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第7回水循環小委員会 議事要旨

第7回(平成20年1月17日)

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第7回水循環小委員会 議事要旨

議事1:水循環小委員会での検討の目的

 事務局より、水循環小委員会での検討の目的について説明が行われた後、内容について協議が行われた。

(委員長)
事務局としては、地下水が重要な役割を果たしているということで、湿原全体を対象に検討を行うにあたり、水循環の中でも特に地下水の動きを明確に把握しようということだと思う。
その特性を把握した上で、1980年以前の地下水位の推定および将来の地下水位の予測を行う。これを行うためには、数値シミュレーションが必要だということが資料で示された。
目標設定の妥当性、目標達成のための手法について、質問や意見があればお願いしたい。

(委員)
地下水位シミュレーションが重要な手法だということになっている。確かに、三つの目標を達成していくためにはこのような広域的な捉え方は大事だと思う。
その一方で、シミュレーションに着手する前に、観測結果を十分に解析することが大事である。各観測地点において、湿原のどのような水文状態を観測しているのか把握しておかなければ、単に広域的な水の流れを把握するだけで終わってしまう恐れがある。
ひとつ目の目標として、「望ましい地下水位の保全」が挙げられているが、湿原は多様であり、それぞれに望ましい地下水位があると思う。その対応関係を十分に把握した上でシミュレーションを行うことが必要である。

(委員長)
私も同じ考えであるが、釧路湿原の水環境を見出すためには、大まかな水の動きを把握し、その上で細部について検討を行っていくという方法もある。
各地域の特性を十分に把握し、単にシミュレーションの入力問題として取り扱うのではなく、物理的に解釈してシミュレーションの中に取り込んでいくという方法もある。
私としては、最初に大まかな地下水と河川水の流れ、河川水位と地下水位の相関を把握したいと考えている。
その後、例えば、久著呂川のように土砂流出により河床の変動が激しくなり、相対的に地下水位が低下し、これによりハンノキが侵入してくるということも解釈できるようになる。
委員の方々に、基本的な湿原の地下水の流れ方をイメージしていただきたいと考えて、事務局として今回のような案を提案したものと理解している。

(委員)
「地下水位を推定する」とあるが、泥炭地の特性を示すものは、地下水位の変動状況である。したがって、「地下水位の状況を推定する」と表現したほうがよい。
1980年以前に戻すという目標には疑問に思う。地下水位だけが変化したのであればよいが、地下水位が変化することで泥炭地の状況も変化しており、それを戻すというのは無理なのではないか。
「湿原再生」とあるが、これは再生ではなく、新しい湿原をつくると考えた方が現実的である。
モデルの模式図が示されているが、湿原の中では成り立たないと思う。泥炭の中の地下水の流れや地質にはムラがあり、河川跡もあることから、泥炭地においてモデルの模式化を行う場合は困難を伴う。十分な検討が必要である。

(委員長)
1980以前の状態に戻すという目標は、釧路湿原自然再生協議会の目標である。
ご指摘があったとおり、湿原周辺の土地利用が極端に変化し、湿原が変化してきている。単に地下水位を1980年の状態に戻すということが適切なことなのか疑問な点もあるが、それは今後この小委員会で検討し、決定していくことだと思う。
地下水位シミュレーションの模式図は、一般論として描いたものだと思う。過去の勉強会で、湿原には非常に多くの旧河川があり、地質が非常に複雑で、地下水がすぐには流れていかないことが示された。
釧路湿原は皿を敷き詰めたようになっており、上の皿が満たされると次の皿へ流れるという水の流れ方であり、貯留と流動の関係が難しいということを勉強会で学んだ。
勉強会で学んだことを考慮してシミュレーションのモデル化を行っていきたいというのが事務局の考えで、それを完璧に実現できるかどうかはこれからのことだと思う。
過去三回の勉強会で、講師の先生方から湿原地下水の流れ方の難しさを教えていただいた。勉強会でご教授いただいたことを取り入れてモデル化すべきだと考えている。
また、先ほど委員から「地下水位を推定する」のではなく、「地下水位の状況を推定する」とした方が良いというご指摘があったが、私も賛成である。

