国道36号「弾丸道路」完成秘話-道路史上の金字塔として今も高い評価

セレモニーの写真
1年余りの突貫工事で無事完成の日を迎えた

エンジニアの熱く、強い意志

北海道の道路建設史上、「金字塔」と呼ばれる事業が国道36号札幌-千歳間の道路、通称・弾丸道路の建設です。延長34.5キロメートルという大工事を、昭和27年10月の着工からわずか1年余りで完成させました。今の技術でも相当困難な工事ですが、なぜ70年前にこれができたのでしょうか。そこには最新技術の導入と、困難な工事をなんとしてもやり遂げようというエンジニア達の熱く、強い意志があったからです。

当時、工事の総指揮を執ったのは札幌開発建設部部長だった高橋敏五郎氏。「北海道舗装史」(昭和57年発行) の座談会で、当時のいきさつを次のように話しています。

「昭和27年8月末、上司から夜中に『これから千歳までの工事に着手して、来年秋までに出来るだろうか』という電話がありました。『ちょっと一晩考えさせてください』と答えました。1年というのは非常に厳しい。でも考えてみれば、仕事をやるのは業者です。われわれは、やりやすい設計を組んで工区割りをうまくやり、皆で協力すればできる、という結論に達しました」と振り返っています。

アスファルト舗装と機械施工を導入

施工にあたったのは道内外の精鋭15社。総労働者数は約34万人に達し、ブルドーザやローラ、トラックなど約250台が投入されました。大量の人員と機械が現場で休みなく働き続けました。

特筆すべきことは、近年では一般的になっているアスファルト舗装と機械施工を本格的に導入したことです。工期が限られる中の選択でしたが、これらの導入により、施工は著しく効率的となり、昭和28年11月、待望の完成を迎えます。当時の新聞は、「北海道土木史に金字塔」「わが国土木会の最高の技術を大量に投入して正味1カ年で完成」と最高の讃辞を贈っています。

弾丸道路で採用された技術、特にアスファルト舗装は、これまでコンクリート舗装一辺倒を転換させる画期的な役割を果たしました。その後、北海道だけではなく、全国の高速道路建設にも活かされます。まさに「金字塔」であり、北海道発の技術を全国に知らしめるプロジェクトでした。

なぜ「弾丸」?―諸説あります

国道36号の写真

弾丸道路という名称の由来、実は諸説あります。「米軍の弾丸運搬に使われた」「弾丸のような突貫工事だった」「弾丸のように早く走行できる」などが代表的です。今回、この事業を紹介するにあたってもう一つ追加を。「弾丸のように一途なエンジニアの熱意によって完成したから」。開通後、交通量増大などに対応するため、バイパスなどの整備が進み、現在、当時の弾丸道路を彷彿させるのは北広島市の旧島松駅逓所近辺だけです。でも、エンジニアの熱意は、今も変わることなく、各地の道路整備事業に息づいています。