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第9回湿原再生小委員会 議事要旨

第9回(平成23年10月20日)

  • 釧路湿原

第9回湿原再生小委員会 議事要旨

(事務局)
■ (挨拶、議事内容の確認)

(委員長)
■ 皆さんの自己紹介をお願いする。

(委員)
■ (自己紹介)

議事1:幌呂地区湿原再生(基本方針)について

(事務局)
■ 前々回の委員会で排水路の堰上げはどうかという意見があったので、現地の標高(河床、水面、左右岸)を確認した。
■ 図内③の下流側の位置で堰上げすることを想定した。
■ 堰上げした場合の最高水位が4.650である。
■ 1号排水路の堰上げ地点では、最高水位でも再生区域側への氾濫は起こりえない。
■ 堰上げにより農地側の排水路の水位が上がり、農地に影響を与える。
■ 9月の台風15号により、1号支線排水路から溢れたと見られる冠水が所々に見られた。
■ 必ずしも堰上げだけが冠水の条件ではない。
■ 2年前から行っている植生回復試験の状況を示した。
■ 当初は地下水位-20センチメートルの地点の植生が一番早く出始めた。
■ 最近では地下水位が地盤に最も近い地点もかなりの植生が回復しており、湿地性の種が多い傾向にある。
■ 現在では約20種の植生が確認できる。
■ 幌呂地区自然再生の基本方針を以下の3つとする。
 「農地に影響を及ぼさない」
 「未利用の排水路を埋戻し、地下水位を回復させる」
 「地盤を切り下げ、地表面を地下水位に近づける」
■ 地下水位回復の検証のため、地下水観測を行う。
■ 地盤の切り下げについて、一帯を一律に掘るということは今回考えていない。地下水位や植生に応じてパターンを変える。

(委員長)
■ 質問、意見を頂きたい。

(委員)
■ 埋戻しのシミュレーションは今回が初めてか。

(事務局)
■ 今回が初めてである。

(委員)
■ 堰上げ水位を4.65mとしているが、この高さを変えたシミュレーションについては検討したか。

(事務局)
■ 高さを変えての検討はしていない。
■ やや乱暴だが、水位上昇ラインをずらすことで影響の範囲を知ることができる。

(委員)
■ 農地に影響を及ぼさずに再生区域の水位を上げる限界の堰高については検討しているか。

(事務局)
■ その様なシミュレーションは無く行っていない。

(委員)
■ 農地に影響を与えない限度については検討が必要ではないか。
■ 堰上げはダメだという結論ありきの検討をしていないか。

(事務局)
■ 堰上げの位置は、幌呂1号排水路が1号支線排水路に合流した下流でなければ水位を上げることができないと考えて、③の位置を選定した。
■ 堰上げの高さは湿原再生対象区域に排水路右岸側へ水を溢れさせるため、排水路右岸の高さを考慮して設定した。堰の高さは、今回の検討では1.2mほどの高さとしている。
■ 周辺の農地への影響を及ぼさないためには、堰の高さを下げていくことになると思う。しかし、この排水路は現在も使用されているため、堰の高さを30~40センチメートル程度としても、排水路の中に構造物を設置しておくと降雨時に上流側で水位上昇が生じると考えられる。
■ 先月の台風により、この地区では半日で60mm程度の雨が降った。そのときの状況写真を資料7ページに掲載している。降雨によりこのような冠水が生じている状況を考慮して排水路内に堰を設置した場合を想定すると、同程度の雨でこれよりも冠水範囲が広がると考えられる。その状況を堰上げのシミュレーションを行ったときに考え、他のケースの検討は行わなかった。

(委員)
■ 今の説明だと、農地への影響以前に排水路内に構造物を置くことの是非という基本的な問題ではないか。

(事務局)
■ 堰を設置することによる影響も考慮する必要があると考えた。
■ 資料7ページの①の右岸には、排水路を掘削したときの土が置かれているようで、右岸の河岸高が周辺より高くなっている。そこで、河岸を一部分切り下げることによって、雨が降ったときに、その雨水を再生区域へ溢れさせることも検討している。出来るだけ手を尽くして、再生区域の冠水頻度や地下水位を上げたいと考えている。

(委員長)
■ 今回検討された堰は、降雨の状況により水位を調整出来るようなものではなく、高さを固定した堰で、それを排水路に設置した場合、先月と同程度の雨が降ると、7ページに示された写真の状況を超える氾濫影響が農地へ及ぶことが懸念される。そのため、水位を調整することが出来ない堰を排水路に設置することは出来ない。
■ 雨が少ないときに再生区域の水位を上げる方法として、1号支線排水路右岸の一部を切り下げて、再生区域側へ溢れやすくする方法が事務局から提案された。

