酪農王国・北海道の始まり-根釧パイロットファーム

酪農家の写真

世界銀行が認めた先進的事業

北海道に美味しいものは数多くありますが、全国に「北海道」の名を知らしめている代表格の一つと言えば「牛乳」でしょう。各地で乳牛が飼われています。その中でも根釧台地で生まれる牛乳は、広大な牧場の風景とともに、全国ブランドです。そして、酪農王国・北海道の起源も、ここ根釧地方にあります。

明治時代の開拓期、根釧台地に入植した人たちは、冷涼な気候に適する酪農を始めました。その後も、北海道庁による積極的な酪農振興が進められましたが、大きな転機となったのは、昭和30年 (1955年) から始まった「根釧パイロットファーム」事業です。

この事業の大きな特徴は①大量の大型土木機械投入による工期の短縮と入植者の住宅整備②世界銀行による融資-です。

戦後、疲弊した我が国にとって、自力での大規模開発の資金調達はなかなか難しく、世界銀行の融資実現は、非常に重要な出来事でした。高速道路など日本の近代化に欠かせない社会経済基盤整備が世界銀行の融資によって進められました。

そのうち2件が根釧パイロットファームと、先にご紹介した篠津地域泥炭地開発です。この2事業が日本の近代化にとって非常に重要である、と認められた証です。

困難乗り越え世界ブランドに

道路や排水路などの基幹施設整備を担う北海道開発局は、開墾などを行う農地開発機械公団や営農指導などを担当する北海道庁と連携し事業を進めます。昭和39年には、開墾地は約5,000ヘクタールに達し、入植は約360戸に上りました。こうして酪農王国の基盤が築かれましたが、その後、家畜伝染病の発生などから、離農する農家もありました。

しかし、昭和48年からスタートした新酪農村建設事業などの国家プロジェクト推進と現在も継続している土地改良事業、酪農家の品質向上に向けた取組、そして釧路港発のRORO船 (ロールオン・ロールオフ・シップ、トラックやトレーラーが自走して乗り (Roll-on) 降り (Roll-off) できる船) 輸送による首都圏への販路拡大など、関係者の取組が実り、今、ベテランに加え、若い方たちが根釧地方で活躍し、今日の酪農王国を支えています。

別海町は「別格」-豊かな自然が育む「美味」

牛乳の写真

酪農王国・根釧地方でも、牛の数が群を抜いて多いのが別海町です。人口よりも牛の数が多い市町村は道東や道北で複数ありますが、別海町は「別格」。1世帯当たりの牛の数は17.1頭、年間の生乳生産量は約50万トンと異次元の数字 (令和2年) です。これは豊かな自然のもとで栄養たっぷりの牧草と豊富な水をストレスなく食べて飲むことができる環境があるからこそ。苦労を重ねて荒野を開拓した先人に感謝です !