WEB広報誌 かいはつグラフ2013.5 釧路湿原自然再生事業
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釧路湿原自然再生事業(茅沼地区)
釧路湿原は日本で最も広い湿原で、貴重な動植物が多く生息しています。
また、水鳥等の生息地として国際的に重要な湿地であり、昭和55年にラムサール条約による国際保護湿地として、日本で第1号に登録され、昭和62年には湿原単体としては初めての国立公園にも指定されています。
釧路川流域では、湿原の土地利用を図るために、流域の森林伐採や河川の直線化等が行われ、河川の氾濫が減少し、新たな土地利用が可能になったものの、湿地が農地や宅地に開発されたことで湿原面積が減ったほか、土砂流入等により釧路湿原の乾燥化が進み、これまでの約60年間で約3割の湿地面積が減少しています。
これらの人為的な影響による急激な変化に対し、湿原の環境保全に対する住民の関心が高まったことを契機に、行政による具体的な湿原保全の動きが始まり、平成15年には自然再生推進法の施行を受け、同年に地域住民、学識者、関係行政機関等の多様な主体の参加による「釧路湿原自然再生協議会」が設立され、平成17年に「釧路湿原自然再生全体構想」がとりまとめられました。
これらを踏まえ、釧路湿原茅沼地区では、旧川を復元することで、湿原中心部への土砂流入の軽減や湿原植生の回復等により釧路湿原の保全、再生を行っています。
また、水鳥等の生息地として国際的に重要な湿地であり、昭和55年にラムサール条約による国際保護湿地として、日本で第1号に登録され、昭和62年には湿原単体としては初めての国立公園にも指定されています。
釧路川流域では、湿原の土地利用を図るために、流域の森林伐採や河川の直線化等が行われ、河川の氾濫が減少し、新たな土地利用が可能になったものの、湿地が農地や宅地に開発されたことで湿原面積が減ったほか、土砂流入等により釧路湿原の乾燥化が進み、これまでの約60年間で約3割の湿地面積が減少しています。
これらの人為的な影響による急激な変化に対し、湿原の環境保全に対する住民の関心が高まったことを契機に、行政による具体的な湿原保全の動きが始まり、平成15年には自然再生推進法の施行を受け、同年に地域住民、学識者、関係行政機関等の多様な主体の参加による「釧路湿原自然再生協議会」が設立され、平成17年に「釧路湿原自然再生全体構想」がとりまとめられました。
これらを踏まえ、釧路湿原茅沼地区では、旧川を復元することで、湿原中心部への土砂流入の軽減や湿原植生の回復等により釧路湿原の保全、再生を行っています。
主な整備内容
▼旧川の掘削
旧川に堆積している土砂を除去し、旧川を復元して、全流量を復元河川に戻すことにより、乾燥を防ぐための冠水頻度の増加や、蛇行の形状復元を図る
▼直線河道の埋め戻し
直線河道を当時の地盤の高さまで埋め戻して、地下水位、湿原植生の復元を図る
▼右岸残土の撤去
右岸のマウンド状になっている土砂を撤去して、これまでより小規模な洪水で氾濫させることにより、冠水面積・頻度の増加を図る
旧川に堆積している土砂を除去し、旧川を復元して、全流量を復元河川に戻すことにより、乾燥を防ぐための冠水頻度の増加や、蛇行の形状復元を図る
▼直線河道の埋め戻し
直線河道を当時の地盤の高さまで埋め戻して、地下水位、湿原植生の復元を図る
▼右岸残土の撤去
右岸のマウンド状になっている土砂を撤去して、これまでより小規模な洪水で氾濫させることにより、冠水面積・頻度の増加を図る
事業の主な効果
▼湿原中心部への土砂流入等の負担軽減
平成23年9月の台風時には、茅沼地区上流から河道を通って湿原中心部へ流下する浮遊砂量が約9割軽減された
▼氾濫原の再生による湿原植生の再生
ミゾソバ、イ、ヨシ等の湿原植生が旧川復元前と比較して、約30ha回復している
▼湿原河川本来の魚類などの生息環境の復元
流れの緩やかなところで見られるシベリアヤツメやエゾホトケドジョウなどの希少な魚類や、流れの速いところで見られるヤマメやアメマスなどの魚類が確認され、多様な魚種が生息できる環境が復元されている
平成23年9月の台風時には、茅沼地区上流から河道を通って湿原中心部へ流下する浮遊砂量が約9割軽減された
▼氾濫原の再生による湿原植生の再生
ミゾソバ、イ、ヨシ等の湿原植生が旧川復元前と比較して、約30ha回復している
▼湿原河川本来の魚類などの生息環境の復元
流れの緩やかなところで見られるシベリアヤツメやエゾホトケドジョウなどの希少な魚類や、流れの速いところで見られるヤマメやアメマスなどの魚類が確認され、多様な魚種が生息できる環境が復元されている
▼湿原景観の復元
湿地らしい景観に変化している
▼その他の効果
新たなカヌーコースとして利用されるなど、観光資源となっている。釣り客が訪れている
湿地らしい景観に変化している
▼その他の効果
新たなカヌーコースとして利用されるなど、観光資源となっている。釣り客が訪れている
