきます。これが財産になっていくようにという願いを込めて、今日の発表を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

●司会: 大橋様、ありがとうございました。



■講演(井端 明男氏)

●司会: それでは、二つ目の講演といたしまして、株式会社アトリエアク取締役、井端明男様から「木造とヒューマンスケール」というテーマでご講演いただきます。
 井端様は、1949年北海道のお生まれで、北海道産業短期大学をご卒業後、1970年に上京し、住宅設計を中心とした設計事務所などに多くお勤めの後、現在のアトリエアクにお勤めです。公共建築にスタンスを置いて活動され、道北の剣淵町にあります「絵本の館」で平成21年度公共建築賞優秀賞を受賞されるなど多数の受賞歴があり、公共建築についての造詣が深くていらっしゃいます。

「木造とヒューマンスケール」

                                 株式会社 アトリエアク
                                   取締役  井端 明男 氏

 私は、後志管内共和町の出身であります。1949年の生まれですから、もう62歳になります。団塊の世代の後期に当たるわけです。「建築」という文字が印刷されたものを手に取ってから、随分長く建築に携わっています。戦後の子供の一番多い時代に、何の悩みもなく、山や川で遊び回っておりました。親は建築とは全く関係のない雑貨屋を営んでいて、まだコンビニのない、勘だけを頼りに商売をしていたとてもいい時代でした。
 以前、雑誌の取材で「いつごろ、空間というものを意識されたのですか」と聞かれたことがあります。子供のころ住んでいた小さなまちといいますか、集落的なところなのですけれども、7〜8軒の店があり、その中で金物屋さんがすごく印象に残っております。店のずっと奥に入ったところに帳場といいますか、お金を払うところがありました。それはなぜ奥だったかというと、住宅とつながっていて、靴を履き替えなくても、そこに来てお客さんからお金をもらう。そういう意味でずっと奥だったのだと思います。その一番奥に天窓がありました。そのことがすごく記憶に残っています。その天窓から入る光は、子供の心に強烈に残りました。特に夕方の光だったと思うのですけれども、それがすごく印象として残っております。空しか見えない井戸のような窓ですから、やはり何を感じたかというと、その光かもしれないのです。今考えてみると、それが空間らしきものを感じた初めてのことかと思っています。
 そのころのことをいろいろ考えてみますと、納屋であるとか倉庫であるとか、学校、駅、空間らしきものはそういう場所にあったのではないかと思っています。空間以外に色とか音とか、そういうものは今ほどいろんなものはありませんでした。テレビはありませんし、ラジオも電波の状況が悪くて、入りが悪い。あるとすれば、本当に自然のもの、四季折々の色であるとか、夕焼けであるとか、トマトだとか、スイカだとか、少し秋が近くなるとダリアの強烈な色であるとか、そんな色です。それともう一つは、恐ろしいほど白い、冬の世界だと思います。音もそういう意味では同じです。そんなに音が周りにあったわけではないと思います。においに関してはいろいろあったのだと思うのです。今でもふっと何かを感じたりします。それにしても体に悪いものは今ほど多くはないと思っています。だから、今、デザインをしたりいろんな設計をしたりする中で、五感というものもここでしっかり養われたのかと思っています。人間としての素材というものが、もしかしたらこの時代にできたのかとも思っています。
 そんなふうに、高校まで田舎でのんびりと過ごしておりました。いざ就職だとか将来のことを考える段になって、一応悩みました。そして建築が何であるかということも全く知らないで、産業短期大学というところに行きました。今の道都大学です。それは建築の勉強をするためではありませんでした。田舎育ちなものですから、みんなよりスキーがちょっとうまかったということもあって、特待生でそこに行くことができたのです。親は、お金がかからないということで大変喜びました。しかし、鳴かず飛ばずで2年が過ぎて、一応卒業しました。それでも就職もせずにブラブラしていました。これで少しでも飛んでいたら、いい気になって違う方向に歩いていったかもしれません。今思えば、飛べなくて本当によかったと思っています。(ここで1分13秒、録音中断)住んでいて、ちょうどそのときビートルズの「レット・イット・ビー」が出ていましたから、40年以上も前のことになります。
 私が建築を始めたとき、建築がデザインだとか、内装がデザインだとか、工業がデザインだとか、そういうことを口にする人は僕の周りにはいなかったと思っています。そういう意味で、万博というのは非常に刺激的な出来事でした。私はそこで、華やかな建築とデザインと芸術の世界を見ました。あるときデザインの専門学校があることを知り、デザインと自分とは全く関係のないものだと思っておりました。今では普通ですけれども、当時はそういうことを指導してくれる場所は少なかったと思います。親にお願いしてそういうところにも通ってみましたが、結果的に、そこで知り会った人たちは私にいろいろな影響を与えてくれました。今でも尊敬している人に、そこを通じて知りましたし、建築を志す人間として、建築で生きていく魂のようなものをそこで授かったと思っています。現在でも、その魂は自分の中で脈々と生き続けています。自分の素材をうまく引き出してくれたということに、私はすごく感謝しています。
 デザインの学校というのは、設計そのものより、色彩の計画とか、平面とか立体の構成とか、線とか面によるコンポジション、そして視覚的にどう伝達するかということを(教えてくれました)。今までとは全く違う世界で私は楽しい日々を過ごしたわけですけれども、最初はちんぷんかんぷんで何が何だかさっぱり分からず、話にならないほどでした。悔しいので、いろいろな本を読み、デザインとは何かと真剣に考えたときがありましたが、建築家の名前とか作品を見て回り、何となく筋道が分かったと思っています。
 そこを出てから住宅を中心とした事務所に、ただ「置いてください」と、勉強させていただくような関係で置いてもらいました。そこに就職するというようなことではありませんでした。自分にとって、建築の原点はこの時代にあると思っています。60年代の後半からですから、住宅が建築になった時代です。ヨーロッパよりアメリカから、住宅のデザインが入ってきました。そして、だれもが住宅の設計ができる、と思えた時代でした。今思うとすごくいい時代で、そういう時代に立ち合えたのはすごく幸運なことでした。
 そんなこんなで6〜7年過ごして、札幌に戻ってきました。事務所を転々としましたけれども、理想と現実のギャップが大きくて、なかなか受け入れることができませんでした。それまでやってきた住宅と北海道でやる住宅とはあまりにも違い過ぎたからです。しかし、考えてみますと、北海道の木造住宅の技術がそのあたりから、少しずつではありますが進化し始めました。あまりにギャップが大きいものですから、友人と3人で事務所らしきものを構えました。そんな簡単に仕事が来るわけでもありませんし、大手事務所の図面を手伝いながら理想を追い求めていた、怖いもの知らずの時代でした。
 そうこうして10年ぐらい頑張って、今のアトリエアクが組織替えするときに参加しました。この時代、すなわち今から23年ぐらい前に、断熱、気密の技術もできてきました。それまで閉鎖的だった住宅が、開口部も大きくなり開放的になってきたのも、この20年ぐらいです。そして、アトリエアクという事務所も、住宅を中心として民間の仕事から公共の建築へとシフトをしていった時代でした。そこでいろいろ仕事をしていて、40代の後半、50に近くなって初めて、だれのために何を作るのかということを真剣に考え始めました。それまでは、自分がやりたいこととかやってみたいことが優先し、本当のことを考えていませんでした。そんなことを考えるようになったのは、50になってからでしょうか。それが遅いのか早いのか分かりませんけれども、そこまで来なければそういうことも考えられなかったと思っています。そういう意味で、やりたいこととやってはいけないことのせめぎ合いの中で仕事をしてきました。そうした中、剣淵の「絵本の館」は、自分がやりたいと思うことのほうが勝ってしまった建物だと思っています。