(事務局)
事務局としても、地下水位の変動状況を時系列で把握すべきだと考えているので、ご指摘を踏まえて表現を修正する。

(委員長)
これまでに、当小委員会で色々な知見、知識を得た。その知見、知識を適用して地下水位シミュレーション、または水循環シミュレーションを完成させていこうと考えている。

(委員)
1980年以前の状態を推定するためにシミュレーションを行っていくという話だが、1980年以前の地下水位データが無いため、シミュレーションという手法を採用して取り組んでいくという考えを明確にしておいた方がよいと思う。

(事務局)
釧路湿原の保全の目標である1980年以前の状態として、当時の地下水位を把握することが必要だと考えている。
1980年以前の地下水位の観測データが無いため、シミュレーションという手法を採用して1980年以前の地下水位の状況を把握したいと考えている。これにより、具体的な目標値を設定することが可能となり、湿原保全のための施策を立案しやすくなる。
また、シミュレーションモデルを構築することで、将来の予測も可能になる。
以上のことから、シミュレーションを有力な手法のひとつとして考えている。

(委員長)
過去の勉強会で、釧路湿原では上の皿から下の皿へ水が流れるように地下水が流れているため、一般的なダルシー則では地下水の流れ方を再現することができないというお話をいただいた。
その場合、有限要素的な考えで、要素を区切って各要素の透水係数を設定して計算する方法では釧路湿原の地下水流動をうまく表現できない。タンクモデルの方が再現性が良さそうに感じるが、如何か。

(委員)
私もタンクモデルがよいと思う。
今日の資料では、非常に深いところまで地下水の流れを取り扱うことにしているようであるが、浅層の地下水と深層の地下水が連動しているのかチェックした方がよい。

(委員長)
データを分析し、浅層地下水と深層地下水に相関があるのか、ふたつに分けて解析できるのか検討した方がよい。
また、有限要素の解析だけにこだわるのではなく、タンクモデルなど、違う方法も考慮し、検討を行って頂きたい。

(委員)
水位が高いときと低いときで地下水の流況は変化する。
水位が高いときは上の皿から下の皿へ水が流れるような状態になるが、水位が低いときはその皿の間だけを流れるような状態となる。この状態をモデルに取り込む場合、タンクモデルであれば可能だと思う。

(委員)
ご提案のようにタンクモデルでの検討も併せて行うべきだと考えている。
等水位線が多数示されているが、これは言い換えれば等ポテンシャル線でもあるので、一連の水の流れとは言い切れないと思う。このことを十分に把握しておくことが必要である。また、そのためには、水位だけではなく、水質や水温、地質、微地形など様々な要素をもう少し細かく分析した方がよいと思う。

(委員)
釧路湿原は、色々な水の現象が同時進行的に起こっている場所だと考えている。
高層湿原では、地下水と地表水が同じような時間的・平面的スケールで流動するが、低層湿原では、深層の圧力が加わった地下水の流れは非常に緩慢で、広域的な色々な条件のもとで流動している。
さらに、浅層の圧力が加わっていない地下水の流れは、河川など地表水の流れの影響を如実に受けている。
洪水が生じると、河川水は二日程度で引くが、釧路湿原の不圧地下水は一ヶ月くらい水が引かない。そういった影響は、深層の地下水にはもっと長い時間をかけて及んでいく。
したがって、モデル化する段階では、釧路湿原でどのような現象が生じているのか見極めてモデルの選定を行っていく必要がある。

(委員長)
モデル化をするときには、この委員会が活発に意見を言い、観測値を十分に解析した上で、湿原の状態を十分に表し得るモデル化ということをねらって行っていく。
これにより得た結果は、例えば旧川復元小委員会の基礎資料にもなり得ることから、モデル化について検討した場合は、必ずこの小委員会に諮り、各委員の意見を踏まえて修正していくというのが、本日出された意見のまとめになると思う。

