現在位置の階層

  1. トップページ
  2. 治水課
  3. 釧路湿原自然再生協議会 トップページ
  4. 第10回協議会 議事要旨

第10回協議会 議事要旨

第10回(平成18年5月9日)

  • 釧路湿原自然再生協議会

第10回協議会 議事要旨

挨拶

(会長)
本日の議事は、「協議会への寄附について」、「小委員会開催概要」、「土砂流入対策実施計画[久著呂川](案)」、「今後の協議会の運営について」の大きく4点です。よろしくお願いします。

議事 1:協議会への寄附について

 事務局より協議会への寄附について報告が行われ、協議会として寄附を受けることが確認された。

(会長)
寄附は大変ありがたいこと。寄附者の方への礼儀として、使途を明確にすべき。
例えば湿原の自然再生の説明資料、パンフレットのようなものをつくろうとしたとき、「寄附いただいたものでつくりました」ということを明記するのがいいと思う。そのようなことを考えて寄附をお受けするということでよろしいか?(異議なし)

議事 2:小委員会開催概要

 事務局から第6回再生普及小委員会、第6回森林再生小委員会、第7回旧川復元小委員会、第6回および第7回土砂流入小委員会の開催状況が報告され、続いて各小委員会の委員長から協議内容等についての報告が行われた。

(第6回再生普及小委員会開催報告 委員長)
3月に第6回の小委員会が開催された後、4月に行動計画ワーキンググループの集まりがあった。
行動計画ワーキンググループでは、2005年度の取り組み報告書を作成中で、次回5月11日の再生普及小委員会で了承いただいた後、印刷・配布する。また、2006年度の新たな取り組み募集が行われ、その内容を次回の再生普及小委員会に諮り、実行に移す。
報告書では、取り組んだ活動を参加人数などにより評価することにしていたが、それを「成果」として扱い、主催者の感想や反省などとともにまとめ、今後の課題を記述していくという仕組みに変更したので了解いただきたい。
「トイレのあり方」については、今後さらに意見交換を行い、フィールドにおけるトイレの問題について検討していく。
環境教育ワーキンググループでは、事務局の教育局が学年別に3種の環境教育の教材、パンフレットを作成し、道東の小中学校に配布した。これを1つの区切りとして、一度全体の見直しのためにワーキングを休止することになった。新しいグループのあり方、構成などを次回の再生普及小委員会で検討する予定である。

(第6回森林再生小委員会開催報告 委員長)
林野庁から雷別地区の平成17年度調査内容および検討結果の報告があり、それを受けて、保全対象地、事業対象地、再生目標の明確化および方法について議論し、概ねまとまった。
課題として、対象地のシカ密度が高く対策が必要であること、指標種として選定している地表生甲虫の評価の有効性を検討する必要があることが話し合われた。
今後、平成18年度中の実施計画策定に向けて議論していく。
環境省から、達古武地域の平成17年度調査検討結果と、自然再生実施計画が2月28日付けで主務大臣および北海道知事宛に提出されたという報告があった。
達古武地域の試験区でのモニタリング調査や土砂流出対策などについて議論され、粗朶柵を使った浸食防止工法の有効性が示唆され、資源を循環させるような考え方や取り組みが重要であると確認された。
しかし、林道路面や法面に対する有効性には疑問が残るので、他の施工事例を参考にするため現地視察、もしくは勉強会を行う方針となった。

(第7回旧川復元小委員会開催報告 委員長)
茅沼地区の事業実施の考え方について議論された。出された意見に対し、実施者から、移植に関しては専門家に同行してもらい施工方法を検討していく、また河岸保護の方法に関しても出された意見を踏まえた検討を行っていく、という回答がなされた。また、今後も事業実施について継続して議論していくことになった。
2月15日に標茶町で地域意見交換会が開催された。そこでの意見についても小委員会で意見交換が行われた。
トラストサルン釧路から釧路開発建設部宛に提出された工事開始反対等に関する声明について、その主旨および取り扱いについて議論した。茅沼地区の旧川復元は、平成11年からの「釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会」、当協議会および旧川復元小委員会で長い時間をかけて十分議論を行ってきたもので、釧路湿原の自然再生にとって必要な取組の一つであり、小委員会で了承されている。
トラストサルン釧路から提出された工事反対声明は実施者である釧路開建へのものであることから、釧路開建が回答すべきことであるが、これまで委員会で検討してきた経緯があることから、これまでの議論経緯を踏まえた回答となっているか小委員会後に委員長と委員長代理が確認した。

