池田河川事務所 自然環境(事例)
ここでは、池田河川事務所管内の主な河川の自然環境やビオトープによる湿地復元への取り組み事例を紹介します。
十勝川下流域
十勝川下流域は、昭和初期頃から本格的に進められた河川改修工事によって治水安全度が向上したことから、農地や居住地が拡大しました。一方で大正期と比較すると周辺湿地の約80%が減少しました。現在は、農地の中に旧十勝川の蛇行の名残である河跡湖が点在し、かつての湿地環境をとどめる貴重な場所となっています。平成11年には湿地環境を復元しようとビオトープを造成しました。河跡湖や造成した湿地環境には希少植物ヤナギタウコギ等が生育し、希少魚類のエゾホトケドジョウ等水生動物も豊富です。また、国の特別天然記念物であるタンチョウや、ガン類、オオワシ、オジロワシが飛来します。感潮域にはシシャモが遡上し、秋には鮭の遡上が見られます。
利別川流域
利別川は、その源を陸別町と置戸町との境界の山岳に発し、広大な畑作地帯を流下しながら池田町市街を貫流し十勝川へ合流する十勝川水系最大の1次支川です。利別川の高水敷は、採草や放牧の牧草地として広く利用されているほか、エゾノキヌヤナギやオノエヤナギ群落の分布や、ミズナラやハルニレ等の大径木がある河畔林も残っています。また、草原性のオオジシギ、森林性のアオジ、水辺ではセグロセキレイやヤマセミ等の鳥類、河岸付近の土崖にはショウドウツバメの営巣も見られます。河川を横断する橋梁や高台からは畑作地帯と河川が調和した広大な景観を望むことができます。
浦幌十勝川流域
浦幌十勝川は、下頃辺川が途中から浦幌十勝川に名を変え、浦幌川等を合わせ、浦幌町において太平洋に注ぐ河川であり、広大な畑作地帯を流下しています。浦幌十勝川の高水敷には、湿性草原が広く分布しています。エゾノキヌヤナギやタチヤナギ群落の樹木類、草原性のオオジシギやコヨシキリ、猛禽類のオジロワシやオオワシ、国指定の特別天然記念物であるタンチョウ等の鳥類が見られます。また、河川の周辺に三日月沼、トイトッキ沼等の河跡湖や湿地が広がり、希少植物のタヌキモやヒシモドキが生育し、オシドリやカワアイサ、オオハクチョウ等の水鳥も見られます。
ビオトープによる湿地復元への取り組み事例
かつて、十勝川中下流域は広大な湿地であり、農耕地には適さない地区でしたが、 昭和初期から開始された十勝川中下流域の新水路掘削等により、農耕地が増加し、地域の産業に大きく貢献しました。 反面、地域の開拓が進むにつれ湿地は減少の一途を辿り、タンチョウをはじめ、 さまざまな湿地性生物の生息地が減少し、湿地性の絶滅危惧種が増加しています。このような状況の中で、 環境保全に配慮した河川事業の一環として実施した、管内における湿地復元への取り組み事例を紹介します。
湿地ビオトープ
平成11年度に行われたこの試みでは、従来の築堤工事で用いられていた、土砂採取後に整地を行うといった方法をとらず、河川敷にある自然の池の形状・深さを参考にして掘削を行い、その後の整地を行わないという方法をとることによって、地形の多様化を図りました。
現在、湿地ビオトープではミクリ・サジオモダカといった湿地性植物を中心に植生が回復し、エゾユキウサギ等の動物も数多く確認される、緑豊かな湿地の姿を取り戻しつつあります。
ビオトープとは?
ドイツ語で生物(bio)と場所(tope)を示す造語で、動物や植物が互いにつながりを持ち、生態系を構築している空間のことです。特に、開発事業などによって損なわれた場所や教育機関などに造成された生物の生息環境を指す場合もあります。
近年、池沼、湿地、草地、雑木林などの身近な自然が消失していることから、存在するビオトープの保護とともに、消失したビオトープの整備が各地で行われています。
近年、池沼、湿地、草地、雑木林などの身近な自然が消失していることから、存在するビオトープの保護とともに、消失したビオトープの整備が各地で行われています。