(事務局)
モデル化については、釧路湿原全体に活用することができるようになることから、この小委員会でオーソライズをとりながら進めていきたいと考えている。

議事2:第6回水循環小委員会資料【改訂版】について

 事務局より、第6回水循環小委員会資料【改訂版】について説明が行われた後、内容について協議が行われた。

(委員長)
第6回水循環小委員会では、地下水位コンター図は平均値のみ示したが、季節的な変動も示すべきという意見を踏まえて、より深く地下水位の特性を理解頂くため、本日示したものである。

(委員)
釧路川本川の湿原流入部においてコンター線が密になる理由として、「地下水位観測施設が他地区より密に配置されているため」と示されているが、これはいささか科学的ではない。
先ほどから議論されているように、湿原の地下水位が複雑であることを示していると感じている。さらに考察を加えていくことが必要である。
今回の資料により、かなり季節変化を把握することができたが、降水量と河川水位のグラフに地下水位の変動を示して頂きたい。これにより、一年を通してどのような水位変動が生じているのか把握したいと考えている。

(事務局)
今後、各地点の地下水位と流域平均降水量を併記したグラフを準備したい。

(委員)
委員が指摘のとおり、密に観測すればコンターが密になるという説明は対外的にはおかしいと思う。実際のところは、密に観測すれば湿原の様々な態様が判ることになり、このようにならざるを得ないのだろう。
例えば、今日の資料ではコッタロ湿原にコンター線が一本も描かれていない。これはコッタロ湿原で観測を行っていないためであるが、コッタロ湿原の中にも色々な地下水位の変動パターンがあるはずである。
また、河川近傍の地点の水位変動が大きくなっているのは、河川の水位変動の影響を受けているためであろう。
さらに、赤沼周辺、赤沼と達古武の間が冠水していない図となっているが、この間の観測点は一地点しかない。冠水していないかもしれないし、水位が地表面付近に分布しているのかもしれない。
地下水位の分析が観測地点の数に左右されてしまう。この後の解析が大変であるが、使い方をよく議論することが必要。

(委員)
地下水位の変動は、赤沼周辺など、いくつか代表的な地点のデータをグラフに入れると理解しやすくなる。
地下水位の変動をグラフ化する際、冬期間の土壌の凍結状態を記録しておかなければ誤解を生じる恐れがある。
冬期間は、コンクリート状凍結である。私の経験では 7月10日を過ぎても赤沼周辺で下位に氷があったということもあり、「凍結」を観測項目に加えた方がよい。

(事務局)
「凍結」という観点は不足していたので、検討したい。

(委員長)
地下水位の観測地点数によりかなり解釈が変わるが、地点数とコンター線が密になることの関係については、物理現象と関係ないことがうたわれていて誤解を招く。文章を推敲して不適な記載は削除して頂きたい。
また、観測地点数により解釈が左右される場合は、観測地点の配置計画についても再度検討した方がよいと思う。

(委員)
「地下水位が地表面より低く、水位変動量が小さいという特徴を持つ高層湿原が分布しているため」という記載があるが、因果関係が逆なのではないか。地下水位の変動量が小さいために、結果的に高層湿原になったものと考えている。
季節別の水位変動状況など、地下水位については随分整理されてきたと思う。今後、地下水位の変動状況と湿原植生の関係などを検討していく予定があるのか確認したい。

(事務局)
今後モデル化を行う際、久著呂川に着目して行っていくことを考えている。モデル化を行いつつ、同時に久著呂川の植生についても考察を加えていくことを考えていた。
最初は湿原全体ではなく、対象を絞って検討していくことを考えている。

(委員)
望ましい地下水位を目指すことになっているが、自然再生の目標はあくまで1980年以前の湿原の環境や景観を少しでも実現していくことである。
地下水位を1980年以前の望ましい姿に戻すのは、あくまで自然再生のための手段である。地下水位を1980年以前の望ましい姿にすることで湿原がどのように変化するのか検討しておかなければ、最終的なゴールにはならないと思う。
地下水位の変動と湿原環境の関係については、モデルで計算するというわけにはいかないので、観測データを分析して整理しておいた方がよいと思う。

(事務局)
「湿原再生小委員会」において幌呂地区の湿原再生について検討を行っている。課題等を整理する過程で、過去の地下水位のデータと植生の変遷を比較し、検討を行っている。
当小委員会では示していないが、作業を全く行っていないということではない。