 建築の技術というのをそういう視点に立って考えてみますと、最近の建物の性能は随分よくなりました。仕上げなども随分よくなりました。コストも低く抑えられるようになりました。構造の解析なんかも、均一なスパン、均一な構造でなくても、私たちが考えるようなことだったらどんなものでもできる時代になりました。しかし、そうなっても、そのような構造計算をしてくれる事務所が北海道に少ないことも事実です。3人、4人、いるかいないかだと思います。「絵本の館」というのもその一例ですけれども、いろんな構造が混在しています。鉄もあればコンクリートもあれば木造もあるという、ぐちゃぐちゃな建物です。しかし、それでコストが高かったかというと決してそうではないし、強度的に劣るかといったら、そうでもない。性能が劣るかというと、そうでもない。ただ、そんなものが今まで、実績として少なかったというのが事実なのです。だから、そういうことに恐れないでそういうことをどんどん提案していくというのも、私たち設計者としての役割なのだと思っております。
 今日は「木造の特性と可能性を探る」という大きなテーマになっておりますので、木造のことに切り替えてお話しします。
 子供のころから親しみのある建築として、またモジュールとして、スケールとして、木造があります。木造は今でも尺モジュールです。1間とか、1坪とか。今でも設計の打ち合わせの基準となるのが、何畳、何坪です。これは、一番分かりやすい広さを表す単位なのだと思っております。みんなが共有できるスケールとして、尺モジュールというのは、そういう意味では私にとってヒューマンスケールだと思っています。畳1枚の大きさは、大抵の人が分かってもらえるモジュールです。これが高さに替わると、メーターモジュールになるのです。高さを今、何尺とは言いません。ほとんど何m、何?という言い方をします。天井高であるとかドア高であるとか、そういう単位は何mとなっています。これも尺モジュールが基準になっていますけれども、少し前までは建具の高さ、障子、ふすまは、6尺、1.8mでした。最近ではもう少し高くなってきていますが、それが本当に必要かというと、1.8m以上2mまでなくても、全然それは問題ない寸法だと思っています。しかし、ドアは今、一般的には2mになっています。その割には天井の高さは少し低くなっています。以前は8尺、2.4mでしたけれども、現在では天井も少し低いように感じられます。これで不便があるかと言うと、あまり不便はないようです。いずれにしても、このように無理のない木造は、ヒューマンスケールで構成されていると思っています。立っても座っても気持ちのよい空間ができるのが木造と。ヒューマンスケールは使用する人が気持ちいいと感じるスケールであり、ヒューマンスケールは空間の縦横のバランス、空間のプロポーションにも大きくかかわると思っています。そんなことを考えながら日々設計をしているわけですけれども、ヒューマンスケールというのはやはり、私が設計する中では最も大切にしていきたいスケールです。
 もう一つ最近思っていることは、私たち設計者が木造を考える場合、規模の小さいものはいいのですけれども、規模が大きくなって、集成材で断面が多少大きくなるようなものについては、構造の確認をしなければなりません。つまり、構造計算が必要になってきます。また、工法とか構造のデザインということも重要になってきます。そういう場合、北海道には、木造の相談をする相手がすごく少ないのです。したがって、メーカーに相談することもあります。メーカーも東京の事務所で、そうした相談、アドバイスを受けることがあります。公共建築を設計している場合はそういうことをやるとあまりよくありませんので、最近ちょっと困っています。それは設計者の問題だと言われれば、そうかもしれません。ただ、そこでわれわれをバックアップしてくれる体制が少しあれば、木造そのものの可能性がもっと広がると思っています。この中にプレカットもしくは製材関係のかたがいらっしゃれば、そういうことでよろしくお願いできないかと思います。われわれも頑張りますけれども、木造の可能性に広がりを持とうと思ったときには、やはりそういう力も必要になってきますので、お願いしたいと思っています。
 これからは、写真を見ていただきながらお話をしたいと思います。公共建築もありますし、非公共もあります。また、公共的なものもあります。時代はまちまちです。古いものから新しいものまで、ジャンルに分けて説明したいと思います。
 今は、混構造というのは基準法的にすごく難しくなっております。少し前まではコンクリートと木造の混構造というのはすごくよくて、われわれも便利な構造の形式だと思っていたのですが、最近ではそれがすごく難しくなって、不自由になりました。
 これは本当に小さい建物です。この建物に至っては、民間の小さい別荘、セカンドハウスです。
 これが公共建築です。剣淵町の学童保育所。
 これが、15年以上前に造った士幌町の「こどもの館」です。公園に建っていて、子供が本を読んだり、かくれんぼをしたり、みんなでおしゃべりをするという建物です。
 これがもと穂別町の、ちょっと離れた場所にある消防の番屋です。普通に造りながら一つの形ができないかと考えていた時代のものです。だから、少し変わった形をしていますけれども、造り方とすれば在来の普通の造り方をしています。
 これは、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をまちづくりの柱としている集落の消防番屋です。だから、ちょっと上向きの大きい開口部からは夜空しか見えないという、そんなイメージを持ってやりました。消防団が出動する機会はそんなにないので、季節の節目節目に行われる見回りとか、何かの警報を出す。そして、みんなが集まって車座になって酒を飲むような場所、主にそういうふうに使われるのだろうと思いながら造った建物です。今のようにプレカットも何もない―実際は当時もあったのでしょうけれども―といっていいほどの時代だったので、われわれが全部骨組みの模型を作って、造るほうに渡して理解してもらったという経緯があります。これはスケッチです。今日のタイトルでもあるヒューマンスケールというのは、人がいて建物がある、その関係を自分で確認するために必ず描くものです。どんな場合でも、まず断面図から描いていく癖が私にはあります。
 これは割と最近できたセカンドハウスです。小高い敷地の上に建っています。この場所にしか建たない、というような狭い場所です。土地は大きいのですけれども。だから、この平面の間口は2.7mしかないのです。現地に立っていろいろ話しているときに設計者としてのスイッチが入ってしまいますので、帰ってきてすぐ描いたスケッチがこれです。これができたものと大きく外れるかというと、ほとんどの場合は外れません。大体同じような形に仕上がっていきます。
 これもスケッチですけれども、高さの関係にすごく注意しながらやっていくためには、絶対必要です。そんなに大きくもしたくないし、必要以上に広くも取りたくないしということで、階段を上り切ったところで立ち上がったときに、すれすれ頭がぶつからないような寸法、これが基準になって、全部決めた記憶があります。いつも何かを考えていて、何か話されるとすぐにスイッチが入って、こんなスケッチができてしまう癖がついています。
 これは外から見た図です。これは上を向いているのですけれども、小高いところに家を建てて、街を見下ろして「きれい」と言いますけれども、そうではなくて、もっと高い夜空とか星空を見たいという話からこの形態が出てきました。
 これは内部です。ほとんどスケルトン状態です。合板を張って、構造体が全部むき出しになっています。部分的には壁も合板で仕上がっていますけれども、ほとんど露出状態です。これは玄関を入って見たところです。そして、ずっと入って突き当たりから玄関を見返したところが、この写真です。上の方に1部屋分のスペースがあります。ここで頭がぶつからないぎりぎりの寸法を取っていこうというのが、最初に考えたことです。
 これは、この人の孫は宮崎駿の世界をイメージするのかと思います。その孫のお母さんたちは戦艦大和を、じいちゃん、ばあちゃんは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」あたりをイメージするのかと思いながら、2階にそういう部分を造りました。

