昭和の土木技術の結晶-豊平峡ダム、浮島トンネル

豊平峡ダムの写真
紅葉とのコントラストが人気の観光放流

昭和時代に完成した2施設

北海道開発局は発足以来、道内各地で公共施設を整備してきました。どの施設も北海道の生活と経済活動を支える重要なインフラですが、この中でも、技術的な難易度が高いものとして挙げられるのがダムやトンネルです。これらは土木技術の「結晶」とも言えます。ここでは昭和時代に完成した豊平峡ダムと国道273号浮島トンネルを紹介します。

道内では数少ない「アーチ式」ダム

札幌市内を流れる豊平川は、大都市を流れる川としては世界的にも屈指の急流河川です。昭和36年と37年には大洪水が発生しました。このような水害を防ぐとともに、札幌市の人口増加に伴う水源の確保と電力需要に対応するため、多目的ダムとして計画されたのが豊平峡ダムです。

形式はアーチ式と呼ばれるものです。コンクリートダムには、ダム自身の重さで水圧を支える重力式がありますが、アーチ式は、形をアーチ状に湾曲させることでダムにかかる水圧を周りの岩盤で支える構造のため、ダムの厚さを比較的薄くすることができ、コンクリート使用量が少なく経済性に優れています。ただ、アーチを支える周辺の岩盤が強固であることが絶対条件です。道内のアーチ式ダムは、この豊平峡ダムと奥新冠ダム (北海道電力) だけです。

大幅な水位低下と観光放流に人気

豊平峡ダムは昭和42年に着工し47年に完成しました。その後平成元年に完成した定山渓ダムとともに、豪雨の際には、豊平川の水量を調節し洪水被害軽減に貢献しています。また、豊平峡ダムのある一帯は紅葉の名所です。毎年、6月から10月にかけては観光放流を実施し、新緑・紅葉と放流の絶妙なコントラストが人気を呼んでいます。

交通の難所「浮島峠」

浮島トンネルの写真
完成当時全道No1の延長だった浮島トンネル

帯広市を起点に上川町、滝上町を経て紋別市に至る国道273号。このうち標高916メートルの浮島峠は、特に滝上町方面の道路は急勾配とヘアピンカーブが続く交通の難所であり、冬期間は通行止めとなっていました。浮島トンネル (3,332メートル) は昭和50年に着工し、昭和59年に開通しました。

2時間の短縮効果

整備効果は絶大でした。特に冬期間は通行止めだったため、滝上-旭川は名寄方面を迂回するルートに比べ、走行時間は実に2時間短縮しました。完成当時、浮島トンネルは国道トンネルとしては全道一の長さでした。平成以降、長大トンネルが整備され順位は下がりましたが、紋別と旭川を往来する方たちにとっては「かけがえのないトンネル」であることに今も変わりません。