北海道開発の羅針盤・北海道総合開発計画―産業振興から「世界の北海道」へ

ポスターの画像
第1期北海道総合開発計画をPRするポスター (北海道博物館蔵)

昭和25年に施行された北海道開発法。第二条では「国は、国民経済の復興及び人口問題の解決に寄与するため、北海道総合開発計画を樹立し、これに基く事業を昭和26年度から実施するものとする」と規定しています。北海道総合開発計画は、北海道開発庁が策定作業を進め、27年度に第1期計画としてスタートします。開発庁と同様に、国の計画で地方自治体の固有名詞が付くのは初めてのことでした。

復興に向け北海道開発に期待

1期計画の期間は10年間で、前期5カ年の特色は資源開発、後期5カ年は産業の振興が目的でした。計画実施の裏付けとなる予算を見ると、北海道開発予算のうち、一般公共事業費に相当する北海道開発事業費は、昭和26年に73億円でスタートしましたが、1期計画の最終年度の37年度は544億円と、約7.5倍に増加しました。

道路や港湾、農業などの社会基盤整備の進展により、道内各産業の生産額は飛躍的に伸びます。後期5カ年だけを見ても、基準年次 (30年度) から、農業生産額は約1.4倍、工業生産額は2.5倍にも増加しました。さらに生産所得も約1.6倍に増えるなど、産業振興を支える北海道開発が着実な成果を上げていることが証明されました。

2期計画以降も産業構造の高度化、高生産・高福祉社会の建設など、社会経済情勢の変化に対応するテーマを掲げ施策が展開されてきました。昭和時代後半は、オイルショックや急速な円高など世界経済における変化の波が押し寄せ、北海道開発は非常に大きな課題に直面しました。平成に入ると、北海道の基幹産業である「食」と「観光」を活性化させ、北海道の自立を目指す施策が中心となってきました。

「新たな日常」を先導する地域に

今、北海道総合開発計画は8期計画が進行中です。キャッチフレーズは「世界の北海道」。北海道の食と観光を担う「生産空間」の維持・発展を図るため、「人が輝く地域社会」「世界に目を向けた産業」 「強靱で持続可能な国土」を目標に掲げ、目標実現に向けた各種施策・事業を進めてきました。

令和2年度には中間点検が実施されました。3月にまとまった報告書では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた再生可能エネルギーの導入、気候変動や巨大地震の切迫を踏まえた強靭な北海道の実現などを取り上げ、これらの課題に対応するためにも計画の一層の推進が必要、と総括されています。

また、ウィズコロナ、ポストコロナにおける「新たな日常」を先導する地域を目指すことが必要とも指摘しています。戦後、我が国が危機的状況に直面した時、北海道の大地は、復興に向けて重要な役割を果たしました。あの時から70年。コロナ禍からの再生に向け、北海道と北海道開発の役割が今一度クローズアップされようとしています。