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 剣淵町に建つ学童保育の建物です。これはプロポーザルで私たちに決まったものです。最初に思ったことは、普通の建物にはしたくない、ということです。剣淵町は農業を主体とするまちですので、そこに育つ子供はやはり、「土の子」だと思いました。土との距離を近く、土にもっと接するような建物をイメージしました。これも最初のスケッチです。冬、雪に埋もれるとこうなるのだろうな、夏はこんなのかなと思いながら、ボール遊びもするし、空間としてはそこそこ大きくなるのですけれども、できるだけ小さくし、子供たちのスケールに合った、楽しい空間を作りたいと思いました。
 変な形をしていますけれども、これは、普通に梁を組んでいくとこの形になるという、ただ梁の高さと間口を変えて連続させていった建物です。この先端に建っているモニュメントは、農家のおじさんが趣味で作ったのが農家の庭先にたくさん飾ってあってすごく印象的だったので、そこからもらってきてこの風車のモニュメントをつけております。
 これは集成材の構造です。この構造を決めるのに、単に集成材ではなくて、もっといいものはないかと考えました。例えば、針葉樹合板で梁せいが大きくなってもいいからそういう構造が造れないかと。一番飛んでいるところで12mあるものですから、I型の梁を合板で作る、そういうものが作れないかと、随分考えました。ただ、行き着いたのは集成材の梁で、これは張弦梁にしています。それと、柱と梁の接点がどうしてもラーメン構造にはなりにくかったものですから、方杖のようなものを入れながら、そして剛性を保ち、帳弦梁で全体を造るという構造にしております。
 床は全部、土間を打っているのですけれども、土間コンクリートの下に土があり、その土を暖める「土壌蓄熱」というやり方でここの暖房しております。土壌蓄熱で、土全体を暖めて室内の温度を上げるという方法です。したがって、この土の中の温度はある程度ありますから、外気を入れて、ここをずっと配管して、また戻ってきて、ここから外気を出しています。こうすると、室温まではいかなくても20度ぐらいになって、外気が出てきます。そういう意味ではすごく経済的ですし、給気に対する合理性もあり、大変喜ばれております。木造の建築というのは、木造の工法とか集成材とかいろいろなものがありますけれども、それだけではなく、換気のシステムとか、外部の仕上げ材―耐久性を向上するためには仕上げ材も大きく影響します―があって初めて、木造の可能性が広がってくると思っています。
 帳弦梁でこのように梁を押さえています。電気は全部、露出した昔ながらの「がいし」で電気の配線をし、都合のいいところから電気を取るというシステムです。家具も全部、オリジナルで作っています。合板で作って、リノリウムを張って、子供のサイズに合わせています。この角に子供たちが頭をぶつけるという問題がありましたけれども、今は慣れて、そういう話も聞かなくなりました。
 札幌芸術の森の「佐藤忠良・子どもギャラリー」という建物です。これはデザイン的には、木造でなくてコンクリートでもいいような建物です。これもスケッチを描きましたけれども、当初、いろいろなボリュームを分節し、人のスケールに合わせながら、自然になじませていくという考えを持って進んでいましたけれども、結果的には一つの建物になりました。内部の空間に合わせているので、建物がでこぼこしています。
 大きかったり低かったり、内部の機能に合わせて空間が変化するというのは悪いことではありません。それをどうデザインするか、ということだと思います。
 全部仕上げると何が木造か分かりにくくなるものですから、全部柱、梁を出し、かごのようにルーバー状に囲ったその中が、子供たちのワークショップスペースです。最初は、ここでワークショップをしながら、展示空間に出る、彫刻を見る、また入る、つまり自由にさせるという趣旨だったのですけれども、ワークショップを始めると、自由に子供を外に出すことができにくい状態です。
 これはワークショップの風景です。新聞紙を床に敷いたり、壁に張って汚れを防止しているのが、ちょっと残念です。このプロポーザルを取ったら、20ぐらい年前に一度行ったことのある、デンマークのルイジアナ美術館を見に行きたいと思っています。工事の終盤にもう一度、ぜひ行きたいと思って行ったのですけれども、ルイジアナ美術館の子供のスペースはもっともっとタフな仕上げ材で作ってあって、自由なのです。床も壁もいすも、色がついたり、きずがついたりしている。それがすごくいい味になっていて、子供たちもさぞ自由に活動しているのだろうと思いました。こういう風景を見ると、こうではなくて自由に、ちょっと汚れてもいいのではないかと思いました。そのことがちょっと残念です。
 これは、北大の正門のすぐ横に立っているインフォメーションセンターで、木造です。木造でなくてもいいような形をしています。周りに記念樹がたくさんあります。全部、由緒ある記念樹です。ここに建物を建てると根を傷める危険があって、基礎をあまり深く掘りたくないということで、コロンブス工法という浮き基礎の工法を採用しました。浮き基礎というのは、この下に厚いスタイロフォームを入れて、基礎を浅くしながら、つまり掘る深さを浅くすると根も傷つけにくいという工法でやっております。木造で軽いからできるのですけれども、木造の可能性は、木だけではなく、基礎工法にもあると実感しました。
 これは足回りのディテール、天井のディテールです。
 これは内部で、柱も梁も見えます。アルミの天井の仕上げから透けて構造体が見えて、その中に照明器具なども全部隠して内蔵し、全体をうまく機能させることを考えました。
 これは環境省の仕事で、サロベツのインフォメーションセンターです。サロベツの湿原なので、普通に基礎を作ったのではもちませんので、くいを打つか、浮き基礎にするかということです。これも、集成材木造なのですけれども、浮き基礎にしております。
 これは本体なのですけれども、展示空間と管理空間です。そして、ずっと向こうに見えるのが、野外展示場といって、断熱も何もない倉庫のような状態の展示空間です。これもプロポーザルでわれわれが獲得できたのですけれども、一塊まりではなくて、空間、建物を分節し、スケールを落としながら、自然に融合させるべく提案したスケッチです。
 これは内部です。この場合はラーメン構造まで行くのかどうかなのですけれども、梁と柱の剛接合にして成り立っている構造体です。そして、帳弦梁です。鉄と集成材のハイブリッドでやっています。ここを剛接にすることができれば木造の可能性もいろいろあるのですけれども、必ずしもそうできない場合もありますので、難しいところです。こちら側が野外の展示場です。これは、今までも目にするようなトラスの梁材になっています。こっちの黒っぽいほうが迫力があって、木がたくさん使われていて安心感があるという感じさえします。
 これは、北大の中にある遠友学舎です。これも随分古いのですけれども、1階はRC造になっているので、木造で屋根を架けるのは比較的楽です。剛性は1階のコンクリートで保っているので、上の梁は帳弦梁で屋根をぽんと置くという考え方で構造が十分成立する仕組みになっています。近くにモデルバーンがあるので、やはり切妻を外せないだろうということで切妻になっております。
 内部と外部、かなりしっかりしたコンクリートが中まで入ってきています。それに木造の屋根を載せたような考え方です。天井の懐を利用して外気を取り込んで内部に供給している設備のシステムを持っております。ちょっとしたパーティーをやったり、講演会をやったり、展示会をやったりと、随分頻繁に使われているようです。
 これは、しっかりした両サイドのコンクリートがあるので、こういう大きな開口部を開けることも十分、可能になっています。
 これも、1階がコンクリート、2階が木造という羅臼のビジターセンターで、環境省の建物です。環境省の建物は切妻が原則ですから、絶対に切り妻にしなければいけない。サロベツでも二つに分けていますけれども、これはサロベツの前にやった建物です。三つに分かれております。三つに分棟していくというやり方、われわれも相当頑張ったし、いろいろ議論してこのようになったのですけれども、基本的には切妻で1棟なのです。そうすると、建物がすごく大きくなってしまう、屋根もすごく高くなってしまう、ボリュームもすごくなる。そうすると、周りの風景と本当に融合するのかという議論が常にありました。これは当初のプロポーザルのスケッチなのですけれども、私たちは必ず、分棟しながら提案することを心がけております。そして、これは分棟がうまくいった例です。1階をコンクリートで造っているので、上の木造の屋根は簡単にできました。
