十勝岳と有珠山-「火山との共生」と噴火への備え

十勝岳噴火の写真
昭和63年に噴火した十勝岳

牙を剥き人命と財産奪う噴火

北海道の豊かな自然は、私たちの生活と観光などの経済にとって貴重な「資源」です。しかし、自然は時として牙を剥き、私たちに襲いかかります。道内ではこれまで大規模な噴火が発生し、かけがえのない人命と財産が奪われてきました。

戦後の噴火の歴史を見ると昭和37年に十勝岳が33年ぶりに噴火し、死者・行方不明者5人、負傷者11人という被害が発生しました。十勝岳は昭和63年にも噴火し、美瑛町、上富良野町の住民約400名が一時避難しました。噴火は大きな被害をもたらしますが、その一つに火山泥流があります。火山において火山噴出物と多量の水が混合して地表を流れる現象で、時速数十キロメートルに達することがあります。

火山泥流対策を万全に-十勝岳

北海道開発局では、この噴火を受けて火山泥流を防ぐ火山砂防事業を本格化させるとともに、ワイヤーセンサーや監視カメラなどを設置。これらを集中管理する十勝岳火山砂防情報センターを美瑛町字白金地区に整備しました。噴火の際には、最前線の対策本部として機能するほか、白金温泉地区の人々の一時避難所としての役割も果たします。前回の噴火から30年以上が経過し、再び噴火する可能性もあります。北海道開発局では、地元市町村や気象台など関係機関と連携し、噴火による被害を最小限にするための取組を進めています。

代替ルート整備し復興支える-有珠山

有珠山噴火の写真

有珠山も大規模な噴火を繰り返してきました。最近では平成12年に噴火しましたが、地震などの噴火の前兆をしっかりと観測できたため、周辺地域の住民が噴火前に全員避難し、死傷者はいませんでした。しかし、洞爺湖温泉に至るメインルートの国道230号の道路上に噴火口が形成され、噴火による隆起の影響を受け通行ができなくなりました。

北海道開発局では、早期の復旧に向けて平成13年に「有珠復旧事務所」を開設しました。まず、代替道路として道道の一部を国道に編入し、急カーブ解消などの整備を進め、併行して新ルートの検討に入りました。新ルートは洞爺湖側の珍小島から国道37号の清水地区を結ぶ総延長4.6キロメートルの区間です。平成14年度に着工し、平成19年3月に開通。噴火災害からの復興に大きな役割を果たしました。

自治体では避難計画や避難訓練、火山防災マップの作成などの準備を進め、円滑な避難が可能となりました。しかし、火山噴火はひとたび発生すると公共・民間施設に甚大な被害を与え、地元経済も大きな打撃を受けます。火山は温泉などの恵みをもたらし、貴重な観光資源という側面もありますが、常に用心を怠らず「火山との共生」を構築していくことが必要ですね。

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