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第13回水循環小委員会 議事要旨

第13回(平成27年3月24日)

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第13回水循環小委員会 議事要旨

開会

 事務局から第12回水循環小委員会の発言概要と今後の検討方針(案)について説明を行った。

発表:釧路川流域における湿原再生に向けた栄養塩循環評価手法に関する研究

 北見工業大学准教授の駒井克昭氏による「釧路川流域における湿原再生に向けた栄養塩循環評価手法に関する研究」と題した研究発表の後、質疑応答が行われた。

(委員)
 この窒素やリンは単体のイオンで水を調査することによって調べたのか? それとも化合物となって堆積しているような状態で調べたのか。

(駒井)
 今回の解析のベースとなっているデータは、無機イオンの状態ではなく、全ての窒素の有機物や、全部含めた 窒素を対象に解析した結果である。

(委員長)
 幌呂川流域内の各地点に、かなり栄養塩が集中しているところがあるが、そういうところは水の流れが非常に遅くなるのか?

(駒井)
 その水が、地表面に存在している一定の深さをもった水によって運ばれるものをここでは示している。したがって、どこかから発生して水と一緒に運ばれてきて、 例えばそこで地面に水が浸透して地面にしみ込んでしまうと。そうすると、地面に吸着して動かなくなるということなると思われるので、今回はそういう状態のものを示していると言えると思う。

(委員長)
 先生は 表面流、不飽和浸透流、地下浸透流と3つに分けて物質の移動法、水の動きを調べているが、一番現象が早いのは表面流であり、表面流としてトータル窒素とかトータルリンを運んでくるのが最初。次に少し遅れて、飽和している地下浸透流がもたらすもの。透水係数が非常に小さい飽和浸透流は、一番最後にもたらすかもしれないと。そう考えると、図の9は時系列データではなくて、一つの結果として載せていることになる。水の3つの流れとこの結果をどのように解釈すればいいのか。

(駒井)
 注意してほしいのは、今回この図に載せた絵は、あるときの、降雨後35時間の物質の場所を示しているので、 雨の量がもっと多かったり少なかったりすれば、この結果はかなり変わってくると思う。

(委員長)
 地表流は地形勾配が大きな誘因になるので、地表流のほかに地下水も入ってくれば、地形勾配だけでの判断基準にはならないと感じたが。

(駒井)
 そうとも言えるだろう。時々刻々、発生しては沈殿してということを繰り返していると思われるので、出水の規模や発生の仕方によって場所が変わってくると思う。

(委員長)
 降雨があった場合、物質が発生し、流れてくる。数値解析をすれば、それが雨によって発生して最終的に河口から出ていく時間もだいたい推定はつくのか。

(駒井)
 はい。場所によると思うが。

(委員)
 2ページ目で、細粒土砂というのが出ているが、これは具体的にどの程度の粒径の土砂か?

(駒井)
 粒径は1マイクロメートル。

(委員)
 ここで扱っているデータは去年開発局が久著呂川で取ったデータを駒井先生に提供して解析していただいたもの。同じデータを使って、開発局では別に流出負荷量を検討するので、そこを理解してみてほしい。

議事: 久著呂川流域における栄養塩負荷量の検討結果について

 事務局から久著呂川流域における栄養塩負荷量の検討結果について説明を行った後、内容について協議が行われた。

(委員)
 「平水時の水質の挙動」というところで、冬に特に窒素の値が大きい傾向が出ているとあるが、どの時期のどういう状況なのか。

(事務局)
 ここで冬というのは12月ぐらいから3月ぐらいまでの間を指す。冬の間もわずかに融けた雪が流出して川に流れてきていると思われ、このときは懸濁体となっている濁りの成分が出にくくなっていると考えられる。特に窒素と言ったのは、リンと比較しても窒素の方が溶存態の割合が大きく、このことは窒素よりもリンの方が水に溶けにくいことによると考えている。