(神田委員長の報告を受け、釧路開発建設部よりトラストサルン釧路への回答の概要説明があり、協議会でその回答状況が確認された。)

議事 3:土砂流入対策実施計画〔久著呂川〕(案)

 長澤委員長代理より検討経緯、第7回土砂流入小委員会で出された主な意見について報告が行われた後、事務局より土砂流入対策実施計画〔久著呂川〕(案)の説明が行われた。内容について協議された結果、会議で出された意見を踏まえて策定に向けた手続きを進めていくことが確認された。

(これまでの検討経緯、第7回土砂流入小委員会開催報告 委員長代理)
久著呂川中流部の河床低下区間では、支川が合流している箇所でも落差を生じているので、そこの対策も必要である。

河床低下区間で久著呂川本川の落差を緩衝するために設置する計画の落差工については、階段工など落差の小さいものを検討してはどうか。

河川沿いの土砂調整地は、流下してくる土砂の粒径とその性状を考慮して施設の形状等を検討していくべきである。

湿原流入部に設置することを計画している「人工ケルミ」については、表現が専門的であるため、分かり易い説明を加える必要がある。

人工ケルミについて補足すると、このケルミは高さの低い水田の畦畔のようなもので、河川から溢水した濁水を一時的に溜め、土砂をそこで沈降させようというものである。

これら意見に対して、実施者から、詳細な設計は今後行うので、いただいたご意見を踏まえて検討していくとの回答があった。結論として、土砂流入対策実施計画〔久著呂川〕(案)を第10回協議会で諮ることが承認された。

2つ目の議事として農地防災事業に関連したモニタリング結果が報告され、農地防災事業で設置した沈砂池に久著呂川本川の濁水が逆流し、本川の土砂を捕捉している実態が明らかになった。沈砂池の当初の狙いとは異なるが、湿原に対する効果としては一定の評価が出来る。

農業用排水路への逆流は、久著呂川の河床の上昇が原因であって、この状態を抜本的に解消しないと農地の生産性を確保することは難しい。

これら意見に対して、実施者から、今後の久著呂川の保全対策の中で河床がどの程度で安定するのか全体を注視してその状況を見極めた上で考えたいとの回答があった。このことは継続して議論していく。

(会長)
人工ケルミについて、簡単に補足説明いただけるのであればお願いしたい。

(委員)
「人工」という言葉と「ケルミ」という聞き慣れない言葉を使ってしまったので少し誤解されるかもしれないが、低い畦をつくり、そこに一時的に洪水の流れを導いて土砂を取り除いた後に排出するというような仕組みを考えている。
河川の従来の工法である粗朶やシガラなどを設置し、そこに流れてくる草の切れ端などが引っかかることで水の流れが一時的に緩やかになり、その過程で土砂を捕捉することができるのではないか、というものである。
工事も軽微に出来るのではないかと考えて提案した。

(会長)
棚田のようなものだと考えれば分かり易い。

(委員)
常時水を溜めておくのではなく、次の洪水が発生する頃には空になっているように、また、出来るだけたくさんの土砂を捕捉できるようにゆっくりと排水させることをイメージしている。

(土砂流入対策実施計画〔久著呂川〕(案)の説明:事務局)

(委員)
上流の土砂流入防止の対策と、下流の土砂調整地を設置することの兼ね合いを教えてほしい。上流の対策を行えば下流の対策は必要なくなるのか、あるいは、上流の対策が完了しても土砂調整地では土砂を溜め続けなければならないのか教えてほしい。

(事務局)
細粒土砂を例に説明すると、現状では湿原に年間 3,140m³ の細粒土砂が流入している。この現状に対し、裸地への植林や河道安定化対策などを計画しており、それら対策を実施した場合年間720m³ の土砂の流出抑制が期待されている。その効果を見込んだ上で湿原流入部土砂調整地の効果を推定すると、年間 620m³ の土砂を溜めることができる。
流域全体で対策を実施することで事業目標を達成することが可能となり、全体を見て規模を設定している。

(委員)
数十年に一度土砂をかき出すということになると、自然の復元力に委ねるという自然再生の考え方から外れてくるので、この実施計画は完成していないということなのか。

(事務局)
久著呂川では、上流の植林などの対策や下流の土砂を溜める対策が考えられ、それらをとりまとめて実施計画(案)をつくっている。

(委員)
この問題は発生源対策が重要だと思う。ただし、上流側では農業あるいは森林生産などの土地利用があるので、土砂を完全に抑えることはできない。
上流の対策を重点的に行うことは大事であるが、さらに下流側で湿原に影響を与えないようなバッファをつくり、これについては一定の管理行う。そのような位置付けになると思う。

