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第2回湿原再生小委員会 議事要旨

第2回(平成16年6月24日)

  • 釧路湿原

第2回湿原再生小委員会 議事要旨

広里地区の湿原再生について

 広里地区の湿原再生計画、既往の調査検討結果、今後の調査検討方針の説明が事務局より行われた。

(委員)
広里のイメージは、タンチョウだけでなく湿性草原の渡り鳥などが暮らすとても良い環境である。農地跡地といっても他の地域で見られる跡地とは異なって、ミゾソバなどの湿性植物が今の環境に順応するように生えている。一般から見れば再生する必要がなぜあるのかがわからない。
タンチョウを守りたいという人間の立場から言うと、タンチョウにとってヨシ原は営巣場所に適した場所であるが、採餌場所としては良い環境ではない。広里のタンチョウは農地跡でカエルやオカモノアラガイなどを餌にし、旧雪裡川でマルタニシなどを餌にしている。ここをヨシ原のみの環境にしてしまうと、タンチョウや他の渡り鳥は暮らせなくなる。
広里に住んでいる動物のことを考えずにゴールを決めて一途に進むと言うことは良くない。湿原再生小委員会には専門家の人々が集まっているのであるから、それぞれの立場でこの広里をどうすれば良いか話し合って目標を想定すべきである。ここに生息する動植物の現在の生態系にも配慮しながら、このまま放置した場合にはどうなるかも調べて目標を設定するべきである。

(事務局)
環境省が自然再生を考える場合は、国立公園もしくは近接したあたりということになる。農地区域については人為的な影響があるということは明確である。広里で再生をはじめるにあたり、実験的、パイロット的に実施することを実務会合で了解いただいた。また、生物への影響は、今後当然調査すべきと考えている。
広里地区については、釧路川を直線化した時の堤防整備による雪裡川の分断や、明渠排水路整備を行った時の地下水の変動による生態系の変化など、人為によって変わった生態系であるということを理解いただけると思う。その人為を取り除くことによって、元の湿原の生態系をとり戻すということが、まずは一番大きな目的である。そこで、水位低下により生態系が変化したのであれば、水位を上げてみるなど実験的に行っていくとともに、モニタリングも合わせて実施していきたいと思っている。
当初の目標である1960年代以前に戻そうとしている状態とは違う結果になれば、その時点でもう一度やり方を考え直すということも必要になってくると思う。

(委員)
何のために再生を行うかということに関係するが、タンチョウが営巣しているような場所が農地ならばそのままの農地でよいのか。タンチョウのために農地を多くつくればよいのではないかという話にもなる。要は広里の現状が1960年代の雪裡川の分断により人間が農地化し、放棄されそのままになっている。その部分をタンチョウが営巣するので何も手を入れずにそのまま放っておいてよいのか。これは多分当事者だけで考えるのではなく、流域住民がどうしたいのかという部分で決めなければならないと思う。

(委員)
広里は面白いところで、普通の放棄した農地と違い、湿性の植物が多く生えており、生物が多様に暮らせる面白い環境をつくり出していると思う。生物の多様性を守るのであれば、この状態で守ってもよいのではないかという発想をしてもよいと思う。広里地区をどうするのか、基本的には目標は皆で決めるべきだとは思っている。

(委員)
広里の農地跡地全体の将来像をこれから具体的に描いていくが、湿原の植物に関して言えば、農地開発前の元々生えていた湿原の植物が多く戻ってくるようなものを目指していきたい。その中でタンチョウと共存していくためには、タンチョウの専門家や湿原植物の専門家の人の意見を聞きながら広里の将来像を具体的に描いていきたいと思う。

(委員)
植生の復元が目標であるという話と、タンチョウを目標に入れるという話は基本的に噛み合わない。まず60年代のタンチョウなどはどうだったのかという推定と、湛水試験を行った場合のシミュレーションを行わないと議論のしようがない。
タンチョウについてここで取り上げるのか、タンチョウは気にしないで植生のパイロットで押し通すのかという選択と、タンチョウがどうなるのかという調査方法が具体的に出ないとわからないのではないのか。

(委員長)
次回、広里に生息・分布している野生生物についての調査データも併せて公開していただいて、それを検討の材料にしながら議論していきたい。

幌呂川地区の湿原再生について

 幌呂川地区の湿原再生計画、既往の調査検討結果、今後の調査検討方針、関連する農業事業調査の説明が事務局より行われた。

(委員)
幌呂川地区については、雪裡川との合流点から東側の方に流れている箇所が、おそらく河川の切り替えによってハンノキが増加しているという状況にあり、これをどうするのかということが第1の問題であると思う。しかし、現在設定されている対象区は、ハンノキが減少している地域のようであり、問題の認識と再生の対象地区の設定がおかしいのではないのか。

(事務局)
ハンノキの増減については航空写真等で把握しており、それが何に起因しているのか検討していきたいと考えている。区域の扱いについては、今後検討していきたい。

