世界初、ラジオアイソトープで漂砂分析
太平洋に面し、本州からの人・物の玄関口となる苫小牧港。道内では最大の貿易額を誇る港でもあります。港は苫小牧市街に近接する西港区と苫小牧東部地域にある東港区で構成されています。
空からこの港を眺めると、形の違いがはっきりと分かります。西港区は大地を掘り込み、巨大な水路のよう。東港区は、コンテナターミナルを取り囲むように長い防波堤が整備されています。でも、70年前は広大な砂丘と原野が広がる未開の地でした。
西港区は、国内初の大規模な「掘込港湾」です。国内の港の多くは、天然の地形を生かして作られてきました。外海の荒波から船を守るためです。広大な砂丘が広がるこの場所に港を作ることを考えた先人は「大地を掘り込んで港にしよう」と発想します。
最大の難敵は波の力で海底を漂う砂、いわゆる漂砂です。港を作っても、砂が流れ込んでくると、港は浅くなり船が通れなくなります。漂砂の動きを把握するために用いられたのがラジオアイソトープ (放射性同位元素) です。ガラスにアイソトープを固定して人工砂を造り、その砂の動きを把握する実験です。
得られたデータを基に、最適の防波堤の規模と位置が確定します。昭和35年に掘り込み工事が本格化し、38年、待望の第一船が入港します。西港区はその後、流通港湾の拠点、そして太平洋側カーフェリー航路の玄関口としても、多くの人と物の流れを支えています。
時代の変化に対応する東港区
東港区は、昭和51年に着工し、55年に第一船を迎えました。北海道における工業生産の拡大と産業構造の高度化を推進するため、鉄工や石油精製など重厚長大な工業基地を目指したものですが、オイルショックなどによる経済社会情勢の変化に伴い、西港区と一体となった広域的な流通港湾としての機能拡充が進められました。
現在では、国際コンテナターミナルの供用開始など、流通拠点としても機能を発揮。地域内には、石炭火力発電所、石油備蓄基地などのエネルギー関連企業のほか、自動車工業などが立地しています。時代の先陣を切って整備が進み、時代の変化に対応して進化を続けてきた苫小牧港。北海道を代表する貿易港としての役割は今後一層重要性を増しています。
子供の笑顔が輝きます-西港区のキラキラ公園
西港区の北埠頭には、親水空間を備えた「キラキラ公園」があります。光る波間の大きな船を間近に見学でき、夜にはライトアップされます。まさに「キラキラ」です。景色も抜群ですが、密かな人気は1年を通じてできる釣り。広々とした空間は子供連れでも安心。「釣れたよー」と子供たちの笑顔が輝く公園です。