(委員)
■ 河岸の一部を切り下げて氾濫させやすくするという説明があったが、水質のことも検討した方が良い。この地域は水が不足しているので、氾濫させるのは重要なことだが、栄養塩濃度が高い水を氾濫させると逆効果になる恐れがある。
■ 氾濫させることにより、ウオッシュロードと、それにくっついているミネラル等も再生区域へ入れることになる。氾濫させた水は、河川水位が下がればまた外へ流出し、湿原内に溜め込まれることはない。
■ 湿原が、質の高い湿原として維持されるために一番良いのは雨水である。降った雨が、出来るだけ長い間湿原に貯留されるようにすることが、湿原を保全する上で重要なことである。
■ 水位のことだけを考えて汚れた水を入れることはやめるべき。汚れた水を入れないという選択肢も出てくると思う。汚れた水を入れると、水分は長期間涵養されることなく流れ出て、汚れ成分だけを残していくことになる。

(委員長)
■ 水質調査を行い、その結果によっては、右岸の一部切り下げをやめるという選択肢も出てくると思う。

(委員)
■ 資料11ページに基本方針が示されている。これまでは、湿原再生地域をどのようにするのか、基本的な考え方が示されてきた。例えば、この地域をバッファー(緩衝帯)として考える、ヨシ原からハンノキ林へ変化した区域においてヨシ原を再生する、といったことが目標として掲げられていたと思う。
■ 今回は、目指すものが見えづらくなっており、仕事のやり方が基本の方針として示されている。先ほど、実施計画を作成するという話があった。実施計画では、この地域をどのようにするのかという、これまで議論されてきた方針も示していくのか。

(事務局)
■ 後ほど、実施計画の中で、土木的手法により取り組みをやり終えた後に、湿原の植生、地下水位、景観がどのように回復していくのか述べようと考えている。

(委員長)
■ 今の委員のご指摘は、そもそも幌呂地区の湿原再生を何のために実施するのか、というこれまでの議論の内容を、実施計画に反映させるのかどうか確認しているものである。
■ これまでの議論を前提として、実施のための基本方針を資料11ページにまとめたという理解で良いか。

(事務局)
■ ご指摘のとおりです。

(委員)
■ 水路の水位や地下水位を上げることで水の環境を良くするという考えで、未利用排水路の埋め戻しや排水路の堰上げについて話し合われたと思う。資料8ページの図を見ると、小さな未利用排水路を埋めただけでも相当の効果が見られる。ただし、地下水位が低いままの区域も残っている。
■ 1号支線排水路等の大きな排水路には手を付けず、未利用の小さな排水路だけを埋め戻す計画になっているが、前回の小委員会では、掘削した土を置いて地盤を圧密することにより、大きな排水路へ地下水が流れ込むのを抑制することも話し合われたと思う。大きな排水路への対策として、地盤の圧密や遮水など、何らかの方法を想定して計画を立てた方が良いと思う。
■ 北側の大きな排水路沿いは、小さな排水路の埋め戻しを行っても水位が上昇していない区域が見られる。このような区域については、遮水による効果が期待出来るかもしれない。そのような対策が実施可能な計画にしておいて、実施の段階で、観測結果を見ながら適切な方法を採用していくのが良いと思う。

(委員長)
■ 小さな排水路の埋め戻しにより地下水位が上がっても、その水が大きな排水路に流れ出てしまう恐れがある。そのことに対する対策も検討した方が良い。その方法として、泥炭の圧密や遮水壁の設置等が考えられるというご指摘である。
■ 今後、排水路を埋めた区域と大きな排水路の間の水の動きを検討することが必要だと思う。

(事務局)
■ 地下水位観測により、未利用排水路埋め戻しによる地下水位上昇の効果を把握しながら実施していくことを考えている。また、大きな排水路の近辺にも地下水位計を設置し、地下水位のモニタリングを行っていくことを考えている。
■ 資料8ページには、盛土による泥炭の圧密等について記載していないが、そういうことも検討しながら実施していくことを考えている。
■ なお、資料8ページの下の方に、統合型水循環モデルの精度について記載しているが、±20センチメートルの精度であることを補足しておきたい。

