鵡川・ピリカ・プロジェクト:第7回意見交換
第7回 意見
第7回 鵡川・ピリカ・プロジェクトでは、「鵡川の環境教育とアイヌ文化」をテーマとして、前半に宮本 英樹氏(NPO法人ねおす 専務理事)、片山 幹雄氏((社)北海道ウタリ協会胆振地区連合会 副会長)による講演、後半に意見交換を行いました。
講演と意見交換の内容を以下に示します。
講演と意見交換の内容を以下に示します。
目次
1.宮本講師の講演内容
1)はじめに
2)ねおすの活動
3)エコツーリズムのきっかけ
4)エコツーリズムと地域づくりについて
5)事例の紹介
6)おわりに
<<質疑>>
■講師
宮本 英樹 講師
NPO法人ねおす 専務理事
2.片山講師の講演内容
1)はじめに
2)映像上映
3)鵡川とシシャモ
4)アイヌ文化の自然観
5)おわりに
<<質疑>>
■講師
片山 幹雄 講師
(社)北海道ウタリ協会胆振地区連合会 副会長
3.意見交換(グループ討議)
4.その他
1.宮本講師の講義内容
- はじめに
- 昔から自然が好きだったのと、出身地の置戸町のようなところの活性化には自然資源を使った観光や環境をやるべきと思い、この仕事についた。
- 4月1日にエコツーリズム推進法が施行される。流域や国立公園等の地域で協議会をつくって、法律に基づいて振興していくことになる。
- ねおすの活動
- ねおすは自然体験活動を手法に、観光や教育、地域作りを手がけている。持続可能な生活を北海道で提案するため、子供から大人までの体験活動やその指導者の学習拠点を作っている。特に交流、ツーリズムに力をいれている。
- 黒松内町では、無価値と見なされていたブナの木が、その北限地帯に当たることからまちおこしの中心としようということになり、これを応援するような形で黒松内町ぶなの森自然学校を運営している。
- 登別市の鉱山町に鉱山跡地が自然再生していく様子と、人と自然が触れ合う拠点を作った。
- エコツーリズムのきっかけ
- 北海道は、北方圏では最南端に位置し、また、食料生産基地とされたため自然と農林水産業が残されたという特徴的な自然がある。これらをうまく利用して新しいライフスタイル、文化、産業を手に入れたいと考えた。そのために、自然環境を持続して使えるように産業と地域が結びついて、特に地域の人たちが主体的に考え、他の地域の人と交流するような学習の機会が必要だと考え、エコツーリズムに力を入れている。
- エコツーリズムと地域づくりについて
- エコツーリズムの基本は観光振興、環境保全、地域振興のバランスを保つことであり、地域の人がいかに自立的に学習し、いかに自立的に物事を進めていくかがポイントとなる。
- 観光資源である自然資源自体を守りやすい効果、地域主導で観光商品を作ることで地域の資源を有効利用できる効果がある。地域づくりにとっては、地域の資源を見直すチャンスであり、他者から評価を受け地域の資源を見直すことができる。また、観光は、食べる、遊ぶ、泊まるといった幅の広い産業であり、地域内で連関するチャンスができる。
- 資源を捜して歩いて、自分たちで勉強する。問題は勉強したことをいかに発信するか。エコツアーは中間目標でしかない。世に出して、知恵を外から受けることが次のステップであり、外部の人たちと資源が再評価できて新しいものにつながっていく。
- 乳幼児の森の子育てサロンでは間伐材を利用してお母さんと一緒に子供のためのおもちゃを作ることで、子育てしているお母さんたちを巻き込んで商品開発をし、だんだん大きな遊具を作っていく。少しずつ連関し、地域全体として大きな経済モデルになっていくことを狙っている。
- エコツアーだけで儲けるというよりは、エコツアーという交流の中で資源を見直し、外の人とつながりながら、新しい文化とか経済活動を見つけていくことが大きなポイントである。
- 地域資源とか資金を有機的にネットワークして活用し続ける機能や力が大切であり、川で連関をするということは大きな意味があると思う。
- 事例の紹介
- 霧多布では漁師から森、湿原をつなげてストーリー性を持たせたツアーを展開し、地域がまとまっていく。
- 黒松内の朱太川では水循環をテーマに子どもの宿泊学習を行っている。
- 常呂町では、公務員から学校の先生から会社員、漁師、森林関係者が集まり自然学校を作った。
- 多摩川の源流では、10大学ぐらいが集まり学生に原体験をさせる事例がある。
- おわりに
- 観光というのはまちづくりの一つの手段。地域がつながっていくことの一つの目標として、観光を作っていくこともよい手段と思っている。
<<質疑>>
- ・NEOSの本拠地は登別ではないのか。
>:本拠地は一応札幌。
:登別の鉱山町にあるネイチャーセンターふぉれすと鉱山を、地域のNPOであるモモンガくらぶが指定管理を受けて運営している。 - ・モモンガくらぶとの関係は別か。
>最初は我々が登別市から委託を受けて運営していたが、ボランティアを募って、組織化させたものがモモンガくらぶである。
2.片山講師の講義内容
- はじめに
- 45年くらい前の鵡川の河口での「シシャモカムイノミ」を見せる。
- 映像上映
- 鵡川とシシャモ
- シシャモは鵡川の大切な資源である。鵡川と沙流川はアイヌ文化の時代から夫婦川であり、天の神がシシャモを流すときに、男川の沙流川は気が荒いので、優しい女川である鵡川に流したという説がある。鵡川で昔からシシャモが大漁となっているのがわかると思う。