(委員)
了解したが、管理が恒常的に大変な負担になるようなことになった場合、まだ完成していなかったのだと理解してよろしいか。

(会長)
上流まで完全に自然に復元することができるのであればそれが一番望ましく、完結できるのかもしれない。しかし、農地等があるのだから完全に自然に戻すのは非常に難しい。
土砂調整地で機能低下が起きると効果が薄れるのは当然のことなので、どのように活かしていくのかということが重要になる。できる限り自然に近づけることが目標だということを念頭において、事業を考えていけばいいと思う。

(事務局)
上流部における対策として森林の再生が位置付けられているが、まだ実施者が決まっていない。流域全体でのさらなる取り組みが必要だということだと思う。

(委員)
久著呂川の近くに住んでいるが、農地防災事業で設置した沈砂池に逆流していくという問題が起きている。久著呂川は昔釧路川に完全につながっていたが、この四・五十年の間大きな洪水もなく、水量が少ないため、釧路川まで到達せずに手前で土砂が溜まってしまったというのが現実だと思う。
農地に対する負荷もあるだろうし、湿原に溜まった土砂をかき出して下流に土砂を流すようにしないと、沈砂池をつくっても改善しないのではないか。

(会長)
ご意見を踏まえて、モニタリングも含めて進めていくということで、実施計画の策定に向けて必要な手続きを進めていくということでお認めいただいてよろしいか?
(異議が無いことを確認)お認めいただいたということで、ご意見を踏まえて策定に向けて進めるということにする。

議事4:今後の協議会の運営について

 「釧路湿原自然再生協議会への提案」を提出したトラストサルン釧路から内容の補足説明が行われた後、意見交換が行われた。

(会長)
前回の協議会でも紹介したが、協議会の構成員でもあるトラストサルン釧路から釧路湿原自然再生協議会へ提案が寄せられた。

この提案についての協議の進め方として、まずトラストサルン釧路から簡単に内容の補足説明をしていただき、その説明の後で意見交換を行うことにしたいと思うが、そういうことでよろしいか。(異議なし)

(「釧路湿原自然再生協議会への提案」についての補足説明 委員)
私たちからの今回の提案を協議会にかけてくださったこと、皆さんの貴重な時間を割いていただけることにお礼申し上げる。

トラストサルン釧路はナショナルトラストを行っている自然保護団体である。自然保護地を持っており、森林再生の取り組みも始めていたので、環境省の森林再生の一部とタイアップして、共同で自然再生事業をしている。この協議会にも当初より参加し、意見を出させていただいている。

再生事業にも関わりながら小委員会、協議会に出席していく中で、このままではうまくいかないのではないかと思った点があったので、今回の提案を提出した。

一点目は、流域全体を見通した視点についてで、自然再生推進法でも強調されていることである。全体構想をつくったときに議論があったが、そのままになっている。問題は次々出てくる。また、今まで分かっていなかったことも次第に分かってくる。そういう点を逐次流域全体を見通した視点で検討する場が無い。いくつかの再生事業がスタートしようとしているが、客観的な視点で今なにが重要なのか判断する機構がない。個々の事業は審議されるが、全体として湿原全体の再生がどの程度進むのかよく分からないまま進んでいるのは問題である。

二点目は、現存する良好な自然環境の保全が重要であるが、ここ数年間保全に関する取り組みは非常に微々たるもので、憂慮している。保全することをないがしろにして再生事業を進めようというのは順序が間違っていると思う。保全問題を取り上げる場が必要だという提案である。

三点目は、実施者が事業の名称を付けたような小委員会となっており、個々の事業しか検討されない、他の色々な重大な問題について検討する小委員会がないということを指摘している。森林再生小委員会では、荒廃した土地の森林化などを検討しているが、森林をどのように保全していくかというトータルな議論が無く、針葉樹林の広葉樹林化や裸地への植林など細かい議論に入ってしまっている。全体として、森林が豊かになっていかないのではないか、小委員会のあり方に問題があるのではないかと考えたものである。

四点目は、事業の客観的な評価を行うための体制についてで、協議会でできるのであればいいが、現状では人材、資金、体制の面でそのようになっていない。順応的管理といいながら、調査や評価を行うのは実施者とその関係者である。正しい評価のためには、実施者とその関係者でない人がモニタリングを行っていく体制が必要である。