議事2:幌呂地区湿原再生(実施方針)について

(事務局)
■ 引き続き実施方針について説明する。
■ 排水路の堰上げは農地に影響が及ぶので、未利用排水路の埋戻しと地盤の切り下げを行う。
■ 植生や表土の状況により切り下げ深度を設定する。
■ 植生図を更新した。
■ 表土の分布から切り下げの範囲、深度を設定した。
■ 一帯を一様に切り下げるのではなく、地下水位、植生、表土を勘案して切り下げ深度を変える。
■ 重要種の生育する地域は切り下げを行わない。
■ 表土のある部分は地下水位の10センチメートル上を目指して切り下げる。
■ 外来種の生育場所は地下水位よりも10センチメートル深く切り下げる。
■ 切り下げ深度は、排水路に囲まれた区域をブロック化し、40のブロックごとに設定した。
■ 事業実施による湿原植生回復の予測評価を行った。
■ 地下水位上昇、冠水日数の増加、地下水位変動の減少が起こると予想される。
■ 約43haが事業後に再生すると予測した。
■ 今後は湿原再生を積極的にPRしてゆく必要がある。
■ 湿原再生を地域の振興や観光に貢献できるものにする必要がある。

(委員長)
■ 質問、コメントを頂きたい。

(委員)
■ 重要種生育箇所や表土表面まで水位が上がっているような場所は切り下げない、オオアワダチソウ等の外来種生育箇所は泥炭も切り下げる計画になっている。クサヨシも外来種と考えているのか。

(事務局)
■ クサヨシを外来種と考えると、泥炭を掘削する区域の面積がとても広くなってしまう恐れがある。以前、委員から泥炭も湿原の一部というご指摘があった。泥炭が出てくれば再生するだろうと考えて、クサヨシが生育しているからといって泥炭を掘削することは考えていない。

(委員)
■ 資料18ページのNo.7のブロックでは、130センチメートル切り下げることになっている。他のブロックよりかなり深く切り下げることになっているが、これはどういうことか。

(事務局)
■ ブロック7は、東側の地盤高が1m程度高くなっている。そのため、地下水位が地表面より1m以上低いところにある。資料16ページに示した考え方で切り下げ深度を設定すると、130センチメートル切り下げることになり、その下10センチメートルの深度に地下水位がある。

(委員)
■ 切り下げ深度区分図を見ると、隣り合うブロックでも切り下げ深度が数十センチ異なっている。ブロックに分けたのは良い案だと思うが、ブロックをもう少し細かく分けた方が良いと思う。
■ 現在のブロック分けでは、1ブロックの面積が広く、池になるような地形と丘になる地形が交互に現れる状況になってしまうのではないか。

(委員長)
■ ブロックの中の切り下げ深度の条件について、補足説明をお願いしたい。

(委員)
■ 切り下げ深度区分図を見ると、隣り合うブロックでも切り下げ深度が数十センチ異なっている。ブロックに分けたのは良い案だと思うが、ブロックをもう少し細かく分けた方が良いと思う。
■ 現在のブロック分けでは、1ブロックの面積が広く、池になるような地形と丘になる地形が交互に現れる状況になってしまうのではないか。

(委員長)
■ ブロックの中の切り下げ深度の条件について、補足説明をお願いしたい。

(事務局)
■ ブロックの1辺の長さが100m程度かそれ以上のブロックもある。切り下げ深度は、概ね10センチメートルから50センチメートル程度に設定している。
■ 50センチメートル切り下げる隣のブロックの切り下げ深度が10センチメートルということもあり得るが、段差を付けて切り下げることはせず、滑らかにすり付けるように掘削することを考えている。

(委員)
■ 試験地も高低を付けているが、狭い範囲で行っていることである。100m近くの階段が出来ると、かなりいびつな空間になると思う。採石場の切り出し区のようになるのではないか。
■ 形を滑らかにするためにも、ブロックを細かくして切り下げ深度を設定した方が良いと思う。

(事務局)
■ 1つのブロックを2つに分けても、切り下げ深度に数十センチの違いが出る場合もあると思う。

(委員)
■ ブロックを細かく分けて、均すように掘削し、極端な地形を作らないようにするのが良いと思う。

(委員長)
■ ブロック7などは面積が広いので、もう少し細かく分けて考えた方が良いと思う。
■ 実際に切り下げるときは、ブロックとブロックの間が階段のようになるわけではなく、滑らかにすることを検討する。