(委員)
提言策定当時の区域の取り方の発想は、過去に農地開発されたが、現在は未利用のところを色々取り入れていったということだが、当時は当該箇所のハンノキの増減データを十分押さえていなかったと思う。合流点から下流側が問題となれば、検討エリアを広げ、検討の対象としなければならないと感じている。

(委員)
幌呂川の東側でハンノキが増加している要因としては、幌呂川よりも、この何十年かで直線化が進んだ雪裡川の影響が大きいと思っている。
なぜ幌呂川地区なのかは、ハンノキの増減ということよりも、赤沼への影響ということが大きいと思う。旧幌呂川から赤沼への水の供給が現状では非常に少なく、その水を取り戻そうというのが1つの目的になっている。

(委員)
比較的多様な自然生態系を有している農業排水路における環境配慮計画の具体的な内容は何か。湿原に対する大きなインパクトの原因ではないかと認識している。特に今後環境に配慮してという文言を述べる以上、しっかりしたものをつくってもらいたい。
農業事業区域の面積が大きいので、むしろ、広里地区よりも再生に関する配慮が必要ではないかと思う。また、地元意見交換会などでの農家の意見として、自分たちの強い要望により農業事業が推進されているのではなく、湿原に対して悪者になっている立場を懸念している。

(事務局)
農地区域内の事業であり、排水路は比較的自然豊かな状態で、現状の植生や魚類等を調査して、より好ましい護岸工法を検討していくことを考えている。

(委員)
今後、農業整備事業として湿原環境との調和を具体的にどのように行っていくのか。

(事務局)
農地からの土砂流出の防止や栄養塩を押さえるなど当地域も土砂流出対策に取り組んでいく。具体的には土砂などの流入流出量を検討して、本流に流入する前に押さえるための沈砂池の整備や、排水路沿いに水辺林を整備して栄養塩の流出を防ぐなどの工夫をしていくことを考えている。

(委員長)
農地改良した場合の地下水位や栄養塩類などがその箇所から外にどの程度の影響を与えるのか。例えばどの程度の水量が出ていくかなどの調査を行っていくものとする。

(委員)
湿原再生で基本的な問題となっている農業エリアと湿原エリアのゾーニングについて、広里や幌呂でも農業放棄地を対象として湿原化を行う計画である。農地としての実現の必要性、技術的可能性、経済的妥当性ということに関しての情報を詳細に提供願いたい。

(委員)
農業事業では排水をうまく行い、湛水被害をなくすために、水位を下げるようなことをこの区域の中でやるということなのか。

(事務局)
基本的には湿原の水位を維持しながらどのように農地排水を行うか、周辺の状況を踏まえながら、また分析可能なのかということを見極めながら実施していく。土地利用の面からも地元と十分調整しながら進めていかなければならないと認識している。

雪裡樋門地区の湿原再生について

 雪裡樋門地区の試験湛水の目的と概要、既往の調査検討結果、今後の調査検討方針の説明が事務局より行われた。

(委員)
この地区の昔の水位の状況を知りたい。昔の状況に戻す試験でないなら、これだけ大きな範囲を湛水して試験するのは危険なような気もする。水位上昇のメリットだけでなく、デメリットも調べてほしい。例えば水質などは変化しているはず。

(事務局)
試験は、植生などが湛水によってどのような影響を受け回復をするのかということを調べるため、この地区の土地利用、生活環境などに影響のない範囲で実施した。この結果を、今後湿原全体で活かしていきたい。将来的に安原地区をどうするのかは、今後検討していきたい。
デメリットは、現状で行った調査を十分分析し、今後の植生の回復、再生に向けて整理していきたい。

(委員)
湿原の水位低下の植生変化は、想像つくが、水位が高くなったときのデータはほとんどないので詳しくとられるとよい。

全体を通しての意見

(委員)
基本的に湿原の問題として河川がいま死んでいるということで、広里についても雪裡川の水と水位をどうするかという基本的な問題が触れられていない。幌呂川についても雪裡川と合流した部分から一部通水をすべきとの意見が以前から出ており、行えば環境がよくなるのは目に見えているという意見が大多数であった。湿原全体の将来展望として河川の復活を考えてもらいたい。

(委員)
湿原の東側の河川を念頭に置いての発言だと思う。分断された釧路川の管理者である釧路土木現業所は、ここの通水問題については、水が少ない状態が何十年も続く自然の環境となっているので、積極的な導水ということまでは考えていない。また、新しく水が流れ出すことに漁業関係者からもできれば流してほしくないという要望を受け取ったことがあり、話し合いが停滞している。

(委員)
旧雪裡川の水位を上げる1つの選択肢として導水ができないかと思っている。利水、治水の問題、下流の漁業の問題等との調整は、関係機関や団体と協議しながら、引き続き追求していきたい。
安原地区については、ニホンザリガニの生息地としても非常に重要な場所であるので、湧水環境の保全や再生は重要なテーマだと思う。環境省の研究成果も踏まえ議論のテーマに加えていきたい。

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