五点目は、民有地での再生事業が進展しないということで、環境省と共同で事業を進めていく中で明らかになってきたので問題にした。流域全体を見ると、民有地の占める割合は 90% 以上と言われているが、そこで自然再生に向けた取り組み、自然再生に資する土地利用を行おうとしても資金が無い。国の予算は国有地でしか使えない。恐らく法制上の問題で難しいと思うが、民間や地元の市町村が自然再生に取り組もうとしても予算的な問題があり、取り組むことができないというのが現状である。

(会長)
今のご説明ついて、ご質問やご意見をいただきたい。どなたからでもどうぞ。

(委員)
森林再生小委員会の話をされていたので反論というか意見を述べると、森林再生小委員会では、裸地への植林やカラマツ林の自然林化などの個別の問題しか議論してこなかったかというと決してそうではなかった。

トラストサルンも一緒に調査をし、議論にも加わっていたのに、なぜ今のような議論になるのか理解しがたかった。

流域で行うべきという意見は確かにそのとおりであり、全体論としては皆がそのように考えていると思う。しかし、実施にあたっては、個別の箇所が光らないと全体としても良くなっていかない。

色々な制約条件の中で、行動するときはローカルなところから取り組んでいかざるを得ないのではないか。それは、流域全体の計画論をないがしろにするものではない。

そういったことを協議会で話し合うべきで、この場が報告会になってはならない。

第三者機関については、地域の事情も分からない人たちが評価できるだろうか。協議会自体が個別の事業を評価し、より良い方向に持っていく機関であるべき。そうしないと協議会が形骸化してしまう。

(委員)
検討してこなかったということではなく、問題があるというのは検討してきた。ただし、それを何とかしようというアクションになっていかない。
例えば、私たちが裸地で小さい苗を植えて、育つか育たないかと言っている前を、すぐ近くで森林が大規模に伐採されて運ばれていくという現状がある。また、環境省の土地でカラマツ林を広葉樹林化しようということを一生懸命考えているが、民間林では今でもカラマツが植林されている。
問題点は指摘しているが、アクションができていないというのが非常に残念。
第三者機関については、協議会できちんと行うことができるのであればそれでよろしいが、現在の協議会には調査を行うスタッフや資金などが担保されていないので、調査や客観的な評価を行うことはできないと考えている。客観的な評価などが可能な体制をとる必要があると考えている。

(委員)
焦る気持ちは分かる。近くで一生懸命植林をしているのに、横で大きな樹木が切られて運ばれていくのは、特に地域に住んでおられる方にとってはそれがつらいものだということは本当に理解する。
ただし、地域には林業や製紙業などで生活している人がたくさんいるので、樹木の伐採などを、我々が頭ごなしに否定することはできない。それが社会のルールだと思う。その横で地道に植林していくことによって周りが変わっていくのを待たなくてはいけない。それこそ受動的に、ときには待つことも必要である。
森林再生小委員会では、製紙会社の私有林についても議論し、できれば達古武もしくは釧路湿原に影響を与えないような森林施業をお願いできないか無言のうちに発信している。そういったことにより、地域がゆっくり変わっていく。焦って強権的にやろうとすれば間違いなく反発が起こり、余計にうまくいかなくなる。

(委員)
私も標茶で農業をやっており、山林も持っている。落葉樹を相当の面積植えてきた。落葉樹は、50年を目安に伐採している。財産として山林を保有しており、伐採の時期になればお金に換える、それが経済である。

伐採することが悪いことというのは論外だと思う。伐採した後、どのように山を保全し、再生していくかが大事なこと。だから国が補助金制度を使ったり森林組合等々を存続させ、再生していくことを担保していると思う。

広葉樹と針葉樹のどちらがよろしいのか、色々研究されればいいことだ。金銭的価値で考えれば、100年、200年かかる広葉樹を植えるよりも、50年でお金になる針葉樹を植えるという選択肢もでてくると思う。

ある程度社会情勢も考慮しながらやっていかなければ、こういう組織は存続していくことはできないと思う。

我々は手弁当で、次世代の釧路湿原に自分たちの思いが残り、子孫の代に形になればいいと考え、勉強しながら地元への啓蒙ということも考えてきている。第三者機関によるチェック機能という話があったが、そこで湿原にとってマイナスだと評価されたときは責任をとるということになると誰も参画できなくなる。焦る気持ちは分かるが、冷静に判断してほしい。