(委員)
■ 資料20ページの冠水日数に対する植生の反応を見ると、ハンノキやホザキシモツケはほとんど同じである。ホザキシモツケは、人為的な撹乱を受けた場所に生息する一過性の植物で、すぐにハンノキに変化していく。再生事業によりホザキシモツケが生育するようになっても、そう長続きはしない。ホザキシモツケは、将来の安定した植生としてではなく、事業を実施して10年程度後のターゲットという認識を持ってもらいたい。
■ 現在ヨシが生育している箇所は、将来、ムジナスゲやカブスゲが生育する本物の湿原になっていく可能性がある。ヨシとスゲ類からなる湿原、としても良いかもしれない。
■ 自然再生事業完了を10年目とそれ以降の植生をそれぞれ予測しておいた方が良いと思う。

(委員)
■ 湿原の観光的要素を呼び起こすための工夫について記載されている。個人的には、大事な視点だと思っている。
■ 辻井先生が協議会の会長だった頃、新庄委員長の案内で幌呂地区の現地視察を行ったことがある。そのとき、辻井会長は、「まわりの人に見てもらうのが大事なことで、誰が見ても明らかに湿原、というところをつくってアピールしていくのも良いのではないか」とおっしゃっていた。
■ どのような将来像をイメージして、どのような目的でどのようなことを実施しているのか、ここを訪れた人が見れば分かるような工夫をしていけば良いと思う。そのとき観光面や営農面で、どのようなことが地元として望ましいのか、鶴居村の意見も聴いた方が良いと思う。
■ 事業対象区のすぐ近くに小山がある。 あそこからであれば、幌呂地区で実施する上流部分の取り組みを見渡すことが出来る。場合によっては、工事そのものも色々な人に見てもらうことを考えても良いのではないか。例えば、学校教育の中で、幌呂地区でどのようなことを行っているのか教えていくことも考えられる。すごく良い教材になると思う。
■ 現地の取り組みを社会的にどのようにマッチさせるのか、将来設計の中に入れていただきたい。

(委員)
■ 実施計画をつくっていくにあたり観光や社会的普及に関することは、取り組みの内容に相当影響してくると思っている。
■ ここは、以前ヨシ原が大半で、ハンノキは疎らであった。それがいつの間にかハンノキ林となり、丘の上から見てもヨシの湿原が見えなくなっている。変化の原因はいくつかあると思うが、その一つとして、幌呂川の切り替えがあると思う。また、1号支線排水路等が掘られ、旧幌呂川の水位が下がり、その周辺ではハンノキ林が拡大している。
■ そのことを 研究している人の話を聴くと、水位が下がったことにより地盤が沈下して、ハンノキは生長したが、地盤が沈下したことにより地表面と地下水面の差がなくなってきており、最近は生えているハンノキが弱っているようだ、ということであった。ハンノキが弱ってきている区域については、ハンノキを伐採することによりヨシ原が再生する可能性もある。また、旧幌呂川を堰上げして水位を上げることにより、ハンノキを弱らせることが出来るかもしれない。
■ 具体的な方法は、ハンノキの専門家に判断してもらうことになると思うが、再生区域のハンノキ林をヨシ原に再生していく思想を、実施計画の中でどのように取り扱っていくのか、検討が必要だと思う。
■ 現在は、ハンノキに湿原方向の視界が遮られているが、ハンノキを伐採する方法が良いとなった場合に、そのハンノキを燃料に利用するなど、他の分野との連携が必要になってくると思う。
■ 鶴居村がどのような再生を望んでいるのか、地域に生産されている酪農製品等との係わりでより潤う仕組みはあるのかなど、そのようなことが維持管理して長く続けていく上でポイントになると思う。
■ 以前は、斜面等に降った雨が地表や地下を通って流れてきたが、今は水路に水が集められて、土砂や栄養塩も含んだ水が湿原内部に運ばれるようになった。そこで、再生区域にバッファーの機能を持たせようと議論してきたが、現在はその方向性が見えづらくなっている。例えば、流れてきた水が氾濫する場所をつくり、そこで土砂や栄養塩を沈下させ、水がゆっくり湿原へ流れていく仕組みを議論する場があっても良いのではないか。

