アイヌ文化の復興・発展のためのナショナルセンター 民族共生象徴空間「ウポポイ」

リムセの写真
アイヌの伝統舞踊 イヨマンテリムセ (熊の霊送り (提供 (公財) アイヌ民族文化財団)

新たなアイヌ政策の「扇の要」

北海道の地名の約8割は、アイヌ語に由来しています。近頃では、特徴的で美しいアイヌ文様が様々なアイテムに取り入れられ、アイヌの世界観を扱った映画や書籍などにも関心が高まっています。

アイヌ民族は日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族です。日本語と系統の異なるアイヌ語を用い、狩猟・漁ろう・採集を生業とし、自然界すべての物に魂が宿ると考え、文様を施した刺繍・木彫りといった工芸など、固有の文化を発展させてきました。

中世以降、アイヌの人々は和人と深く関わりを持ち続け、交易相手として相互の文化に影響を与えましたが、明治以降、我が国の近代化の過程で、狩猟などや独自の風習の禁止、アイヌ語の使用機会の激減など、アイヌ文化は深刻な打撃を受け、多くのアイヌの人々が差別と貧窮に苦しむことになりました。

戦後、アイヌの人々に対する生活向上関連施策や文化振興施策が展開される中、大きな転機が訪れます。平成20年6月、衆参両院で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が全会一致で採択されたことです。これを受け政府は、アイヌが先住民族であるとの認識の下に施策を推進することとし、内閣官房長官が設置した有識者懇談会によって翌年7月、新たなアイヌ政策の「扇の要」となる「民族共生の象徴となる空間の整備」が提言されたのです。

「アイヌの世界と出会う場所」

令和2年7月、白老町ポロト湖畔に誕生した民族共生象徴空間 (愛称ウポポイ) は、①先住民族アイヌを主題とする日本初の国立博物館「国立アイヌ民族博物館」②アイヌ文化を体感できるフィールドミュージアム「国立民族共生公園」③アイヌの人々による尊厳ある慰霊を実現するための「慰霊施設」-により構成され、北海道開発局では施設整備や開業支援を実施しました。

ウポポイの多彩なプログラムや展示は、多様な価値観が共生する活力ある社会を築くため、アイヌの人々が先住民族としての誇りを持ち、これを次世代に継承していくことの大切さを感じる端緒となるでしょう。

隅々まで見て-ウポポイのこだわり

博物館の写真

アイヌ語で「(おおぜいで) 歌うこと」を意味するウポポイ。各施設には、第一言語であるアイヌ語の名称があります。また、ウポポイを訪れたら博物館の屋根を見上げてみてください。アイヌの昔のチセ (家屋) の屋根を支える三脚構造ケトゥンニがモチーフとなっている博物館ロゴマークの一部が描かれています。随所に見られる細かな工夫も、ウポポイの魅力のひとつですね。