(委員)
赤沼周辺は、単純に地形が高かったから冠水しなかったということである。このため、赤沼周辺は過去と同じように高層湿原を保っていると理解すればよいと思う。
私の理解では、赤沼周辺の地下水位は雨にだけ対応している。あまり難しく考えず、もっと単純に考えた方がよい。

(事務局)
地下水位の変動と高層湿原であることの因果関係が逆だというご指摘のとおりと考えており、修正したい。

(委員長)
考えた状況は同じだと思うが、文章が少しずれてしまっているので、文章の推敲を重ねて頂きたい。

(委員)
湿原中心部で水位変動量が小さく、この理由として高層湿原が分布していたからだと示されているが、これは修正した方がよいと思う。高層湿原が分布しているのも理由のひとつであるが、河川氾濫の影響を受けない低層湿原があることも理由のひとつだと思うので、そのことを加筆してはどうか。

(委員)
ヨシは生長が早いために高くなり、水がつかないということがある。いきなり高層湿原だと言わない方がよいと思う。

議事3:地下水位シミュレーションの実施について

 事務局より、地下水位シミュレーションの実施について説明が行われた後、内容について協議が行われた。

(委員)
一部の箇所を対象として解析手法等の検討を行い、その結果にしたがって全体の検討を行っていくというのはおかしいと思う。
少なくとも、解析手法についてはマクロな視点で概略の検討を行い、その上で部分的な解析を行うという手順の方がよいと思う。
一部の箇所を対象に三次元で検討し、全体を対象とする場合はタンクモデルで行うということになれば、それは無駄なことである。
全体を対象に解析手法の検討を行い、大まかな水の流れを把握することが先決だと思う。

(事務局)
現在モデルの選定を行っているところであるが、採用したモデルで計算を行い、モデルの妥当性について検討したいと考えている。
最初から全体を対象とすると複雑になるので、まずは小流域を対象に地表水と地下水の関係などを詳細に検討し、その上で対象を流域全体に拡げていくことを考えている。
まずは小流域を対象に行い、モデルの精度を高めていきたいと考えている。

(委員)
小流域を対象に検討して正しい結果が出たとしても、全体を対象に検討した場合は結果が異なることもあり得る。
資料に示されている水理地質構造であれば、入力の手間は掛かるが、計算自体は難しい話ではない。
全体を対象に検討を行い、それにあった解析手法を固定し、狭い地域の解析も同じ手法で行うというのが筋ではないか。

(事務局)
モデルの手法を固めて、その上で細かいところを検討していくというのは、やり方として当然のことだと考えているが、現在、モデルの手法を固める過程で、様々な課題がある状況である。
例えば、これまでに取得したデータから、釧路湿原の水の流れを把握するためには、地表流と地下水の流れを一体的に解くということが欠かせない事項だと考えている。
地表流と地下水流の式の取り扱いを考えると、両者の式の形が異なる。これらを結びつけて計算できる手法を検討しているところであるが、理論を含めて妥当性を検討する際、最初から全体を対象とすると非常に時間がかかるため、順番に小さいところから検討し、積み上げていきたいと考えている。
事務局としては、今いただいたご指摘の前段だという認識で進めているところである。

(委員)
目的を達成するために、小さいところからスタートするという事務局の考え方は妥当だと思う。
現在、沼幌から久著呂川にかけて農地防災事業を行っているところであるが、そのような中で一番注目されているのが久著呂川だと思う。農地開発による土砂の流入、水質汚濁などが懸念されるところであるが、小流域であれば色々なサンプリングが可能になる。
小流域における検討で目的が達成された場合は、その次の河川、または下流側の湿原ではどのような変化が生じていくのか、順次検討を進めていくことで当小委員会が求めている主たる目標を達成することができると思う。