(委員長)
■ 今のご意見は、再生事業全体に対するもので、久著呂川、茅沼地区、広里地区など、他の地区に対しても言える意見だと思う。

(委員)
■ モニタリングについては、物理環境だけでなく地下水の化学生もぜひ入れて欲しい。

(委員)
■ 下流側でハンノキが繁茂している。このハンノキについて、自然に任せるのか、伐採することも含めて検討するのか、以前議論されていたことがあったと記憶している。
■ 資料4ページに、堰を設けた場合の図が示されていたが、堰を設ける位置をもっと下流側、例えば①付近にしても良いと思う。それにより、ハンノキへの影響が期待される。
■ また、1号支線排水路の④と、そこに近接している旧幌呂川の⑩の水位はほとんど同じである。これまでの議論は明渠排水路に対して行われているが、元は自然河川であった旧幌呂川との関連をどのように扱うかについても、検討していただきたい。

(委員長)
■ 湿原再生小委員会として、釧路湿原全体のハンノキをどのようにするのか議論の途中で、結論は出ていない。
■ 広里地区でも、ハンノキの生態について研究されているので、そこで得た知見や今のご意見を踏まえ、釧路湿原全体のハンノキの扱いについて検討する必要があると考えている。
■ 今日は、幌呂地区に限定して議論している。旧幌呂川の扱い等については、今後の検討課題になると思う。

(委員)
■ 排水路を堰上げすることにより、⑩の地点から旧幌呂川へ水が溢れていくと思う。

(委員長)
■ 事務局に説明をお願いしたい。

(事務局)
■ ①の位置に高い堰をつくる、というご提案なのか確認したい。

(委員)
■ 堰をつくる場合は、③より下流側に設置する案も選択肢としてあるのではないかと考えている。
■ 旧幌呂川の河川生態系と、今日議論している明渠排水路とはかなり関係があると思う。明渠によって旧幌呂川の水位が影響を受けていると考えられ、また、本来上流から流れてくる水も明渠に集められて流れている。そので、旧幌呂川の自然環境も復活させるという視点を含めていただきたいと考えている。

(事務局)
■ 今の話は、旧川復元の関係になると思う。この小委員会では、湿原再生について議論しているので、事務局では旧川復元について判断するのは難しい。

(委員長)
■ 幌呂地区をA、B、C、D地区に区分し、A、B、C地区の位置づけを議論して決めた経緯がある。今日は、そのうちのA地区をどのようにするのか議論している。今のご意見は、C、D地区の扱いに関する意見になると思う。

(事務局)
■ A地区は、未利用排水路の埋め戻しと地盤の切り下げ、B地区は未利用排水路の埋め戻しを行うことを考えている。
■ 現時点で、C、D地区をどのようにするのか、踏み込んで考えてはいない。今のご意見は、C、D地区をどのようにするのか実施計画に盛り込むべき、というご意見なのか確認したい。

(委員)
■ C、D地区で直接なにかを実施すべき、ということを言っているわけではない。隣接しているので、色々と影響があると考えられるため、生態的には良い結果が出るような配慮をお願いしたい。

(委員長)
■ A地区での取り組みにより、C、D地区において湿原生態系の回復が期待されることを明確にしてほしいというご指摘なので、お願いしたい。

議事3:モニタリング計画について

 事務局より、モニタリング計画について説明が行われた後、内容について議論が行われた。

(委員)
■ 経年的にモニタリング調査を実施していくことになると思うが、結果をどのように広めて行く考えなのかを教えてもらいたい。

(事務局)
■ モニタリングの結果については、小委員会で報告していくことを考えている。

(委員)
■ モニタリング計画を見ると、物理環境に関する調査項目しかない。水質、すなわち地下水の科学性に関する調査項目も入れていただきたい。そうしないと、仮に失敗した場合に、その原因が分からなくなり、見直しが困難になる。

