生態系評価ワーキンググループ(再生可能エネルギー事業に関する提言・配慮すべき希少種の生息地)
釧路湿原周辺における再生可能エネルギー事業に関する提言
太陽光発電事業計画策定にあたって配慮すべき希少種の生息地について
生態系評価ワーキンググループ
釧路湿原は、総面積約2.6万ヘクタールの日本最大の湿原であり、1980年に日本最初のラムサール条約湿地として登録され、国指定特別天然記念物タンチョウや氷河期の遺存種であるキタサンショウウオ、日本最大の淡水魚であるイトウなど、数多くの貴重な動植物が生息しています。
近年、釧路湿原周辺における太陽光発電施設の建設が、希少な動植物や生態系、景観、防災などに及ぼす影響が懸念されています。
WEB MAP上に、釧路湿原周辺の関連情報を掲載しました。太陽光発電事業を計画するにあたっては、各種情報を確認の上、希少種の生息地等に配慮してください。
WEB MAP掲載情報一覧
内容 |
備考 |
タンチョウ営巣適応度 |
タンチョウの営巣適応度を5段階で表示。 |
キタサンショウウオ生息適地 |
キタサンショウウオが生息している可能性のある地域。 |
オオジシギ目撃地点 |
調査の結果オオジシギが確認できたメッシュごとの最大個体数を7段階で表示。 |
主要な展望地(11地点) |
釧路湿原周辺の主要な展望地および利用動線等からの眺望 |
主要な展望地から見える範囲 |
各主要な展望地から見える範囲を標高データを元に解析した情報。 |
国立公園 |
国立公園の外周。 |
行政区域 |
市町村の境界線。 |
タンチョウについて
タンチョウは釧路湿原を象徴する鳥で、国の特別天然記念物に指定されています。また、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法,1993年)」の施行に伴い国内希少野生動植物種に指定され、環境省レッドリスト 2020 においては絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定されています。
釧路湿原は世界的にみてもタンチョウの最大の繁殖地となっていますが、近年、湿原辺縁部で太陽光発電施設の建設が進み、営巣適地の減少が懸念されています。
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タンチョウの営巣地近辺に建設された太陽光発電施設(写真:釧路自然保護協会)
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タンチョウ営巣適応度マップ
問合先メールアドレス:wetland.ecosystem.wg2021★gmail.com
ただし、営巣適応度、値が低い(0-0.4 黄緑と緑)メッシュ内でタンチョウの生息域になっている可能性はありますので注意してください。
出典:平成26年度_環境研究総合推進費終了成果報告書(4D-1201),シマフクロウ・タンチョウを指標とした生物多様性保全ー北海道とロシア極東との比較(H24~H26),研究代表者:中村太士(北海道大学)
・Hiroyuki Masatomi and Yoshiyuki Masatomi(2018)Chapter 6:"Ecology of the Red-crowned Crane and Conservation Activities in Japan". In Biodiversity Conservation Using Umbrella Species. Edited by Futoshi Nakamura,Springer, Singapore.
太陽光発電事業の計画地がタンチョウの営巣・生息地かどうかは、過去の調査記録をもとに情報提供が可能な場合もございますので、下記までお問い合わせください。
法令名 |
法規制等の対象となる行為 |
手続区分 |
問い合わせ・手続きの担当窓口 |
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法) |
環境大臣が指定する希少野生動植物種(タンチョウ、オジロワシ、オオワシ、シマフクロウ、シマクイナ、チュウヒ等)の捕獲、損傷等 |
許可/協議 |
環境省釧路自然環境事務所野生生物課 |
文化財保護法 |
史跡名勝天然記念物(タンチョウ、オジロワシ、シマフクロウ等)に関し、その現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為 |
許可/届出 |
①北海道教育庁生涯学習推進局文化財・博物館課文化財保護係 |
キタサンショウウオについて
釧路湿原は日本国内におけるキタサンショウウオの主要な生息地です。キタサンショウウオは氷河期の生き残りと言われ、日本国内では釧路湿原を含めてごく限られた地域にしか生息していません。
2020 年 3 月に環境省レッドリストのカテゴリーが従来の“準絶滅危惧(NT)”から“絶滅危惧ⅠB 類(EN)”へと2段階引き上げられました。一度に2段階上昇することは異例であり、それだけ絶滅が危惧されていると言えます。その背景としては釧路湿原における開発行為によって生息地の埋め立てや改変が相次いだこと、太陽光発電施設の建設が要因として挙げられることが「環境省レッドリスト2020補遺資料」に明記されています。