(委員)
 今は久著呂川についてだけの話だったが、釧路湿原の河川全体にこういう傾向を見たと理解してよいのか。

(事務局)
 流域全体でも同じような傾向だと思う。雪が融けたときに浸透して流出するという水の動きは、久著呂川以外の流域も同じものだと考える。

(委員長)
 蛇足だが、「SS」とはサスペンデッドソリッド、河川の水の中に懸濁、浮いた状態のソリッド、いわゆる土。浮いたものということで懸濁物質と呼んでいるものがSSというものである。ここでは「比流量」と書いてあるが、例えば同じ久著呂川でも栄橋までの面積は計れば分かる。そして栄橋における流量を分子とし、分母としてその流域面積で割ったものを比流量という。
 負荷量を求めるためには、 原単位法と流出負荷量(L-Q方程式)と呼ばれるものがあり、 その二つの方法で推定した結果、SSの2002年で見ると推定量が極端に違う。
 いろいろな物理現象を取り入れることができるのは流出負荷量の方だが、どちらが良いかというのはこれから検討していくことになる。物質移動のメカニズムというは非常に難しいということを踏まえたうえで、地下水のメカニズムと同様、 栄養塩の移動をどのように捉え、最終的に予測するか。現在の湿原が良い方向に向かっているのか、悪い方向に向かっているのか。悪い方向に向かっていたらどのような工学的な考えでこれを矯正することができるか、いろいろ考えなければならない。

(委員)
 大雨で溢水状態になって湿原の中に流れ込み、湿原の上流域が黄色い水で満たされるようなことになると、窒素、リンなどが入り込んでハンノキが繁茂するというような状況を作るのではないかと心配なのだが。

(事務局)
 土砂の流出や、栄養塩が湿原にどれだけ影響を与えるのかというのは実はよく分かっておらず、まず実態を把握するところからスタートしている。その結果分かってきたところから、それらが湿原にどういう影響を与えるのかというのが次のステップかと思うが、なかなか高いステップだと思う。まずは現状把握として、現在整理させていただいている。

(委員)
 普段、私は一般の方への普及啓発の役割を担っているので、もっと分かりやすく、私がまず理解をして、噛み砕いて説明ができるようになりたいと思う。

(委員)
 これが生物にどのような影響を与えるかということが一番知りたいところで、それを要素に分解してしまうとこういうふうになってしまうのかなと思う。こういう分析は非常にできるようになってきていると思うが、生物的にどうなのかっていうところがなかなか難しいなと今、感じている。

(委員長)
 我々自身よりも、この釧路湿原の近くにお住まいの地元の委員の方のお考えが非常に大切だと思う。自分の近くにある湿原をどうしたいのか、どのように今なっているのか、それが良い方向に向いているのか悪い方向に向いているのかということを知るだけでも違ってくると思う。

(委員)
 業務上、毎日釧路川の水を分析させていただいているが、春先に、窒素の中でもアンモニアが上昇するイメージがあり、実際数字的にも通常の10倍くらい上がるという感覚がある。窒素全てが栄養塩としてという評価の中で議論されているが、できればその窒素の内訳も分かると今後の活動の中で非常に参考になるのではないかと思った。

(委員)
 物質循環メカニズムの解明に向けて今後も調査検討していきたいというようなまとめになっているが、いつまで、どこまでやるのというのが、指針というか目標として見えればいいと思う。

(委員)
 この小委員会は相当の成果を上げていると思っている。さまざまな現象を捉えて、それを今までいろいろ議論してきた知見と一緒にして、やはり目に見えるかたちの効果につなげていくことも必要ではないか。短い期間なりの何か目標もあっていい。基礎的な研究として役に立っているものもあるが、それを具体的なものにも合わせてやっていくと見えやすいのではないかと思う。

(委員)
 自分たちは酪農家としてそこで生活をしており、水をいかに汚さないようにするかという議論はしているが、農業を維持していくための一つの方策として草地更新をやることによって、また更新すると放牧地の中でもSSが35.4出てしまうというようなことになったりする……。更新しなければ我々の生活も成り立たない、良い牧草も作れない。しかし更新することによってこの河川汚濁というものが生ずる。この矛盾した中で、やはり何らかの妥協点を見出していかないといけないのではないかと思う。

(委員長)
 一人一人構成する委員の方々が非常に重要なことになる。この会も非常に重要で、ただ単に科学的にこうだ、だからどうすれとは言わない。やはり人間の社会もあります、生活もありますからそういうものを全部総合してベストなかたちを話し合っていくのがこの小委員会の役割。それを上げて協議会のほうに持っていく。多くの方々に説明をして、それで賛同を得て今現在の世の中ではそれがベストだというかたちとして提案する。

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