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雪氷輸送利活用シンポジウム(第2部)

第2部 パネルディスカッション 「北海道の雪氷が東京を冷やす」

コーディネーター パネラー
木元教子氏 佐土原聡氏 媚山政良氏 枝廣淳子氏 小嶋英生氏 川合紀章氏
木元教子氏
評論家・ジャーナリスト
佐土原聡氏
横浜国立大学大学院環境情報研究院教授
媚山政良氏
室蘭工業大学工学部機械システム工学科助教授
枝廣淳子氏
環境ジャーナリスト、ジャパン・フォー・サステナビリティ共同代表
小嶋英生氏
大規模長期食糧備蓄基地構想推進協議会事務局長
川合紀章氏
国土交通省北海道局企画調整官

パネルディスカッションの参加者
木元 パネルディスカッションの様子
 今日は本音の本音を皆様と一緒に考えていきたいと思います。
 本当にもったいないと思うのは、東京からトラックがいっぱい荷物を運んで苫小牧に入ります。ところが帰る時には空荷が多いのですね。32万トンぐらい空きがあるということで、そこに氷を積んでくる。今まで捨てていた氷とか雪を再評価する形ですので、とても素晴らしいことだと思います。
 それでは自己紹介を兼ねてお願いします。媚山先生はどうして雪や氷に関心を持たれたのですか。
媚山  私たちは20年前から雪の利用を掲げました。昔あった氷室や雪室は20年前にはない時代でした。ところが春先には巨大な雪捨て場に雪があり、私たちは溶けてしまうのが当たり前だと思っていますが、ふと立ち止まって見ると、雪というのは氷ですから、なかなか溶けないものです。
 例えば、雪中米を貯蔵している米倉庫は、15cm程度の断熱材で囲っておくだけで中の雪が1年中残ります。ただ外から熱がきますし、米だって生き物で熱を出しますから溶けてきます。しかし、北海道は11月になれば初雪が降りますので、11月の頭まで貯蔵できればよいわけです。そういうシステムを最初に作り、うまくいきましたので、農産物ではなくて人間を冷やす雪冷房マンションを考え、これもうまくいきました。
 経済的な問題も当然ありますけれども、東京ですとか、雪のない地域に利用していただいて、一緒に自然エネルギーを利用していくのは当然の流れです。それが今回の一歩だと思いますね。
川合  私は元々港湾整備を担当していまして、北海道の物流問題について取り組んでいました。北海道の物流は夏に東京への帰り荷が空になるという大きな問題があります。氷を東京に運ぶというのは、一石二鳥というか「一雪二鳥」を狙ったものであり、一つは東京の環境問題で、もう一つは空荷の有効利用であり、これは北海道の経済活性化にまで繋がる非常に大きなことと考えています。
木元  ちょっと発想の転換をして新しい視野で見ればいろいろなものが生まれるものですね。枝廣さんはずっと環境問題に取り組んでいらっしゃいますね。
枝廣  私は3年前にジャパン・フォー・サステナビリティというNGOを仲間と作って、日本の環境に対する取り組みを世界へ情報発信しています。日本のエネルギー自給率は非常に低く、原子力を入れても20%というもろい立場にいる日本人は、エネルギー危機や温暖化をどう思っているのか、どうするつもりなのかを世界中が注目しています。そういった意味でも今日の内容に関心があります。
木元  佐土原先生は、今日は地域冷暖房の専門の立場でご出席いただいていますけれども、元々はどういう活動をされているのですか。
佐土原  元々は建築の分野ですが、地域の環境とか、都市のエネルギーを中心にした環境問題に関心を持つようになり、地域冷暖房を研究テーマにやってきたという事です。今日は東京サイド、ユーザーから、こういった雪氷がどのように使えるのか、どういう利点があるかということについてお話したいと思っています。
木元  小嶋さん、基調報告ではこれまでの経緯や現在の活動をお話しいただきましたけれども。
小嶋  平成6年頃ですけれども、北海道の大先輩の戸田一夫さん、太田英之さんたちが勉強会をやっていたんですね。雪や氷と食糧を主体にして北海道の産業を活性化できないか、という勉強をやっていたところにお誘いがあり仲間に入れていただいて、ついついのめり込んでしまいました。