湿原の動植物に詳しい北海道教育大学釧路校教授の神田房行氏にお話を伺いました。
-----まず、先生と釧路湿原の河川環境保全との関わりについて教えて頂けますか
平成11年に「釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会」が発足し、その後の自然再生協議会の「旧川復元小委員会」委員長として、湿原の保全に関わってきました。
昭和20年代から平成にかけての釧路湿原の植生を比較すると、湿地帯に多く生育するヨシ類が減少し、湿原でも比較的乾燥した立地に生育するハンノキが多くなっていることがわかりました。また、湿原の面積自体も減少していることがわかりました。
そこで、地域の貴重な財産である釧路湿原を保全・再生しようということで、旧川復元事業を行うことになりました。事業後に行ったモニタリング調査では、土砂流入が減り、湿原の植生の回復なども確認され、徐々に湿地が戻ってきています。
これからも定期的に調査していくことで、湿原の環境変化が把握できるものと思っています。
平成11年に「釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会」が発足し、その後の自然再生協議会の「旧川復元小委員会」委員長として、湿原の保全に関わってきました。
昭和20年代から平成にかけての釧路湿原の植生を比較すると、湿地帯に多く生育するヨシ類が減少し、湿原でも比較的乾燥した立地に生育するハンノキが多くなっていることがわかりました。また、湿原の面積自体も減少していることがわかりました。
そこで、地域の貴重な財産である釧路湿原を保全・再生しようということで、旧川復元事業を行うことになりました。事業後に行ったモニタリング調査では、土砂流入が減り、湿原の植生の回復なども確認され、徐々に湿地が戻ってきています。
これからも定期的に調査していくことで、湿原の環境変化が把握できるものと思っています。
-----周辺地域の方々はどのように関わっているのでしょうか
平成5年に釧路市でラムサール条約の会議が行われたことによって、湿原に対する関心が高まったように思いますが、なかなか足を運ぶ機会がなくて、地域の方々が湿原を身近に感じる機会がないのが現状です。
見せるべき所は見せて、関心を持ってもらうことが大切だと考えます。そして、ただ見るだけではなく、ガイド付きで、説
明を受けながら現地を見学することによって、湿原に対する理解を深めてもらいたいです。
展望台や木道など、いろいろな見学施設が整備され、また、ガイドも養成されています。それらをもっと生かしていくシステム作りが必要だと考えています。
平成5年に釧路市でラムサール条約の会議が行われたことによって、湿原に対する関心が高まったように思いますが、なかなか足を運ぶ機会がなくて、地域の方々が湿原を身近に感じる機会がないのが現状です。
見せるべき所は見せて、関心を持ってもらうことが大切だと考えます。そして、ただ見るだけではなく、ガイド付きで、説
明を受けながら現地を見学することによって、湿原に対する理解を深めてもらいたいです。
展望台や木道など、いろいろな見学施設が整備され、また、ガイドも養成されています。それらをもっと生かしていくシステム作りが必要だと考えています。
-----地域の方と湿原を結びつけるための取組について教えてください
授業の一環で、本校の学生に湿原のヨシを刈り取って発芽させて植え付けるという環境プログラムなどを行っています。学生からの反応は好評で、実際に現地で体験することで、湿原を身近に感じることができてよかった、という意見が多いです。現地で実際に体験するというのがポイントだと思います。
本校の公開講座に参加した方々が、受講後に、ボランティアとして湿原に関わってくれるようになった例も多く見受けられます。
釧路開発建設部が事務局となっている、釧路湿原の環境を見守るボランティア活動である「釧路湿原川レンジャー」も、たくさんの人々に湿原のことを知ってもらえる非常に効果のある活動だと思っています。
より多くの方にサポーターになってもらうことが、国民全体の湿原や自然再生への理解につながると思っています。
授業の一環で、本校の学生に湿原のヨシを刈り取って発芽させて植え付けるという環境プログラムなどを行っています。学生からの反応は好評で、実際に現地で体験することで、湿原を身近に感じることができてよかった、という意見が多いです。現地で実際に体験するというのがポイントだと思います。
本校の公開講座に参加した方々が、受講後に、ボランティアとして湿原に関わってくれるようになった例も多く見受けられます。
釧路開発建設部が事務局となっている、釧路湿原の環境を見守るボランティア活動である「釧路湿原川レンジャー」も、たくさんの人々に湿原のことを知ってもらえる非常に効果のある活動だと思っています。
より多くの方にサポーターになってもらうことが、国民全体の湿原や自然再生への理解につながると思っています。