(委員)
釧路湿原の自然再生の方向性を協議会で議論し、その結果が全体構想というかたちでまとめられた。その中には、50年先、100年先を見越した色々な方向性が示されており、それに従って自然再生事業を進めていくというところまではっきりした。

ただし、全体構想は法的な強制力を持っていない。釧路湿原周辺の自然林をできるだけ再生していくという方向性は出ているが、人工林化する事業に歯止めがかかるわけではない。

国立公園内では法的な規制を行うという選択肢も考えられ、最も厳しい規制がされる地域になれば森林の伐採は認められなくなる。しかし、これは国民の権利を著しく制限することになり、土地所有者を初め関係する方々の理解がなくては実現しない。

この協議会で議論して全体構想ができたということが大変重要である。その中で示された方向を、この協議会にかかわっているメンバーだけではなく、周辺の方々にいかに知っていただくかという取り組みが大事である。

再生普及小委員会が中心になって、自然再生の取り組みを広めていく。普及していく取り組みが大変重要になると考えられる。 5年、10年かけて普及していくことが釧路湿原の保全と周辺の保護につながっていくと思う。

この協議会は、色々な立場の方たちが自由に参加できる協議の場である。国が取り組む自然再生事業の実施の過程を、小委員会を通じて協議会に報告し、そこでの意見を踏まえて再生事業を進めていくという仕組みができている。情報を共有し、議論を進めていくということがこの協議会の重要な役割だと思う。

そういう意味で、今回トラストサルンから提出された提案について協議会で議論する時間がとられたことは非常に重要なこと。個別の自然再生事業についての議論だけではなく、全体構想を踏まえ、釧路湿原の保全について継続して議論していくことが重要である。

環境省は、トラストサルン釧路と共同して達古武の森林再生に取り組んでいる。民有地での再生事業が進展しないことについて、民間が主体となった取り組みが自然再生推進法上の自然再生事業となるのは資金的に難しい。この点は、自然再生にかかわるNPO からの重要な指摘である。

自然再生推進法は、いずれ見直しを行うことになっている。全国各地の自然再生協議会で色々な方々が自然再生の取り組みを進めてきた。そうした経験に基づき、これまでの取り組みを再評価して、その中で出された意見が法律を見直すに当たっての重要な視点になる。今回トラストサルンから出された提案は、その議論の中に反映されると思う。

(委員)
今の保全や第三者機関の問題など、議論いただいたこと自体、非常にうれしく思う。これから具体的にこの問題についてご意見をいただければと思っている。
今、委員の方から発言あったことについては、私たちもそのように理解している。強権的に問題を提起して、「何をやってはいけない」ということはできない。しかし、釧路湿原の自然再生あるいは保全のために、どこでどのように保全や再生に取り組んでいくことが望ましいのかという提案や現状の分析はできる。そういうことを協議会で取り上げていただきたい。
協議会あるいは委員会でどのような議案が出され、どのような提案があったのか、意見そのものがもっと公開されればいいと思う。開催後は公開されるが、結果については要旨だけで、どなたがどのような発言をしたかということは分からないようになっている。その点は是非改善していただきたい。事前あるいは事後に、協議会の中だけではなく、別の角度から意見を求めたり、評価をしてもらえるような体制も必要だろうと考えている。

(委員)
再生普及小委員会にはいくつかのワーキンググループがあり、具体的な行動計画を考えたり、色々なことを一般の市民の人たちの力で行動に移していくという作業に入っている。
一月のトラストサルン釧路の文章を読んで感じたのは、全体で何とかならないかということだろう。
状況はよく分かるので応援したいとも思うが、再生協議会およびその下に連なる小委員会も、ある行動を起こすための集まりだと考えている。
行動を起こすと言うことは危険が伴うが、行動を起こすための足場固めや準備には随分時間をかけて練り上げてきたので、具体的な行動を起こす時期に来たと考えている。
さまざまな意見があるが、合意の上で行動したい。合意をもって動くということと、メンバー全てが全く同じ考えに立つということは、似てるようで決定的に違う。
様々な意見、考え方、価値観の中で、一つの合意をもって動くと言うことが必要だと思っている。

(委員)
釧路湿原は、過去50年で約二割の湿原が消失したと言われている。

周辺の農地開発や森林伐採で乾燥化したとも言われている。

昭和三十年代からの国策その他によって、湿原周辺で国営草地や農業改良で、かなり乾燥化が進められた時期がある。

昨日、一昨日と細岡(展望台)から釧路湿原を見てきたが、今回の大雪や大雨で水が溜まっていた。極端な言い方だが、当時は河川を直線化したものを今日蛇行復元するということは、直線化が洪水その他にとって効果が薄かったと言うことか、また、逆に湿原の中に水を対流させる結果となったという考え方ができるのか、有識者にお聞きしたい。