議事4:広里地区自然再生について

(事務局)
■ 広里地区におけるこれまでの取り組みと、調査・検討結果、今後の計画について報告する。
■ 広里地区の現状:旧農地区域での植生の劣化、ハンノキ林の急激な拡大が起こっている。
■ 旧農地区域での植生の劣化の要因はこれまでの調査から地下水位の低下、水位変動の増大であると推測されている。
■ 広里地区の再生目標:旧農地区域の植生を標準区のヨシ・ムジナスゲ群落に戻すこと。
■ ハンノキ林拡大の要因はまだ判明していない。今後要因を解明し伐採を含めた取り扱いを検討する。
■ 地盤掘り下げ試験を行ったが、河川に近い所では水位変動が大きく効果が小さいことから植生の回復には長い年月がかかることがわかった。
■ 河川の堰止めは農地に影響が出ると推測された。
■ 旧農地区域の再生には、旧雪裡川及び隣接する農地の水位を上げず、変動が少ない安定した水位上昇が必要と考えられ、地下遮水壁設置の検討に至っている。
■ 遮水壁の地下水位上昇効果についてシミュレーションを行った。
■ シミュレーションの結果では、不透水層まで遮水壁を設置することが必要である。
■ 旧農地区域の地下水位を上昇させるには、旧雪裡川右岸全域に遮水壁を設置するのが望ましいが、部分的な水位上昇を期待するならば北側への遮水壁の設置がより効果的である。
■ 遮水壁の設置には、より細かい位置、設置深度の検討、工法の検討が必要である。
■ 遮水壁を設置するには、詳細な地質調査、シミュレーション、モニタリングなどが必要である。
■ ハンノキの取り扱い方法の検討として、伐採は低木林で有効であると判明している。
■ 現在はハンノキ林の急激な拡大の要因を解明する試験を行っている。
■ これまでにハンノキ林の拡大要因として水位変動が少ないことと根圏が冠水しないことが分かっているが、さらに湿原火災が関連していると推測されており、現在模擬燃焼実験を開始している。
■ 模擬燃焼試験及びモニタリング結果によりハンノキ林拡大と湿原火災との関連を解明し、ハンノキ林伐採試験結果とあわせてハンノキ林の取り扱い方針を検討する予定である。

(委員長)
■ 質問、意見を頂きたい。

(委員)
■ シミュレーション結果において、どの方法でも旧農地の最北部が冠水していないのはなぜか。

(事務局)
■ その地点には安原川跡が排水路の役目をしており、安原川跡以北は冠水していないと考えられる。
■ 安原川跡を埋めることで冠水する場所が増えるかと思うが、確認には再度シミュレーションが必要。

(委員)
■ 遮水壁の設置には反対である。
■ 広里地区は現状ではかなり自然な状態を保っていると思う。
■ 地下水位を上げることで、地区内のハンノキにどのような影響があると考えているのか。

(事務局)
■ 地下水位が上昇し冠水する場所にハンノキがあった場合には衰退することが考えられるが、具体的な検討はしていない。

(委員)
■ 多分、ハンノキ林は水条件とあまり関係なく成立していると思う。
■ 遮水壁で地下水位を上げても、ハンノキ林は直接影響を受けないと考えている。
■ 遮水壁の効果は旧農地の現在ハンノキ林になっていないところへの影響がメインになるので、そこが現状で良いと言われると議論への影響が大きい。

(委員長)
■ 遮水壁に関して、環境影響とは何を想定しているのか。

(事務局)
■ コンクリートを用いる場合の水質への影響などを想定している。

(委員)
■ もっと生態系への影響を考慮してほしい。
■ 遮水壁を設置すると、旧雪裡川への水の供給が減り、広里地区の環境への影響が大きくなるのではないか。
■ 広里地区を釧路湿原全体の中でどう位置づけるかについても考えておくべきだと思う。

(事務局)
■ 先ほどは一例として水質への影響を挙げた。
■ 旧雪裡川の水位は、遮水壁の設置で一時的に下がるが、遮水壁内に水が溜まった後は回復すると予想している。
■ 広里地区は人為的影響を受けている湿原の縮図として考えており、そのため自然再生の対象地として選ばれていると考えている。

(委員)
■ 遮水壁の設置により、乾燥期は旧雪裡川への水の供給は減ると思うが、全体では大きな問題は現れないと考えている。
■ 今の状況が自然だという意見に対して、広里地区をどうするかといコンセンサスを得ないと混乱するので、皆さんの意見をうかがいたい。

(委員)
■ 我々の目標は広里地区を1960年代の自然に戻すということなので、今の自然を残すというのならば、全てやり直さないといけないと了解願いたい。

(委員)
■ 1960年代は恐らくヨシスゲ群落が中心であったと思うが、広里をその状態にすることが自然再生と言えるのか疑問に思う。
■ 現状に合った最善の方法を考えるべきではと思う。

(委員)
■ 1960年代に別保寄りに土地を所有していたが、その頃は別保川が蛇行しており、そこにはハンノキは無かった。
■ 別保川を直線化して水位を下げたとたん、ハンノキ林に代わってしまった。
■ 今日見学してみて、広里地区はやはりハンノキが増えていると思う。
■ 広里はタンチョウの営巣値でもあるので、ただ復元するのではなく、観光なども考えながら検討してはどうか。