  これは内部空間ですけれども、集成材で屋根を架けています。帳弦梁も、先ほどの形と少し違いますけれども、鉄と木造のハイブリッドになっています。しっかりとしたコンクリートが両サイドにありますので、比較的楽に木造が可能になってくるという例です。
 これは、展示空間も事務空間も一つの同じ空間の中に入っているのです。そういう意味では、今はけっこうありますけれども、珍しい形です。当時はあまりやらない、展示空間と事務室の関係の空間です。
 これは剣淵町の「絵本の館」です。楕円の中庭があって、ぐるっと取り巻いています。この断面はこのようになっていて、コンクリートの躯体の上に鉄の梁を架けているのがこちらです。ぽこっと立ち上がっているのは全部、コンクリートです。ぐるっと回ってきて、中庭を挟んでホールというのがこの場所ですけれども、これはコンクリートの躯体の上に帳弦梁の梁とトラス状の柱という構造の組み合わせになっています。これだけ構造がぐちゃぐちゃになっていても、コストはそんなに高くはないし、空間も使いにくくはなく、むしろいろいろな空間が味わえるということで、けっこう喜ばれています。
 これは最初のスケッチ、こちらは裏側のスケッチです。いろいろ確認するためにこういう図は必ず必要になってきます。
 これは中庭の夏と冬です。
 これが内部空間です。この部分、コンクリートの躯体の上に帳弦梁で梁を作って、木造の柱、これはトラス状の柱になっていて、展示空間やコンサートなどに多目的に使われています。これは10mのスパンです。
 剣淵町はすごく雪の多い場所で、本当に心配になるぐらい雪が降ります。それでも随分たっているので、そういう心配は解消されました。
 これが、スケッチにあった実際の立面です。
 中庭にぽこっと出ていた卵形の部屋です。これはコンクリートで、木造でも何でもありません。ただ、トラスウォールというかごのような、網のような、そういう鉄筋でこの形を作って、型枠をつけないでそのままコンクリートを打って、内側からこてで押さえるというやり方で作った卵の部屋です。何万個かの木のプールで子供たちが遊んでいます。
 これは積丹町の小学校です。新しく造ったのはこの部分です。改修してあるのが古い体育館です。この古い体育館は現在、まちの集会所に使われています。役場の支所も入っています。学校の教室の一部としても使っています。学校本体に特別教室というのはあまりなく、こちらも使いながら学校全体が成り立っているという運営をしています。
 ここはすでに50年ぐらいたっている建物でしたので、柱、土台は全部腐っています。ただ、ぜひこれを使いたいということでした。それであればということで、リフトアップして柱、1mぐらいを全部切って、土台も引き直してストンと詰めたのです。だから、体育館ほど高さが必要なく、足したり引いたりしながらうまいこと使っていけるのが木造のよさだと思いました。ニセコの古い学校の体育館もこのやり方で、足を切って丈を少し詰めて、それが現在まちの集会所として機能しています。足し算、引き算できるのは木造のよさだと思っています。
 これもRC造の上にトラスを架けています。これは帳弦梁でもなんでもない、ちょっとした変形のトラスなのか何なのか……。これがトラスです。トラス状になっています。中間に1本支えがあるので、そんなに大きい部材でなくても成り立っています。中に入って見ますと、予想しなかったのですけれども、船底のような雰囲気があります。積丹町なので、こういう空間もいいのだ、と思いながら見ました。
 これが、その一部に搭状に立ち上がった空間です。これはステージになっています。この学校には音楽室がありませんので、ここで音楽の勉強をしたり、器楽をやっています。相当うるさい。ただ、人数の少ない学校ですから、うるさくても学校としては問題なく機能しております。
 これは、岩見沢の毛陽というところに丸太で造ったものです。われわれは「丸太シリーズ」と呼んでいるのですけれども、15年以上たっている建物です。すっかり周りの風景と調和しています。宿泊とレントランとおふろがある施設です。当初は町が運営していたのですけれども、今は指定管理者が管理しております。
 これがカナダから持ってきた丸太です。この時代は道産ではなくて、カナダから持ってきました。こちらがフィンランドから持ってきたログです。大きい管理・レストラン棟はカナダ、宿泊棟はフィンランド、規模によって持ってくる国を変えて作りました。小規模な建物と大規模な建物です。
 これは内部で、やはりこういう構造になります。木造というのはどうしても、柱と梁のジョイントが剛には出来ませんのでこうなります。こうなるのが、設計者とすればあまり好ましくない。こういう構造が好きというかたもいらっしゃいますけれども、われわれはもうちょっと何とかならないかと思ってやった建物です。ただ、途中からは、これは丸太を使った木造ではない、これは鉄骨造と同じだという意識を持ってやりました。ただ、相当しっかりしていますし、相当量の丸太を使っております。ただ、全部が全部ログハウスのように木々してしまうのは嫌だと思っていたものですから、違うデザインの照明器具―これは自分たちでデザインしたのですけれども―を使っています。
 これが温泉からサウナ小屋を見たところです。実際にちゃんと裸で外に出て、サウナに入って、途中で水風呂に入る人は入って、そしてまたこちらに戻ってくるという、本格的なフィンランドサウナを目指して造った建物です。
 今現在もこんな状態です。そういう意味では、すごく安心できる建物です。あまり古さを感じさせないというか、古くなりにくい。今思えば、こういう構造もよかったと思っています。本当に、鉄骨造の造り方と一緒です。
 建物というのはその建物だけで成り立つのではなくて、周りの風景とどう融合していくのかと。周りの風景がなければ建物というのは成り立たない、というぐらい周りの風景の強さというものを感じますし、絶対なくてはならないものはやはり、これを取り巻く風景だと思っています。
 これは民間ですけれども、丸太で造っています。これは航空写真で、CGで壁を入れました。このように壁を1枚立てた状態でCGを作っています。最初、コンクリートの壁を打ちました。クライアントは、建物を建てる前から庭造りを始めておりました。建った時点では、ある程度の庭ができています。中に入ると、丸太の梁と柱があります。この外壁はカラマツの垂木を張ったものです。相当量の垂木です。
 これは現在です。緑も豊かになってきて雰囲気も変わりました。こういう状態というのは建物ができる前から作ってありました。ちょっとしたアンティークの門扉をつけたり、自分で門を積んだりしました。周りは周りで勝手に進んで、それでお金が足りなくてちょっと工事が遅れていたのですけれども、壁だけでも作りたいというので、そこからズルズルと始まって完成に至りました。
 これは現在のようすです。全部2mピッチで梁を架けています。それで、柱を立てております。丸太というのはすごくやりにくい素材です。サッシをつけるにしても、梁を載せるにしても、梁と梁をジョイントするにしても曲線でいきませんので、必ずここで折れ曲がっていますから、丸太を切ってあります。それをどうジョイントするか、それと柱をどう緊結するかという意味では、すごくやりにくい建物です。ただ、「やはり北海道なのだから丸太でやりたい」という一言でこうなったわけですけれども、やってみて大工さんの腕とかそういうことがかなり必要になってくるという気がしました。
 これはスケルトンの状態です。コンクリートの壁を1枚打って、そして架けている。実際は、このコンクリートの壁にこの丸太は載っていないのです。載せてはだめ、というのが今の基準法ですから、この壁の裏に柱が1本あり、一応それで支えています。
 ここも土壌蓄熱です。土の中を暖めています。何がいいかといいますと、アンティークのものがたくさんあるので、乾燥が一番困ります。土壌蓄熱というのは極度に乾燥しないのがとりえなのです。今までどんどん加湿して物を守っていたのですけれども、そんなに加湿しなくても済むようになった、と言っています。
 これは、壁も天井もしっくいです。技術という意味では、しっくいを塗る人がやはり少なくなってきました。まして天井にしっくいを塗るなんていう家も建物も最近はそんなにありませんので、そういう技術を残していくという意味でも、チャンスがあればやってみる必要があるし、残していくべきものと思っています。
