日本の農地面積の約4分の1を占め、食料自給率200%を超える北海道は、まさに「日本の食料基地」です。本州などにも農水産品が大量に送られています。その玄関口となるのが港。道外に送られる産品のうち約8割が船で運ばれます。その港整備を担っているのが北海道開発局です。港の整備は物流業界が直面している担い手不足や地球環境問題の解決にも大きな効果を発揮しています。
物流効率化に「モーダルシフト」を
政府は2050年にカーボンニュートラル (脱炭素社会) の実現を目指す方針を打ち出し、温室効果ガス削減などの環境対策は全産業で待ったなしの課題です。これまで物流の主力だったトラック輸送は、運転手の高齢化など労働力の不足に直面していて、環境に優しい貨物輸送への転換 (モーダルシフト) が急務になっています。荷主、物流業者、船舶会社が連携し、多くの企業が海運へのモーダルシフトに取り組んでいます。
CO₂排出量は陸送の6分の1に
環境面で特筆すべきは、同じ重量の貨物を運ぶ際のCO₂排出量が、海上輸送はトラックに比べ約6分の1に低減される点です。物流効率化の面で注目されるのは、フェリー・RORO船 (ロールオン・ロールオフ・シップ。トレーラーが荷台を積み込み下船、着地でトレーラーヘッドだけが乗船して荷台を降ろす貨物船) です。
令和6年からドライバーに対する罰則付き時間外労働の上限規制が始まる陸送業界にとって、ドライバーが乗船中に休息可能な海上輸送は文字通り「渡りに船」。おまけに海上輸送は大量輸送が可能。貨物重量が増えるほど振動が少なく、環境性能だけでなく輸送の品質や安定性に優れます。陸路が寸断される大規模災害時の物流代替ルートやサプライチェーン (商品が消費者に届くまでの一連の生産・流通プロセス) の確保にも役立ちます。実際に北海道胆振東部地震後には物流が混乱しましたが、フェリー・RORO船の海上輸送網は確保されました。
複合一貫輸送の拠点として
貨物がトラック、鉄道、船など複数の輸送手段で中継されながら運ばれる場合でも、中継地で貨物が開封されることなく届けられる輸送を「複合一貫輸送」といいます。RORO船はまさにその要。全道の産地から道内の主要な港に貨物が集まりRORO船等で全国、そして海外へ。港までの高規格道路の整備とともに、拠点港の施設整備も重要です。このため、例えば苫小牧港西港区では、対応する岸壁を整備したり、トラックが安全に走行できるようエプロン (岸壁から繋がる荷さばきスペース) を拡張したりしています。
海上輸送は産出額1兆円を優に超える北海道経済の柱、農畜産物の物流を支える動脈。港湾整備の重要性はますます高まりそうです。