(委員)
■ 環境省では標準区(1960年代後半)の植生への回復を目指して今日までやってきたということをご了解頂きたい。

(事務局)
■ 自然再生は人為的影響を受けた部分を再生するために行っている。
■ 広里地区の旧農地区域は新釧路川の開削による旧雪裡側の分断及び旧雪裡川右岸側が農地開発されたことにより水位が下がり、植生が劣化している。
■ 劣化した植生を元に戻す目標が農地開発される以前の1960年代のヨシムジナスゲ群落である。

(委員長)
■ 広里地区には現にタンチョウが住んでいるので、タンチョウの生息に対する影響をどう考えなければならないかについて皆さんの意見を頂きたい。

(委員)
■ 広里には一つがいのタンチョウが住み着いていて、2年に一度以上の確率で雛を育てている。
■ このつがいはほぼこの地域で生活を完結できている。
■ 旧雪裡川の釧路湿原道路から上流側はかなりくまなく使っている状況である。
■ 越冬は阿寒でするが、春早くから秋遅くまで広里で過ごし、冬も時々戻ってくる。
■ 最近のタンチョウには珍しく給餌への依存度も低いと思うので、この地域の環境にはこだわっている。

(委員長)
■ タンチョウが広里地区をどう利用しているかについて明確になったが、再生事業を進めるにあたり、タンチョウとの関係をどう考えるべきかについて意見を伺いたい。

(委員)
■ 一時的な工事の影響はできる限り回避するとして、それがクリアできれば広里のタンチョウの環境はもっと良くなるのか。

(委員)
■ 工事後にタンチョウが戻るかどうかは、餌となる生物が四季に渡り確保されるかどうかにかかっていると思う。

(委員)
■ 湿原は高水位で水位が安定するので、再生後の広里は今よりも水生生物にとって良いように思うので、むしろタンチョウにとっては良い方向に向かうと思う。

(委員)
■ タンチョウがいつどこで何をどのくらい食べているかはまだ調べられていない。
■ 現状ではどこで採餌しているかだけがわかっていて、比較的オープンな草地や旧安原川、旧雪裡川で採餌することが多いとしか分からない。

(委員)
■ 現在は土地改変や流路改変で急速に自然が動いている状態で、これは今後も続くと思われる。
■ 何らかの形でストップをかけないと、今の環境が維持されなくなる懸念を持っている。
■ 釧路湿原はこれまでに面積を広げたことが無い。これに対して人が自然再生できるなら将来的に希望が持てることになる。
■ 私は湿原を元に戻すということをやってみたいと強く思っている。

(委員長)
■ これからの作業にあたり、タンチョウが生活することに影響がないよう、必要なデータを集め、必要な施策についても考えることが課題としてあるということを確認してこの議論はここまでにしておきたい。

(委員)
■ 粘土置土撹拌工法とはどんな工法か。

(事務局)
■ 特殊な機械で土を掘りながら粘土を混ぜ、透水性の低い壁を作っていく工法である。
■ 重機を使う必要があり、プラントの設置も必要になる。
■ 工事を行う場合には、影響の少ない冬季に行うことを予定している。

(委員)
■ 元に戻したいというのはハンノキ林をなくしたいということか。

(事務局)
■ 基本はリファレンスサイトのヨシスゲ群落に戻したい。
■ ハンノキについては、人為的に広がったハンノキ林はなくしてゆく。
■ 自然の状態で増えたものは見分けがつくので残してゆく。

(委員)
■ 見分けがつくのか。

(事務局)
■ 見分けはつく。幹の太さのばらつきや空中写真などで割と容易に判別できる。

(委員)
■ 1960年代以前の姿に戻すなら、少なくとも一斉林になっているハンノキ林は無かったと思うので、一斉林の無い状態が目指す姿だと思う。
■ 旧農地の植生とハンノキ林の問題は分けて考えるべきだと思う。
■ 旧農地の部分はヨシなどの湿原草原が目指す方向だと思う。
■ ハンノキ林は川沿いの自然堤防に点々と残るのが本来の姿だと思う。

(委員)
■ 再生=農地を元に戻す、と考えていいのか。

(事務局)
■ 旧農地の湿原再生とハンノキ林の扱いは別に考える必要があり、ハンノキ林の扱いはまだこれから検討する状態である。

(委員)
■ 旧農地の植生の劣化とは、乾燥に強い植物が増えていて、現在もその傾向が続いているということか。

(委員)
■ 旧農地では大きな水位変動が起こっているので、このまま放置しても本来の湿性自然草原になる可能性は極めて低い状況である。

(委員)
■ 旧農地が牧草地になる前は一面のヨシスゲ群落が維持されていたという理解でよいか。

(委員)
■ 当時の航空写真から、当時はヨシスゲ群落であったと結論付けた。
■ この再生事業では、当初からツルの問題や今乾燥しているところにある希少種の問題などが議論されたが、元の姿に戻そうという共通意識の下で協力して進めていこうということだった。
■ 皆さんの立場が違うとどうしても対立意見が出るので、そこは環境省に交通整理をお願いしたい。