 これは、つい最近できた津別町の街中の活動センターです。これもスケルトン状態です。これは900ピッチに300の集成材をずっと並べていった建物です。この建物は500平米近いのですけれども、補助の性格上、100立米の木材を使うという条件でスタートしたものです。したがって、中央にあるデッキも全部、木製です。ちょっとはね上がっているのですけれども、それまで使わなければ100立米という条件はクリアできませんので、たくさん木を使ったという例です。ただ、いいことは、もったいないからといって梁を飛ばして小梁を架けて、そして部材を小さくしていくようなやり方は、確かに材積的には下がるのですけれども、思い切ってざっとやったほうが、時間的にはすごく短縮になります。もちろんそうなのですけれども、現場での組み立ても速いし、もうこれを架けた状態で仕上がりだというぐらいまで持っていくと、ちょっと材料は食いますけれども、面白い作り方だと思っています。千歳でやりましたので、ここも外壁に垂木を張って、真っ黒く塗っています。すごく低い建物で、親しみやすいスケールのものだと思います。
 これも最初に描いた断面なのですけれども、部屋の中、部屋の中、そしてここがひさしの下です。ここで露天販売をしたり、いろんな活動ができます。露天販売できるぐらい深い、2mぐらいのひさしを出しています。ひさしというのは外壁の耐候性を高めるうえでも大事なものですから、思い切って300の梁のよさをここで使っております。
 もちろん、サッシもすべて木製です。全部、北海道で作っているものです。すごく喜ばれているのが、中央の中庭です。今まで少し離れたところでやっていた催し物を街中でできるようになったとか、割と夜遅くまでテーブルやいすを出してビールを飲んでいる人がいてにぎやかだとか、喜ばれております。
 津別町には針葉樹合板の工場があります。日本一という巨大な工場です。もちろん、この中の仕上げはすべて、そこで生産された針葉樹です。そして、こういうサインがあるのですけれども、これも12ミリの針葉樹合板をこの厚さまで重ねているのです。これもそうです。全部、重ねているのです。それをスライスして、くり抜いてサインに使うとか、それをデザインしながら棚にしています。
 これも針葉樹合板のそういう断面を出しながら、北海道の木を使って館内の案内板を作っています。このカウンターもそうです。
 このベンチもそうです。本当は全部重ねたかったのですけれども、重くて持てないというので三つに分かれています。全部、重なっているのです。それをくり抜いてベンチにしています。この町で、いすも家具も仕上げ材もできるし、この建物を造る技術もそんなに難しくありません。すべてがこの町でそこそこ精度よくできています。ということで、あるようでなかなかない経験をしました。
 これは道に対して開かれている、ちょっとしたカフェです。このカウンターも針葉樹合板です。針葉樹合板を重ねて、それをスライスして作っています。このいすなんかは、もう一つある町の木工場で作っています。梁も仕上げも全部、この町のものです。
 中央にあるちょっと広いスペース。床に点検の開口が点々とありますが、厨房機器を移動して、ここでパフォーマンスをします。調理実習室が欲しい、という案があって、それではこの広さの中でそういう限定した場所を作ってはどうか、ということで提案したのが、移動式の厨房機器を使うということでした。ここには巨大な開口があります。全部開け放すと一体になれるという構造です。
 これは、雄武町の展望台です。これが何で木と関係あるのかと思われがちですけれども、実は立体トラスなのです。僕たちにとって、これはすごく思い出深い建物です。もう20年ぐらい前のものです。その前から町とつきあいがあったものですから、「何か面白い展望台を考えてくれ」と言われて、まさかこんなものはできないだろうと思ったのが、本当にできてしまったということです。流氷が来る日の出岬という場所で、相当純度の高い風景があります。
 これはそのときのコンセプトイメージです。全方向が見えること、構造との関係、北海道の位置、夕景、昼、夜景……。そんなことをスケッチしたものです。面白いのは、4本の柱の上に立体トラスが載っている。この柱の上に立体トラスが載っている。この梁同士はつながっておらず、独立している柱です。周りは全部、ガラスです。まさかこんなものはできないだろうと思っていたら、本当にできてしまいました。今見ても、潮でガラスが汚れているかというとそうでもなく、立派に建っています。水槽をもって圧をかけて潮を洗い流すという仕掛けもありますけれども、あまり使われていないようです。しかし、そんなに汚れている状態ではなく、きれいに建っています。これを設計するときに、「過去に50mの風が吹いたことがある」ということでしたが、そんな風はそうそう来ないだろうということで設計しました。しかし何年か前、北海道に上陸した台風では50mを超える風がこれに吹き付け、屋根の仕上げが全部、はがされました。ただ、ガラスもこのトラスも全然問題なく、屋根だけが被害に遭いました。屋根が飛ばされて、雨で中が相当傷んで、それをきっかけに中がまたきれいになって、われわれにとってはよかったという……怒られますけれども、そんなふうに思いました。
 中から見ると、こんな状態です。
 これがつながっていない、独立している柱で、立体トラスです。実はこの当時、北海道の木ではできなくて、スギを使いました。何がこういうことを可能にするかというと、ボールジョイントです。これはドイツ製で、日本にはないものでした。これはすごく高いものです。ただ、それがないとこういう形態も構造もできなかったということですしかし、町も思い切ってこれを使ってくれて、こういう形が成立しました。もう20年以上も前ですから、われわれにとってはすごく思い出深い建物の一つです。
 これは積丹の生協の「ふれあいの森」で、大規模な木造です。研修・宿泊棟、そしてこの奥に木工の工房があります。そういう工房が何軒か建っており、全体が一つのコンプレックスになっています。
 道立足寄少年自然の家の屋外のキャンプサイトです。こんなふうになっています。全部木造です。集成材で梁を円く……三日月型のような断面にして、全部載せて円い形態を作っています。真ん中にキャンプファイヤーがあり、中にはトイレがあり、炊事のできる場所があり、割と大胆な円形です。外部にさらされた状態で、これも元気に建っています。
 最初が住宅で始まりましたので、住宅で終わりたいと思います。
 これは、10年ぐらい前からわれわれがやっている「ビーハウス」というシステムです。これは集成材構造です。当初、北海道の集成材ではなかったのですけれども、現在は、梁も柱も床も壁も全部道産です。この当時は、U金物というのが柱と梁の接点にあったのですけれども、今は普通の金物に替わりました。われわれは、まだこの工法で1年に何軒かは設計しています。4mのスパンが基準になって、240の梁が基準。2階までの高さが2.4mと相当低く、梁の下までも2.25mとすごく低いのですが、低さを感じさせない建物です。壁なんかも工場で断熱材を入れてきますので、組み立ててでき上がり、というシステムです。
 外壁なんかは一般的にどんなものを使ってもいいです。天井もパネル状に工場で作って、現地で入れます。床も三層構造の集成材で、根太レスでやっています。ただ、このときはこれが50?ありました。今は33?と一回り幅が小さくなっていますけれども、そのほうが狂いも少なくていいようです。ここに「60代のビーハウス」と書きましたけれども、これから高齢化していきますし、メーターモジュールなので、一回り大きいスケールで造るものの使いやすさが実感できる建物だと思います。
 これは内部です。障子を入れたりこういうしつらえにして、和風的にも楽しめます。ライフスタイルでいろいろ楽しめると思います。
 私の兄は、50mぐらい離れた、とても住みにくい家に住んでいます。どうして引っ越さないの?と言っても、なかなか引っ越せないで不便なところに住んでいます。どういうふうに使っているかというと、あまり物を持ちこまづ、別荘的に使っているのです。いずれは階段もなく便利なところに住むのだろうと思いながら、まだ元気なものですから、不便なところに住んでいます。もう少しわれわれが頑張って、こういう方法で家を造っていきたいと思っています。