釧路湿原が水瓶のような状態になっていることは確かで、そういった部分で生息するタンチョウや様々な動植物が苦しい状況にある。そういったことからして、当時の国策その他で開発された部分がどういった影響を釧路湿原に対して持っているのか、はっきりさせる必要がある。

国策事業として取り組んできた場合、関係市町村は受け止めざるを得ないが、広い意味で、(それを認めた)関係市町村にも乾燥化などに手を貸した部分もあったかと思う。協議会が出来て、新たに見直しを進めるというのは非常に意義があると思う。

協議会では、農業や林業に関わる部分を、もう一度流域住民の視点を根幹に据え、協議を進めて頂きたいと思っている。

(委員)
非常に大きな問題で時間のかかる話もあるのでゆっくりみんなで話し合っていかなければならないし、地域の人から離れて進んでいってしまわないようにしなければならない。

今回の提案の中で制度的なものだとかを、協議会の中で議論しやすくするとか、話が進むようにすると言うことも、提案として大事だと思う。

流域全体のことに関しても、流域全体の情報がきちんと集まっていない。

湿原の面積ひとつ取っても、各機関で数字が違うというように、単純に情報を揃えるということも進んでいない。

湿原なり流域なりの情報を集め、あそこは保全が進んでいないとか、一部地域で行った事業効果が湿原全体から見るとどの程度なのか、この地域は随分穴が開いているなど、流域全体について考えるワーキンググループがあっても良いと思う。

例えば、保全は能動的な事業ではないため、各委員会でも盛り上がらない話題である。各委員会に保全に関するコーナーを設け、「自分の土地では自然を大事にしている」というような話が出てくるような工夫が必要だと思う。

(会長)
今の議論の一つは、協議会の運営についての考え方をどうするかということだと思う。
これだけの大人数になると、それぞれに分けて議論していく方式は、そう変えられない。
各小委員会で、ある程度議論を深め、協議会にあげて頂きたい。システム全体は変える必要がないが、ただ報告に留めるのではなく、協議会でも出来る限り議論の時間をとっても良いと思っている。
もう一つの議題は、流域全体あるいは湿原生態系について検討の場がないということで、非常に大きい課題だと受け止めた。
小委員会という特別なものではなく、懇談会でも何でも呼び名は良いが、もっと別の形のフランクに話の出来る場があった方が良いと思う。
私も思いついただけで何ら準備はしていないが、トラストサルン釧路から提案があったような、あるいはちょっと欠けているのではないだろうかというテーマについて議論していくことを提案する。

(委員)
非常によろしいし、その中でどういう話がなされるか非常に興味がある。
その話とは別に、5番の民有地での再生事業の問題について、ご提案があればありがたい。
先ほど環境省の方から、現状での限界について話があったが、例えば町内会で何かをしたいという時に、再生事業という名前から何も応援がないというような状況はどうなるのか。

(会長)
そのような話も、先に話題になったグループで議論いただいて良いのではないかと思う。
この協議会で民有地での再生事業の問題に直接意見を述べるのは非常に難しいこと。

(委員)
五番目の問題は、釧路湿原自然再生協議会の外側にある問題だと思う。
もう一つは、いろんなファンドもあるし、民間レベルでの小さな再生プロジェクトというのは有り得る話だと思う。ただ、金の出所が非常に少ない、限られている。
そのような取り組みをサポートするシステムを日本に作るべきだというのは正しい意見だと思うが、この協議会の話題ではないという感じがする。

(会長)
議論していただくのは構わないが、私も協議会自身でやることでは無いと思う。

(委員)
国に対して、協議会として釧路湿原の現状を訴えることや、改善のための要望書などを出すことはできる気がする。それ以上のことは不可能だと思っている。

(会長)
私としては、かなり自由な議論ができるものをつくり、議論していただきたい。そういうことで進めたいと思うがよろしいか。(反論等の意見なし)
それでは、そういう方向で考えてみたいと思う。

その他

 事務局より、今後の釧路湿原自然再生協議会および各小委員会等の開催予定について説明が行われた。

現在位置の階層

  1. トップページ
  2. 治水課
  3. 釧路湿原自然再生協議会 トップページ
  4. 第10回協議会 議事要旨