(委員長)
■ だいたい問題を浮き彫りになってきたと思う。
■ これからの作業を進めるにあたり、タンチョウの生態やタンチョウとの共生の方法を調べながら、環境への影響を配慮しつつ、皆さんの意見を頂きながら進めてゆきたい。

議事5:釧路湿原の面積について

(事務局)
■ 釧路湿原の面積について報告する。
■ 釧路湿原の面積は算出方法などにより違いのある複数が存在する。
■ 事業評価のために面積算出の統一された基準が必要となる。
■ 第6回の小委員会で報告した際、いくつか意見を頂いているので、改めて概要説明と質問への回答を行う。
■ 面先算出に利用したデータは、釧路国泥炭地分布図、釧路湿原植生図、環境土地利用図、航空写真である。
■ 過去の湿原域の把握には、航空写真から得た地形変換線と釧路国泥炭地分布図を用いた。
■ 現在の湿原域の把握は以下の手法で行った。
 植生図を用いて湿原域を抽出した。
 植生図の範囲外は環境土地利用図を用い、非湿原地域を除外した。
 上記で判別不能の区域は航空写真を用いた。
 さらに判別不能の地点は現地調査を行った。
■ 現在の湿原面積の算出は、湿原域を連続エリア、非連続エリア、湖沼エリアに区分した。
■ 事前閲覧資料を送付後、現地確認の結果湿原面積が増えている。
■ 算定結果は、最外郭エリアが399.8キロメートル2、2004年度の時点で220.7キロメートル2であった。
■ 第6回小委員会でのご意見3件に回答する。
 1. ニニシベツ川流域を釧路湿原の面積に加えた理由は、全体構想でニニシベツ川流域も釧路湿原に含まれているからである。
 2. 湿性林が釧路湿原の面積に含まれているかについては、資料の判読と現地調査により湿性林と判断された部分は面積に加えている。
 3. 広里地区の旧雪裡川を挟んで東側の短冊形の地形については、現地を確認して面積に加え1.1キロメートル2の面積増加となった。
■ 短冊形の地形の部分は、環境省の所管地は連続エリア、土地計画利用上農業用地になっている部分は非連続エリアとして計上した。

(委員長)
■ 報告への質問をお願いする。

(委員)
■ 連続エリアと非連続エリアの定義が分かりにくいので、判断基準をもう少し具体化した方が良いと思う。

(事務局)
■ 今回調査した場所は川で隔てられているので基本的には非連続エリアだが、非連続エリアは湿原の面積としてこれから減ってゆくエリアと認識しているので、環境省の所管地に関しては保護されているので連続エリアという区分にした。

(委員)
■ 環境省の所管地は恐らく開発が行われた形跡が無い場所だと思うが、連続エリアの定義をそういう定義にしてはいかがか、という提案だ。
■ 定義を明確にしないと後々困ることになると思うので、定義の検討をお願いする。

(事務局)
■ 連続エリア、非連続エリアの説明づけについては別途明確にする。

(委員長)
■ 湿原再生小委員会では釧路湿原の面積を報告通りで確定する。
■ なお、連続エリアと非連続エリアの定義についてはさらに明確にすることを申し添えておく。
■ 最後に議題を終えるにあたり、今後の取り組みについて発言を求める。

幌呂地区の今後の進め方について

(委員長)
■ 本日の議題を終えるにあたり、幌呂地区の今後の進め方について、事務局から説明をお願いしたい。

(事務局)
■ 本日の小委員会で、幌呂地区湿原再生の基本方針と実施計画について議論いただいた。本日いただいたご指摘を踏まえ、実施計画(案)を作成する。その実施計画(案)を各委員に送付し、再度ご意見をいただきたいと考えている。そのご意見を踏まえて修正した実施計画(案)を、次回の小委員会で説明したい。

(委員長)
■ よろしいか。(委員長が、各委員が了承したことを確認して終了)

(事務局)
■ 以上で第9回湿原再生小委員会を終了する。

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