●司会:井端様、ありがとうございました。
 本日は「北海道の木と建物づくり」と題し、木材の持つ素晴らしさと建築における木材活用の事例などを踏まえ、公共建築における木材利用の可能性をテーマに、皆様への情報発信として大橋様、井端様に貴重なご講演を頂きました。ご来場の皆様におかれましても、今後の公共建築の果たすべき役割について、木材利用の視点から新たな発見、思いがあったのではないかと存じます。
 ご講演いただきましたお二方に、再度盛大な拍手をお送りくださいませ。(拍手)



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■フォトコンテスト結果発表及び講評

●司会: それでは、本日のもう一つのプログラム、コンテストの発表でございます。
 初めに、フォトコンテストの結果発表です。
 フォトコンテストは、「ひと・くらし・たてもの」をテーマに平成15年から開催しており、今年で8回目となります。今年は、64作品の応募があり、10月23日、24日にモエレ沼公園ガラスのピラミッドで開催した「『公共建築の日』フェスティバル2010inモエレ」にて応募作品を展示後、10月25日に審査いたしました。審査については、主催者の北海道開発局と後援団体の北海道と札幌市からそれぞれお一人、写真の専門家として、フォート・アクト代表で日本写真家協会会員理事でもいらっしゃいます佐藤雅英様の4名で審査をしていただいております。
 それでは、審査委員長でいらっしゃいます佐藤様から、審査結果を発表していただきます。

