道内屈指の稲作地帯を支えて-北海幹線用水路

北海幹線用水路の写真
1世紀近くの時を経て今も悠々と水が流れる

米づくりに欠かせない“あるもの”とは

私たちの食生活に欠かせない「お米」。茶碗1杯の米を作るのに必要な水の量は450リットルとも言われています。もちろん炊飯器の水の量ではありません。水田で稲を育てるために必要な量です。国内の米の産地と言えば、秋田県や新潟県などの東北、北陸地方が有名です。

北海道で稲作が始まったのは17世紀後半ですが、北海道の米づくりを大きく飛躍させた土木施設、それが「北海幹線用水路」です。石狩川流域の泥炭地を米づくりの一大拠点に変貌させたこの用水路の全長は約80キロメートル。空知管内・赤平市にある北海頭首工から始まり砂川市、奈井江町、美唄市、三笠市、岩見沢市、南幌町まで続きます。

泥炭を乗り越えて悲願の通水

かつては「北海かんがい溝」と呼ばれた、この用水路の建設は苦難の連続でした。内務省管轄時代の道庁の主任技師・友成仲 (ともなり・なか) が率いた北海土功組合が着工したのは大正13年。今のように便利な建設用機械もない時代、作業はすべて人力です。従事した人たちはモッコやツルハシ、スコップを持ち、土の運搬には馬を使い工事を進めました。不眠不休の大工事はわずか4年4カ月で完成し、悲願の通水が実現しました。

しかし、また苦難が訪れます。石狩川流域の泥炭地を水田として整備することになりましたが、排水作業はうまくいかず、排水工事や客土なども、ぬかるみの中を大きな下駄を履いての作業です。それでも、土地改良の努力は次第に実を結び、今では道内屈指の稲作地帯となりました。

先人たちの苦労の末に完成した北海幹線用水路と水田地帯。農業用水は、今では、冷害から稲を守る深水かんがい用水、生活用水、防火用水、親水など、さまざまな役割を果たしています。

北海道の米への評価も変わってきています。道産米は長い間、「おいしくない」と言われ続けてきましたが、新品種の開発などの成果もあり、おいしく生まれ変わった北海道米は高級ブランド米として全国の米ファンの味覚をうならせます。平成16年には北海道遺産にも選定されました。北海幹線用水路はこれからも北海道の穀倉地帯を支えます。

身近にある、偉大なる施設-日本一をもっと知って

収穫時期を迎えた稲の写真

全長約80キロメートルの用水路は農業専用の用水路としては国内最長と言われており、用水路を活用している田畑は約2万2,000ヘクタール、洞爺湖の約3.1倍の面積に及びます。用水路沿いでは、有志団体や地域住民によって草刈り・植樹などの景観美化が行われているほか、用水路を利用した親水公園も整備されています。先人の偉業をぜひその目で見てはいかがですか。