一雪二鳥 — ヒートアイランドと物流課題の解消

木元  それでは本題に入らせていただきます。東京のことをよくヒートアイランドになったと言いますが、実際にどういうことが起こっているかと言うと、1986年から2001年までの資料によれば、平均気温が上がりっぱなしなのですね。枝廣さんも環境にずっと関わっていらっしゃっるので、ヒートアイランド現象というのを再度フォローしていただけますか。
枝廣  東京のような大都市では、ヒートアイランドが起こっていますが、出される熱と吸収し冷やされる熱のバランスがとれていれば起きないものです。ところが、ここに悪循環のフィードバックループがあります。例えば、ヒートアイランド現象が起こると、温度が上がるので空調をつける。エアコンから排熱がでるので、さらに暑くなり、ヒートアイランドが進み、もっと温度が上がるという悪循環です。この悪循環を止め、好循環に変えていく必要があります。このヒートアイランドのループは悪い方にもどんどん進みますが、いったんそれを断ち切れば良い方にもどんどん進みます。この転換につながる効果的な介入点をレバレッジポイントと言いますが、その一つが排熱を抑えることです。その点で雪氷を使って東京の排熱を抑えることができれば大きな意味があります。
木元  そうですね。エネルギー消費も確実に増えています。その時に、自然の雪氷でこれを抑えるという発想はすごいと思いますが、雪氷自体は昔から利用されてきていたものですね。今なぜまたこう盛り上がってきたのでしょうか。
川合  一つは首都圏の環境対策ですね。深夜電力で氷を作り、昼間の冷房に利用するエコアイスシステムも夜は熱を出しますから、ここに北海道の氷を入れ、冷房をすれば排熱が押さえられ、さらに、マイナスの冷熱を北海道から東京に持ち込むので、まさに「北海道の氷が東京を冷やす」ことになるのです。
 もう一つは、北海道の物流課題です。北海道から東京へ運ぶフェリーやRORO船・コンテナ船が東京から満杯で来るにもかかわらず、北海道から東京への荷物がないのです。5月には苫小牧から東京へは4割が空なのですが、その空を有効利用しようというのです。帰りの荷物が空だと、荷主は往復分の運賃を負担する形になるので、輸送コストが割高なのです。そして輸送コストが高いから製造業が成り立たない。製造業が成り立たないから東京に出す荷物がない。まるで先ほどのヒートアイランドにおける悪循環のようです。これをどこかで断ち切りたいということで考えたのが氷だったわけです。氷が貨物になって運賃負担ができると輸送コストが下がり、北海道の製造業が競争力を持ち、地域が活性化します。北海道の物流課題と、東京の環境問題を結び付けた、まさに一雪二鳥のプロジェクトというわけです。
 国土交通省では来年の6月から、輸送の水漏れ対策だとか、コストの検討のために、実際に氷を東京に運ぶ実験をすることにしています。

雪氷エネルギーは1トン当たり石油10L

木元  それでは媚山先生、これは自然の氷を使うことが重要だということが分かってきました。自然のまま、あるがままのものを有効に利用しようという考えで良いのですね。
媚山  おっしゃる通りです。ただ、工夫が必要です。先ほどのヒートアイランドを止めるのに冷やさねばならないのは、まず私たちの頭ですよ。エコアイスシステムだって本当は燃料を、有限な資源を使っているのです。私たちの子孫とエネルギーや環境を分かち合わねばならないのに、今自分が生きている間だけよければいいという思い、その頭を変えないとだめです。自然に生産された雪や氷、真冬の冷熱を夏まで半年保存する、だからエネルギー、資源なのです。半年間、雪を貯蔵しておくというのはそんなに難しい話ではありません。二つ方法があり、一つは断熱を施した方法を考える。15cmくらいの断熱材を入れた箱で保存します。もう一つは200万m3ある雪捨て場、同規模のものが札幌に20カ所あるのですが、この雪の上に木の皮のチップのバーク材を30cm被せるだけです。それで高さ30mのうち1.5mしか溶けません。残りの雪100万トンは全部利用できます。ところが1トンの氷を作るのに使う石油は10L必要です。100万トン作るにはドラム缶5万本の石油が必要です。どちらを取るべきかは明らかだと思います。大事なのはまず一歩踏み出すことです。
木元  話がエネルギーの話に及びました。今、いろいろとご紹介されて、なるほどと思いますが、佐土原先生、今お聞きになっていかがでしょう。これは利用価値があると思われますか。
佐土原  そうですね。思ったよりも溶けないというのがまず実感で、これを夏までとっておき、一番必要な時に運んでいただいて、エネルギー問題と環境問題の両方が解決できるのに使えれば、東京側は歓迎ですよね。先ほどから話に出ているエコアイスなど、どのように雪氷が冷房の中にうまく組込めるのか、そういったことを含めて話したいと思います。
 エコアイスというのは電力会社の方で開発されたもので、氷蓄熱の空調システムを一般的にこう呼んでいます。夜間の電気を使って冷熱をため、昼間に使うというものです。冷房は昼間に電力のピークがあるものですから、そのピークの時に夜間で作ったものをうまくシフトすることができます。しかし、氷を作る時には、もちろん排熱が出ますが、この部分にもし持って来た氷をそのまま入れられれば、この部分からの排熱は出なくなるということですね。実際に運んできて氷を使う時に、個別の建物でバラバラにやるよりは、冷房や暖房の熱を作る施設が1カ所にまとめられている地域冷暖房が、受入先としては好ましいのではないかと思います。東京から横浜の臨海部で10ヵ所以上に及びます。これらの地区で1日に必要な冷房の氷の量は、8月のピークの時で4万トンと言われています。臨海部という、陸の輸送をほとんどしない場所でこれだけの需要があるということは非常に可能性が大きいと思います。
木元  今、北海道の氷で東京を冷やそうというプロジェクトの将来性について川合さん、お話ししていただきたいのですが。
川合  まず一歩を踏み出すことが大事だということで、最初は限定的な範囲での利用を考えます。陸上輸送コストが非常に高いものですから、苫小牧で氷を作り、隣接の苫小牧港から貨物船の空荷を利用して東京に運びます。氷の利用は、東京の臨海部での利用に限定しています。物流コストの削減と環境問題の改善が、まずわれわれが一歩踏み出すところです。
 将来的には、環境負荷に対する意識やコストの高まりや、環境税の創設やCO2の排出権がお金で取引されるという状況の中で、冷熱輸送対象範囲が拡大する可能性があります。物流の方も空荷が少しでも埋まり、物流コストが下がると、北海道の産業の競争力ができ、物流量も拡大されるだろうと考えています。
 北海道は、昔石炭の搬出基地として日本の高度成長を支えてきましたが、今度は環境問題を解決する新たなエネルギー基地になるのではないかと期待しています。われわれは、「黒いダイヤから白いダイヤに」というキャッチフレーズを使っていますが、大きな意味で北海道の位置付けが高まるだろうと思います。