- 松浦武四郎が200年前に鵡川の川筋を調査した中で、初冬に鵡川ではシシャモが大変よくとれると紹介しており、アイヌの家に泊まった際においしいからシシャモを食べなさいと言われた記録も残している。
- アイヌ文化の自然観
- シシャモカムイノミでイナウを作る際に、木、川、山の神などにお願いして木を切る。切るだけでなく、切った後の余分な枝が木の代わりに大きくなるように挿し木をする。
- 山菜、魚など自分たちが食べる分だけとり、ほかのもののために残す。上映した映像の中でも、先に上るシシャモを争って取ることはしない。クマやキツネ、また自然産卵分等も配慮して枯渇させないようにするところがアイヌ文化の非常に大事なところだと思っている。
- 洞爺湖サミットの間に、各国の人間が白老に来てアイヌの萱葺きの中に座って懇談する段取りになっているようだ。ジュネーブでの少数民族の会議などで、世界規模で少数民族を見直せと言われている。アイヌの大事にしてきた、ものを大事にする、無駄なことはしない、余分なものはとらないということを我々は見直すべきと思っている。
- シシャモ、サケ、アカハラなど動物が食べて残ったものは木の肥料となるということも言われている。川に近い弱いところにそういうものをやると木に栄養がいき、強い根が張って川を傷めない。木を育てることが森を育て、森を育てることが川を育てると言われている。
- おわりに
- プロジェクトの皆さんがこうして川を大事にしていることは、大変すばらしいこと。むかわ町全体の財産と思っている。
- 意外と知られていないこととして、鵡川の源流は石灰質の豊富な蛇紋岩で山が形成されており、石灰質、ミネラルを含めて微量要素の養分がホッキ、ホタテを育てるのに大変よいという結果が出ている。また、鵡川の河川地を利用している牧場から何頭もダービー馬が出ており、河川敷地の牧草にはよい栄養がある。
- 江戸時代やそれ以前のアイヌ文化から紹介されているように、鵡川は魚と環境に恵まれたところから、人々もすばらしいと思っている。
- ・シシャモカムイノミは60年近く前に一度途絶え、それから十何年前に復活しているがその経緯について知っていれば教えていただきたい。
>:明治、大正にかけて北海道開拓と称して本州から入植者が来て、川や海の近くの飲み水、食べ物の豊富な環境からどんどん山奥に追いやられた。また、政府からアイヌ語やシカ猟、クマ猟の禁止等、多くの虐待をされた経過があり、そういうところから自然に絶ち消えた。
:昭和21年、戦後の混乱期に全道各地区のアイヌの代表が集まって北海道アイヌ協会を設立したが、アイヌに対する差別などから、それも立ち消えてしまい、古くからのアイヌ文化が絶ち切れてしまった。
:これでは駄目だ、復活させようという形の中で、55年くらい前に外から頼まれて復活した。消えたのも外圧、復活したのも外からのお願い。
:昔はシシャモが入る10日も前から豊漁の願いをし、豊漁後には感謝を、不作時にはチャランケ、談判をして神様と和解をし、年を越してきた。 - ・北海道ウタリ協会むかわ支部の1年間での活動などはあるのか。
>:鵡川アイヌ文化伝承保存会は文部省の重要無形文化財となっている。
:家を守る、感謝する「チセノミ」、先祖供養のアイヌ碑の「カムイノミ」、「シシャモカムイノミ」が三大カムイノミで、毎年行っている。
:ウタリ協会では会員子弟の高校、大学の就学資金等の手伝い、全道各支部との総会を含めた事業の交流など行っている。
意見交換(全体討議)
- 「アイヌ文化の保存など」
・「川育」をしたい。来年度から文化の発掘、勉強会、資料を集めながら、子供に伝えられるものを探り、財産として残せるものを作り上げたい。
・アイヌ文化の博物館のようなものがむかわにあればという話も出た。
・また、実行には誰が何をどうしていくかをはっきりさせる必要がある。 - 「観光振興を図る川づくり」
・地域に住む人たちが、鵡川のことを魅力的と感じる意識を共有する必要があり、そのために地域の交流を行うことが観光への第一歩である。
・観光のメニューとしては、占冠、穂別、むかわを上手く組み合わせて体験できるように、また来たいなという思いをさせられればいいのではないか。これが環境保全につなげていくことになるのかもしれない。
4.その他
- ・来年度は会議3回、現地2回を予定している。また目標を立てて具体的な活動も行っていきたいと思っている。
・こんなことをやってほしいということがあればご意見いただきたい。
>上下流の鵡川に対する思いを共有するために、上下流の交流を提案する。
>財産として残していくために、川で学べる機会を設けたり、アイヌ民族のことを知ってもらう勉強会などもやってほしい。 - ・「川育」ということを聞いて、最近提案されている「木育」という言葉がある。木も森で生えている木と材木のそれぞれに詳しい人が別れてしまい、つながっていないので社会的問題が解決できない。
・同じように川育も、つながりを作っていくものの中心に育がある。観光もそうだが最後は学び、地元の子供たちを含む学びが中心になっていくという感想を受けた。 - ・シシャモぐらい貴重なものはないと思っており、穂別の人にもシシャモは大事だと実感されると思っている。
・大正元年に生まれた人が生活館の下で汐見の一番場所で大漁したと言っていた。今のシシャモの一番場所はタンポポ公園の縁であり、昔は川が1キロ向こうに行ったり、こっちに行ったりしていたということも部落史を作りながら古老の話を聞いて振り返っていた。
・春日地区の山が剥げているが、1808年に木材を切り出しているのが続いていることも言っておきたい。