北海道の将来像は「スマート農業」―大区画化と新技術・データ連携で

田植え機の写真
自動操舵の田植え機
ドローンの写真
農薬散布のドローン

北海道の農業は、1経営体当たりの耕地面積が28ヘクタール超え (都府県平均の13倍) という大規模な専業経営を展開し、新品種開発と高付加価値の6次産業化などで、安全・安心な「食」のブランドを築いてきました。

一方で、農業者の高齢化と後継者不足による担い手の育成・確保が課題であるほか、TPP11など国際的な貿易ルールの発効による国際競争力の強化が求められています。

大幅省力化で担い手の負担軽減

北海道農業の将来像のキーワードは「スマート」です。情報通信技術 (ICT)、ロボット技術 (AI) を取り入れた「スマート農業」が注目されています。

北海道開発局では、農地を大区画化する事業を進めていますが、これにより、大型機械が活用できるなど作業を効率化でき、全地球測位システム (GPS) などを利用した自動走行のロボットトラクターなどの農機や農薬散布用のドローンの導入が可能となりました。

気象と作物生育の関係をAIで解析する技術の研究も進められており、これらの情報が生産者に提供されることで、農作物の生育などを予測する高度な農業経営の実現が期待されます。

また、特に水田地帯は、大区画化などと併せて、地下水位制御システムの導入も進めています。このシステムは、用水路と暗渠排水管を接続して地下から用水を供給するもので、直接種をまく直播栽培が可能になり、ほ場の作業時間は従来に比べ約70%も減少、大幅な省力化を実現しています。

また、干ばつ時には畑作物への水分補給が可能になり、生育や収量の改善に貢献します。さらに、地下水位を調節することにより、田畑を交互に活用する複合経営が可能となりました。この水管理も自動化の試験が行われており、短縮された労働時間で他の作物を栽培できるようになりました。

環境に優しい肥培かんがい施設

酪農では、環境に優しい農業という視点で北海道開発局が長年にわたって取り組んできた肥培かんがい施設整備が注目です。

牛舎から排出される家畜糞尿をかんがい用水で希釈・調整することで良質な肥料 (スラリー) が生成されます。これをほ場に散布することで、牧草の増収や化学肥料の節減が可能となります。まさに資源を循環利用する環境保全型の生産基盤整備です。やっかいものの糞尿を資源として活用するこの事業、北海道発の技術として更なる展開が期待されています。

肥培かんがい施設の写真
釧路管内で施工される肥培かんがいの配水調整槽

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