「世界の北海道」実現へ―「食」と「観光」活性化に向け北海道開発局が舞台づくりとコーディネート役に

計画のイメージ
コロナ禍で中間点検を行った第8期総合開発計画

進化する第8期北海道総合開発計画

道外、海外の方たちが感じる北海道の魅力は何だと思いますか ? 雄大な自然と豊かな資源から生まれる「食」と、それらを五感で感じることのできる「観光」を挙げる方が多いのではないでしょうか。

北海道を訪れる方、北海道に移住しようと思う方にとっても「食」と「観光」は重要なキーワードです。しかし、北海道の市町村は本州と比べ人口減少が速いスピードで進んでおり、このままでは地域の活力が失われるおそれがありあます。

平成28年に閣議決定した第8期北海道総合開発計画は、北海道の強みである「食」と「観光」を戦略産業と位置付け、これらを担っている農業や水産業、観光業などの活性化を図りながら「世界の北海道」の実現を目指しています。これらの産業を担う地域のことを、計画では、「生産空間」と呼んでいます。「生産空間」の持続的な発展がこれからの北海道にとって最重要の課題です。

北海道開発局では、事業展開の柱として、「世界の北海道」を実現するために、第8期北海道総合開発計画の着実な推進と、安心・安全を支える強靱で持続可能な国土づくりを掲げています。

第8期北海道総合開発計画は令和2年に中間点検を実施し、3年3月に中間報告書をまとめました。平成28年のスタートから社会経済環境は大きく変わりました。その変化を踏まえて、より力強く「世界の北海道」を目指すことを中間報告書では明記しています。

計画スタート以降の大きな変化は、自然災害の激甚化・頻発化や2050年カーボンニュートラル (脱炭素社会) 宣言、デジタル革命、そして新型コロナウイルスです。中でもコロナ禍は地方経済に深刻な打撃を与え、北海道の強みを支える生産空間の持続的発展に大きなブレーキをかけています。

「新たな日常」先導する地域づくりを

中間点検では「感染拡大防止と社会経済活動両立が必要だが、感染症の影響を受けても『食』と『観光』の強み・魅力は失われない」「『新たな日常』を先導する地域を創出する」と明記しています。

計画に掲げた目標は三つあります。一つ目は「人が輝く地域社会」。東京の一極集中を是正し、分散型の国土づくりを先導していくため、北海道の広大で豊かな自然を活かした「北海道型地域構造」の保持・形成に関わる取組を加速します。

自動運転バスの写真
「生産空間」の持続的な発展に向け、自動運転バスの実証実験が行われました
(令和元年6月、道の駅コスモール大樹)

二つ目は「世界に目を向けた産業」です。安全・安心そして「美味しい」をブランドとする北海道の「食」の付加価値を高め、ワーケーションなど国内外の新たな需要を取り込んだ観光の活性化、そしてアフターコロナを見据え産業の振興を促進します。

三つ目は「強靱で持続可能な国土」の実現です。激甚化・頻発化する災害対応などを充実させるとともに、政府が打ち出した2050年カーボンニュートラルに向け、先進地としての取組を進めます。

千呂露橋の写真
激甚化・頻発化する自然災害に備えて、国土の強靱化は重要なテーマです
(平成28年8月、274号日高町千呂露橋)

今後数年間は地域のサバイバル時代に

北海道の「生産空間」は、我が国全体にとっての「生産空間」でもあります。「生産空間」がこれからもずっとその役割を果たし続け、そこに住む人々が豊かに暮らし続けるためには、産業が元気で雇用が維持されること、住民サービスが行き届いていること、そこに行きたい・住みたいと思われる魅力があること、災害に強い安全で安心な地域であることなど、取り組むべきことはたくさんあります。急速な人口減少・少子高齢化やアフターコロナを見据えると、今後数年間は、地域の生き残りのために非常に重要な時期と言えます。

地域の魅力を向上するため何に取り組んでいくのか、どういうサービスを提供していくのか、各々のまちが、その個性や特徴を生かしつつ、関係者が一丸となって考えていくことがとても重要です。しかし、人口密度が低く、広大な北海道は、市町村が単独で取り組むだけではなく、「圏域」を念頭に、相互が連携協働することも必要です。

市町村が「圏域」として施策を展開する際、関係団体や民間企業が集まることのできる「場づくり」、あるいは「きっかけづくり」が重要です。北海道開発局では、基幹的なインフラの整備をはじめとする様々な取組を進めるとともに、地域が連携する枠組み (プラットフォーム) のコーディネーターとして、「北海道価値創造パートナーシップ会議」を各地で展開しています。

パートナーシップ会議を通じて、様々な分野の方が意見を交わし、連携・協働することで、北海道の新たな価値を創造していく。新たな価値は、新たな発想と取組を更に促します。全国市町村との競争の中で生き残り、「世界の北海道」を実現するために、北海道開発局は、これからも皆さまと共に歩んでいきたいと思います。

じゃがいもの写真
羊蹄山の写真

「食」と「観光」という強みを発揮するために、北海道開発局の役割はますます重要となります

生産空間の維持・発展を図りながら「世界の北海道」へ

―倉内公嘉局長から皆さまへのメッセージ

局長の写真

北海道開発局は令和3年7月、設立70年を迎えました。北海道は明治維新後、政府により開拓事業が進められてきました。戦後は、食糧の増産やエネルギー確保、人口問題の解決などを目的とした北海道開発法が施行され、昭和26年に北海道総合開発計画を推進する直轄事業の実施機関として北海道開発局が設置されました。

北海道開発局設置後は、北海道の地域開発のために、道路や治水、港湾、空港、漁港、農業基盤などのインフラ整備を集中的に行ってきました。その結果、食糧生産は飛躍的に伸び、経済の活性化が図られ、明治期に比べ大幅な人口増という成果を上げてきました。我が国の経済成長と国民の豊かな暮らしを北海道が支え続けてきた、と言えます。

戦後まもなくスタートした篠津地域泥炭地開発や国道36号弾丸道路、そして苫小牧港建設など、北海道の歴史は土木とともにあり、当時の技術者の高邁な理想には頭が下がる思いです。

昭和、平成、令和と移り変わる中、北海道開発は時代の要請に応えてきました。

折り返しを迎えた第8期北海道総合開発計画では「世界の北海道」をキャチフレーズに掲げ、「食」と「観光」を北海道の強みと位置付け、これらを支える基盤整備を積極的に推進しています。

我が国はもとより、世界的にコロナ禍が深刻化し、自然災害も激甚化・頻発化しています。そうした中、北海道という生産空間を維持・発展させ、北海道の強みをより効果的に発揮するための国土強靱化の取組を更に進め、そしてアフターコロナを念頭に置いた「新しい日常」を北海道が先導するためにも、北海道開発の役割は一層重要になっていると考えます。

北海道開発局などが進めてきた基盤整備事業は、暮らしと産業に欠かせないものです。皆さんに、こうしたプロジェクトをより身近なものとして知っていただくために、北海道開発局特設ホームページに掲載する「北海道開発70年のあゆみ」では、プロジェクトの背景や効果などを分かりやすい表現でまとめ掲載しています。日常に何気なく使っているインフラには、歴史とドラマがあり、技術者の熱意が込められている、ということを分かっていただければと思います。

また、学校教育の場でも、教材として活用していただけば、子供たちが北海道をもっと知り、「北海道愛」が育まれ、北海道を更に飛躍させる人材となるきっかけになるのでは、と期待しています。ぜひ、先代たちが挑戦し、成し遂げた数々のプロジェクトをご覧になってください。