さらに、2022 年1月には種の保存法に基づき「特定第二種国内希少野生動植物種」に指定され、個体の販売目的の捕獲等が厳罰化され、保護の重要性が増しています。
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キタサンショウウオ (写真:照井滋晴)
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キタサンショウウオ生息適地マップ
問合わせ先メールアドレス:wetland.ecosystem.wg2021★gmail.com
釧路市内におけるキタサンショウウオの生息適地や、太陽光発電施設の建設に当たって必要となる調整や手続きについては、釧路市のウェブサイトにも詳しい情報が掲載されています。
太陽光発電施設事業の計画地がキタサンショウウオの生息域かどうかは、過去の調査記録をもとに情報提供が可能な場合もございますので、下記までお問い合わせください。 なお、キタサンショウウオの生息地等に該当する場合は、計画の中止を含めた抜本的な見直しを求められる場合があります。
法令名 |
法規制等の対象となる行為 |
手続区分 |
問い合わせ・手続きの担当窓口 |
釧路市文化財保護条例 |
文化財の現状を変更し、又はその影響を及ぼす行為 |
許可/届出 |
釧路市教育委員会 生涯学習部 |
標茶町文化財保護条例 |
文化財の現状を変更し、又はその影響を及ぼす行為 |
許可/届出 |
標茶町教育委員会 社会教育課 博物館(標茶町博物館) |
オオジシギについて
本種は主に日本で繁殖しますが、特に釧路湿原を含めた北海道東部に多く分布することが日本野鳥の会の調査で明らかになっています((公財)日本野鳥の会2018)。釧路市域内市街化調整区域を含めた 釧路湿原内およびその周辺の湿地を広く利用しており、現在進んでいる太陽光発電施設の建設地は本種の生息域と直接重なっているため、繁殖への影響が大きいと考えられます。
オオジシギにとって、湿原や草原は非常に重要な生息環境です。太陽光発電事業を計画する際には、生息環境の保全に十分に配慮してください。
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オオジシギ(写真・日本野鳥の会釧路支部)
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オオジシギ目撃地点マップ
問合先メールアドレス:wetland.ecosystem.wg2021★gmail.com
日本野鳥の会釧路支部が2023年6月に実施した調査をもとに作図しました。
調査範囲は、釧路市(旧釧路市のほぼ全域)と釧路町の一部、白糠町の一部を含む釧路湿原南部地域です。調査範囲内の基準地域メッシュ(三次メッシュ:約1キロ×1キロメートル)ごとに、スポットセンサスかロードセンサス、またはその両方を実施しました。ディスプレイ飛行、ディスプレイコール、または個体の視認によって確認された個体数を記録しました。
各メッシュの数値は、メッシュ内において、1回の調査で確認できた最大個体数を示しています。
※なお、メッシュが表示されていない地点は未調査地であり、オオジシギが生息していないという意味ではありません。また、数値が0であるメッシュも、調査時に確認されなかっただけであり、今後の調査で生息が確認される可能性があります。
その他の希少種について
本ウェブサイトおよびWEBMAP上に情報を掲載している生物種以外にも、数多くの希少な動植物が、釧路湿原やその周辺に生息しています。たとえばオジロワシやチュウヒ、シマクイナをはじめとするクイナ類などにとって、湿原や草原は非常に重要な生息環境です。太陽光発電事業を計画する際には、そうした動植物に対しても十分に配慮してください。
本サイトおよびWEBMAP上でも、随時、他の希少種等に関する情報を追加・更新していきます。
関連事項:希少種生息地となる土地をお持ちで保全したいとお考えの方へ
釧路湿原の希少種保護のため、生息地の買い取りや寄贈を受けて保全に取り組んでいるNGOがあります。
土地の譲渡を検討されている方はご相談ください。
NPO法人トラストサルン釧路 住所:〒085-0816 釧路市貝塚2丁目6-34 福島ハイツD号室 電話:0154-44-5022 FAX:0154-44-5023 E-mail:trustsarun★yahoo.co.jp ※メールアドレスの「★」を「@」記号に置き換えてください。 |
釧路湿原自然再生協議会 生態系評価ワーキンググループ
(問合先メールアドレス:wetland.ecosystem.wg2021★gmail.com)
お問い合わせいただいた内容については、必ずしも回答できない場合がございますこと、ご了承ください。
※メールアドレスの「★」を「@」記号に置き換えてください。