難工事を克服し地域をつなぐ―黄金道路開通

黄金道路の写真
美しい海岸線を縫うように走る黄金道路

北海道有数の難所を克服した黄金道路

国道336号のえりも町庶野地区から広尾町までを結ぶ約33キロメートルは、切り立った崖を縫うように、トンネルと覆道が連続し、時折、覆道の合間からのぞく海岸線が美しいルートです。

断崖絶壁からは石が崩れ落ち、冬には雪崩が多発するこの区間で、道路建設が計画されたのは江戸時代のことです。

寛政10年、近藤重蔵は、幕府の命令による東蝦夷地の探検調査の帰り道、崖や岩礁を伝ってかろうじて通行できる状態の交易路しかない広尾で暴風雨に遭い、足止めを余儀なくされました。そのため、地元のアイヌの人々の力を借りて、山道約12キロメートルを開削したそうです。これが蝦夷地で最初の道路開削となりました。

それ以降も、道路建設に向けた調査は行われましたが、海岸・山岳ルートとも建設が困難とされ、長い間着工が見送られていました。ようやく着工したのは、昭和2年。トンネル建設や海岸の埋め立て、崖を削るなどの難工事で、完成までに7年を費やし、昭和9年に日高と十勝を結ぶ海岸ルートが開通します。竣工当時の名称は日勝海岸道路でしたが、黄金を敷き詰められるほどの莫大な建設費がかかった道路として「黄金道路」と呼ばれるようになりました。

より安全な黄金道路に―襟広防災

平成の時代を迎えても、黄金道路は交通の難所であり続けました。区間内では、平成15年9月の十勝沖地震に伴う岩盤崩壊、16年1月にえりも町で発生した体積42,000立方メートルに上る斜面崩壊などが発生したほか、雪崩や波浪でもたびたび通行止めになります。より安全な通行を実現するため、道路は絶え間なく進化しています。

落石、土砂崩落、波浪、雪崩等の災害対策として平成2年に事業化した「襟広防災」では、延長4,941メートルの北海道内で最も長い道路トンネルとなるえりも黄金トンネルが平成23年2月に完成。24年1月には目黒トンネル (延長1,876メートル)、28年2月には新宝浜トンネル (延長2,438メートル) を完成させるなど、これまでの災害を踏まえた改良を重ね、危険箇所の法面工事などで災害の予防にも努めています。

自然の造形ハートレイク-豊似湖

豊似湖の写真

黄金道路から、えりも町目黒の猿留川沿いの林道を上流へとさかのぼると北海道屈指の秘湖である豊似湖があります。日高山脈襟裳国定公園内唯一の自然湖で、ハートの形をしていることで、「ハートレイク」とも呼ばれています。また、馬の蹄 (ひづめ) にも似ているところから、地元では「馬蹄湖 (ばていこ)」とも。10月中旬に見頃となる紅葉は、湖の周遊コースで満喫できます。夫婦で、恋人同士でご覧になると忘れられない旅の思い出になりそうですね。