●佐藤: 今回も楽しく審査させていただきました。今年は事務局の皆さんの努力が実りまして、応募も全道的に広がりを見せております。
 それでは、佳作から発表したいと思います。今日は受賞されたかたがたくさん出席されているようですので、簡単に講評を交えながらと思っております。

 ◆佳作の須賀正孝さんの作品です。釧路のフィッシャーマンズワーフですね。風景写真のよさにちょっと惑わされたところがあるのですが、これは釧路ですから、たしか毛綱毅曠さんの設計ですね。私は何度もここを見ているのですけれども、シルエットではなく建築のよさがもう少し表現されていれば、もっと上位に行った作品かと思います。でも、とても哀愁があって、「ここへ行ってみたい!」という感じにさせる作品でした。
 ◆袰田祥健さんの作品です。これは岩見沢の駅の複合施設プラザを撮ったもので、夕方の難しい時間です。手前にサンタクロースの格好をして子供さんがたくさんいます。日中シンクロという技術があって、自然の光に合わせてストロボを発光させています。これが、非常にバランスがいいですね。難を言えば、子供たちの表情が分かればもっとよかったと思うのですが、建築とそれを取り巻く人間が、何ともいいバランスですね。
 ◆札幌市の山内佳子さん。当別町立弁華別小学校を撮った作品です。二宮金次郎の銅像と、古い小学校を見ている後ろ姿のカップルも哀愁を誘う、いい写真ですね。
 ◆齊藤美智子さんの作品です。私は知らなかったのですが、室蘭にこういうバチラーさんの記念館があるのですね。バチラーさんですから、田上さんの建築ですか。田上さんが北海道に渡ったときに、最初に汽車の中でバチラーさんと出会うのです。それが縁で、田上さんは札幌に住むことになったのです。生前、田上さんと随分親しくさせていただき、車に乗せていろんなところを連れて歩いたものですから、同じ話を何度も聞いており、もしかするとこれは田上さんかなと思って、びっくりしました。これも石の表情といい、いい建築ですね。ぜひともこれは中を見てみたい。今度、室蘭に行ったら訪ねてみたいと思っています。素晴らしい写真です。
 ◆室蘭の齊藤玲子さん。岩見沢駅ですね。構図的には非常に大胆です。こういう写真ですと普通は横位置で撮るのですが、できればこれも、建築の左右をもう少し入れてほしかったですね。これはいろいろな賞を取っている有名な建築です。建築プラス周りの環境、これがいかに大事か。建築といい、周りの環境といい、立派な木といい、環境もとらえたいい写真になっております。
 ◆小樽の紅露雅之さんの「フェリーターミナルに虹がかかる」という作品です。これも技術的にしっかりしています。三脚を立ててじっくり撮ったのではないかと思うのです。虹を撮るタイミングというのは難しくて、なかなか撮れないのです。でも、これは非常にいいタイミングです。できればこれも、撮影するときにもうちょっと右側に移動して、船の上から虹が出るようになっていれば、もっと面白い写真になったかと思っております。
非常にいい写真ですね。

 ここからは準グランプリです。
 ◆札幌の岩淵さとみさん。「羊飼いの家」。士別ですか。これも大胆な、手前に羊と子供を入れて、奥に建築物があります。普通は建築物をもっと大きく撮りたいところなのですが、遠近感を生かして手前に子供を入れたのが、非常にいいですね。
 ◆寺澤郁さん、札幌のかたです。皆さんご存じの道庁です。安田侃さんがついこの間まで、展覧会をやっておりました。そのときの写真なのですね。写真的に特別すごいということではないのですが、ちょうど正門の真っ正面と侃の彫刻の門を持ってきたという、これが面白いと思うのです。それと、これは非常にタイムリーです。この時期しか撮れない。撤去されて、もうないと思うのですが、タイムリーなことを表現できるのも写真だと
思います。このままここへ設置されれば、われわれ道民にとってはすごくいいと思います。
 ◆齊藤匡輝さん、室蘭のかたです。室蘭の古い小学校ですね。空間が伸び伸びとして、空といい、非常にスケール感のある写真になっています。それと、これは円い建築です。近々壊されるという話を聞いたのですけれども、もったいないですね。こういう建築はぜひとも残して、再利用できればいいなと勝手に思っております。せっかくここで野球部の少年たちが練習していて、できればもうちょっと右に移動して、手前にこの子供たちを
入れて左をちょっと切れば、また違った写真になったと思います。でも、準グランプリの素晴らしい作品です。
 ◆いよいよ今年のグランプリの作品です。素晴らしいですね。札幌の近藤信竹さんです。「競宴」というタイトルで、北海道大学農学部と札幌競馬場を写しています。これはどこから撮ったのか私なりにいろいろ考えてみたのですけれども、とうとう分かりませんでした。もしかするとJRタワーの上からか……。JRタワーだとちょっと離れ過ぎ。でも、かなり上から撮っていますね。私も昔、北大の写真集を出したことがあるのですけれど
も、農学部の一番上に鐘があるのです。これは昭和17年まで、毎朝鳴らしていたそうです。昭和17年以降、1度も鳴らしたことがないのだそうです。これは、私たちが全く見たことがない風景です。競馬場の光といい、非常に幻想的です。難を言えば、空をちょっと切って、農学部の下をもうちょっと入れていただければ、もっとよかったと思うのです。それでも、素晴らしい作品です。新しい発見。これは札幌市のポスターにも使えそうですね。

●司会: 佐藤様、ありがとうございました。
 それでは、入賞者には事務局から賞品をお贈りすることになっておりますが、本日は、グランプリを受賞されました近藤信竹様と、準グランプリを受賞された3名のうち齊藤匡輝様、寺澤郁様の2名様が会場にお見えですので、この場で賞状の授与を行いたいと思います。
 それでは、近藤様、齊藤様、寺澤様、どうぞステージにお越しください。

●佐藤: 平成23年度「公共建築の日」フォトコンテスト・グランプリ、近藤信竹様。おめでとうございます。(拍手)
 以下、同文でございます。準グランプリ、齊藤様。おめでとうございます。(拍手)
 以下、同文でございます。準グランプリ、寺澤様。おめでとうございます。(拍手)