雪氷普及にはコスト克服と環境意識の高まり

木元  克服すべき課題はいくつかありますが、システムでの課題から媚山先生、何かありますか。
媚山  氷を持って来ても、使ってもらわなければならないわけですよね。そこが一番大きな課題だと思います。例えば、地域冷房との組合せですが、これはなかなかうまく接続できないと思います。向こうの池で作った氷はきれいなわけではないですし。でも例えば築地、あそこはずいぶん冷房を必要としていますが、北海道から持って行った氷を置き、そこに送風機で風を送ればよくて、これが一番簡単な方法です。将来的には既存の大きなシステムの中に繋いでほしいと思いますけれども。
木元  佐土原先生、技術的な問題というのは何か考えられますか。
佐土原  受け入れる方の地域冷暖房の設備と、蓄熱槽というのはかなり水質が管理されているものですから、そのあたりが問題ではないかと思いますね。それから地域冷暖房ですと、熱の供給者と受け入れる側との間の供給規定というのは非常に厳しいそうです。温度制御がある温度幅で供給するということに決まっていますので、そういう所に氷をバッと入れてしまうと制御を難しくするのです。最初はもう少し自由で緩やかな関係で熱を受け入れて供給するような形がよさそうです。例えば、関西の六甲アイランドで成り行き供給というのがありまして、出てきた温度をそのまま送って、夏場はそれだけでシャワーが浴びられます。値段は月1,500円くらいです。規模がある程度小さければ、そういう気楽な関係でやった方が良いのではないかと思います。
木元  それも良いですね。それから徐々に高度なところまで行くのでしょうけれども、問題は経済性ですが、小嶋さん、いかがですか。
小嶋  非常に難しいですね。今、私たち食料備蓄推進協議会の雪氷輸送検討部会が提案しているのは、公的施設で氷・雪冷房を使ってほしいというものです。それからもう一つは環境省に対して、雪1トンは石油10Lに換算できると言っています。灯油で考えると今1L50円以上していますから、10Lだと最低500円ですね。そう考えますと雪1トンを使う施設に対して少なくとも500円の環境省の支援があってもおかしくないのではないかという提案をしていきたいと思っています。
川合  コストの面について補足させていただきます。システムの利点と弱点の両方になるのですが、運んだ氷は既存のエコアイスに入れて使ってもらわなければいけないという事情があります。空荷というのは不定期なものですから、氷が運ばれない時はエコアイスを稼働してもらわないといけないのです。そうしますとエコアイスの非常に安い深夜電力料金と、われわれが1トンの氷を製造して保存して輸送する値段との勝負になってきます。今はまだコスト面で勝てませんが、これからの環境税とか環境コストの問題、あるいはもう一つ環境意識ということで、少しぐらい高くてもCO2を出さない、排熱を出さないのなら使おうという環境意識の高まりをわれわれは期待しているというところです。
木元  結局、そこにいきますね。確かにこういうものは良いという意識はみんな持っている。でも経済性は少しデメリットがある。そうすると環境問題に関する意識の向上がこれを支えることになると。そこで枝廣さん。
枝廣  こういう話し合いではよく、最後の切り札のように、「環境意識」が登場しますが、企業や一般の人も「それは確かに良いことだ」とおっしゃっても、「じゃ、高くても払いますか」と言うと、今はなかなかそういう仕組みにはなっていません。よい事業をやってみようという企業を社会や消費者が認め、応援する仕組みを作っていかないと、環境意識に呼びかけるだけではなかなか難しいと思います。一般の人たちにも分かってもらって応援してもらおうとしたら、100万人のキャンドルナイトや打ち水大作戦のように、ロマンや楽しさ、友達や恋人や家族と共有したくなるもの、見えやすさなどのポイントが必要だと思います。
木元  こういうのはある種のムードづくりと、イメージが必要です。みんなが何か良いことをしているということが共感できればプロジェクトは進みますよね。雪や氷というものは冷たいものですが、その雪や氷を使って私たちの暮らしの中に生かす運動はとっても暖かい作業ですね。今日はありがとうございました。

お問合せ先

開発監理部 開発調整課

  • 電話番号:011-709-2311(内線5473)
  • ファクシミリ:011-709-9215

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