●司会: それでは、受賞された3名様に、皆様、もう一度大きな拍手をお送りくださいませ。(拍手)
 そして、佐藤様、ありがとうございました。

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■ポスターコンテスト結果発表及び講評

●司会: 続きましてもう一つのコンテスト、ポスターコンテストです。
 このコンテストは、高校生以上の学生さんを対象として、「11月11日公共建築の日」をテーマに平成17年から実施しており、今年で7回目になります。
 今年は76作品の応募がありました。作品については、フォトコンテスト同様にガラスのピラミッドで展示後、11月9日に審査をいたしました。
 このコンテストの審査は、主催者の北海道開発局と後援団体の北海道と札幌市からそれぞれお一人、専門家として、美専学園 北海道芸術デザイン専門学校校長で北海道デザイン協議会副会長でもいらっしゃいます後藤精二様、札幌市立大学デザイン学部教授で日本クラフトデザイン協会理事でもいらっしゃいます石崎友紀様の5名で審査をしていただいております。
 それでは、審査委員長であります後藤様より、審査結果を発表していただきます。

●後藤: 11月9日、水曜日に審査をいたしました。ご紹介のとおり、私と市立大学の石崎先生、それから開発局の内野井さん、北海道建設部の須藤さん、札幌市都市局の高橋さんの5人でございます。
 

 

 それでは、11作品ありましたけれども、佳作からご紹介していきたいと思います。

 ◆川添陽香さんの作品です。割とシンプルな色使いと、テレビ塔の鉄骨のところが―少し読みにくいのですが―「公共建築の日」となっていて、アイデアの大変面白い作品ということで、入選となっております。
 ◆北川莉乃さんの作品です。中央の公共建築の絵をみんなで創り上げるというアイデアが、とってもいいと思っております。ただ、左側の机が少し暗いと思いますけれども、みんなで創り上げるというところにはアイデアがあるということで、入選となっております。
 ◆添田由子さんの作品です。ガラスのピラミッドの写真がシンプルに扱われていて象徴的になっておりますことと、11月11日、「11・11」というところ、これもまた非常にシンプルで、心地よい作品だということで評価されております。
 ◆平みづきさんの作品です。フェルトを使ってイラストレーションを作っていることと、「11月11日は公共建築の日」という文字が、普通のタイプフェイスと違って、クレヨンで塗ったようなテクスチャーをつけているところが非常にかわいくて、女の子らしい表現ができているという気がいたします。
 ◆竹原ありささんの作品です。どちらかというと建物のほうにうんと寄りがちなところですが、左のコピーが「ぬくもりがある公共建築がある」ということで、手のひらの中、親指、中指、小指のところに公共建築物らしきものがあり、男の子と女の子が手の中で仲よくしていて、楽しいアイデアだと思わせる作品です。
 ◆望月礼奈さんの作品です。これは、「11月11日」ということを日めくりのカレンダーで表現しているのですが、独特の世界観を持っているデザインということと非常に個性的ということで評価のあったものです。
 ◆新井小麦さんの作品です。レインボーカラーのシンボリックで鮮やかな色の組み合わせの中で公共建築の写真が組み合わさっていて、非常にインパクトがありますし、印象深いデザインになっているということで評価があったものです。
 ◆準グランプリ、佐藤歩さんの作品です。スマートフォンの時代に替わりつつあるという時代をうまくつかんでいること、それからスマートフォンの中に公共建築のマークがあしらわれているということで、アイデアがいいということと新しさがあるということで、準グランプリとなっております。
 ◆これも準グランプリ、小田桐詩穂さんの作品です。これは公共建築のマークを円状に配置し、影をつけています。シンプルなのですが、知的なレイアウトになっているところ、それから色をそんなに使わずにバックが真っ白でも、ある程度のインパクトを見せているということで、準グランプリの作品となっております。
 ◆準グランプリ、小川加奈さんの作品です。先ほど写真のコンテストの発表がありましたけれども、今回のポスターのコンペの中では写真として完成度が高く、モエレ沼公園の空気感をよく表しているということで、シンプルで心地よい作品になっています。
 ◆今回のグランプリ、廣川世奈さんの作品です。シンプルで、力強い。建物を思わせる形の中に公共建築の日の「11 11」が柱として入っており、情報量が少なくてもポスターとして成立するのではないかと。インパクトの強さと、かわいらしいというか力強いというか微妙なところですが、ポスターとして完成度が非常に高いということで、グランプリとなりました。
 全体といたしましては、ここ二、三年のうちに学生さんのクオリティーが上がってきておりますし、パソコンのスキルも非常に上がっております。毎年、作品としてはいいものが上がってきておりますので、来年も楽しみにしております。
 審査結果としては、以上でございます。

●司会: ありがとうございました。
 それでは、入賞者には事務局から賞品をお贈りすることになっておりますが、本日はグランプリを受賞された廣川世奈様と、準グランプリを受賞された3名のかたのうち小田桐詩穂様、佐藤歩様の2名様が会場にお見えですので、この場で賞状の授与を行いたいと思います。
 それでは、廣川様、小田桐様、佐藤様、どうぞステージにお越しくださいませ。

●後藤: 表彰状。平成23年度「公共建築の日」ポスターコンテスト・グランプリ、廣川世奈殿。
 あなたの作品は、平成23年度「公共建築の日」ポスターコンテストにおいて、独創性が高く、優秀と評価されました。よって今後一層の活躍を期待し、ここに表彰します。
 平成23年11月16日、公共建築の日北海道地区実行委員会。おめでとうございます。(拍手)
 表彰状。準グランプリ、小田桐詩穂殿。以下、同文でございます。(拍手)
 表彰状。準グランプリ、佐藤歩殿。以下、同文でございます。(拍手)

●司会: 受賞された3名様に、皆様、もう一度大きな拍手をお送りくださいませ。(拍手)
 受賞された皆様の、今後ますますのご活躍を期待しております。
 これをもちまして、フォトコンテストとポスターコンテストの結果発表を終了いたします。
 この広大な北海道には、私たちの身近に木や自然がたくさんあります。人が集う場所である公共建築にもこれからもたくさんのぬくもりが宿ることでしょう。

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■閉会

●司会: 皆様、いかがでしたでしょうか。「11月11日公共建築の日」を記念いたしましてのフォーラムでございました。
 本日は、長時間にわたりご清聴いただきまして、本当にありがとうございました。
 皆様、入場の際にお配りしたアンケートのご提出をよろしくお願いいたします。
 以上をもちまして、平成23年度「公共建築の日」フォーラムを終了いたします。(拍手)



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