(委員長)
小流域での検討は、単にモデルが正しく動くかどうか検証するだけではなく、これが終われば順次範囲を広げていくことを考えている。
水平方向と深度方向の解析メッシュの間隔に大きな差が生じると、シミュレーションが壊れてしまう。
解析範囲を小さくとり、対象範囲を連続して動かして全体を解いていくという手法がある。
小さい範囲であれば、計算時間が少なくて済み、データの比較が容易で、次の物質移動についても説明ができる結果になると考えて、事務局は今回の方法を提案していると思われる。
また、小さい範囲であればデータも取りやすい。入力データの精度によりデータの出力が変わるが、小さい範囲であれば計算を行いやすく、検証も行いやすい。その上、全域に広げることができる方法だと私は理解した。

(委員)
久著呂川流域をモデル流域として選定するとあるが、もっと手前から検討してはどうか。
各地点の河川水位や地下水位の変動のグラフが示されているが、各地点でこれらを再現することができるのか、試行錯誤した上でモデルを慎重に決めていく必要があると思う。
観測地点により地下水位の挙動が全く異なることを示した図があった。流域全体は一元的になると考えられるような対象ではないと思う。
まして低層湿原では透水係数は一定ではない。まずは各観測地点でこのような挙動をするか確かめ、その上でモデル流域を選定した方がよいと思う。

(委員)
いま想定されているモデルは、特定のモデルを考えているのか、あるいは複数のモデルで確かめてみようとしているのか。

(事務局)
いくつかの手法を探り、GETFLOWSという手法で行うことができないか検討を進めていたが、釧路湿原に適用するためにはクリアしなくてはならない課題があるため、今日の資料には示さなかった。
手法が複数あるのであれば、これから比較検討を進めていきたいと考えている。

(委員)
委員がサロベツ湿原の狭い範囲で地表流のモデルをつくっておられ、私は再現性が良いと考えている。そのようなモデルも検討に加えていただければと思う。

(事務局)
色々教えていただきたいと考えている。メリットとデメリットを整理し、他の手法と比較していきたいと考えているので、知恵を貸していただきたい。

(委員)
考慮する条件が資料に示されているが、感潮域であるという特徴を示すものが入っていないが、広里地点の河川水位の変動を見ると、大潮、小潮の影響が水位にあらわれており、釧路湿原は潮汐の影響を受けていることになる。
地下水位を合わせる場合は問題とならないかもしれないが、物質循環を検討する場合は非線形な効果で残渣が生じ、物質がある特殊な運ばれ方をする。
したがって、感潮域の特徴を考慮するモデルを付け加える必要があると思う。
久著呂川は感潮域から外れているので問題はないが、場所を変えて検討していくという話もあった。場所によっては、感潮域の特徴を考慮したモデルを加えて試していくという考えであればよいと思う。

(事務局)
感潮域については、条件としての分析を行っておらず、モデル化を行っていく過程で検討していきたい。

(委員長)
感潮域の特徴を、水位の変化として境界条件を与えることが考えられる。
ただし地下水位の場合は、塩水が入ってくると密度流になる。感潮が強くなければあまり拡散しないが、難しい問題となる。
潮汐の影響が顕著なところは、淡水と塩水を区分して潮汐の影響を考慮する必要があるかもしれない。そのような影響を考慮するのか、単純に海水準の変化を境界条件として与えればよいのか、それは試してみないと分からない。

(委員)
塩水の影響は気になるところである。過去の勉強会においても、ハンノキの分布は塩水の影響を受けているのではないかという意見も出されている。
感潮域の影響まで踏まえたモデルになることを望みたい。

(委員長)
事務局から示されたモデル化については、これが決まったら一切変えずに結論を出すということではなく、順次やり方や結果を当小委員会で示してもらい、各委員の知見をその中に導入して変えていくことになる。

(委員)
湿原のモデルに三次元モデルを適用する必要があるのか疑問である。
水理地質図を示し、複雑であることが示されているが、一元的に扱うのは危険ではないか。
それぞれが別のスケールで動いた水の現象であることから、深層地下水は分けて考えて、実際に動く水は浅い地下水と表面流を組み合わせたものと考えた方が現象を正確に捉えやすいのではないか。
1980年以前の状態に戻すという目標があるが、深層地下水の境界条件としてはそれほど大きな変化はないと考えている。
浅い地下水の挙動が変化してハンノキの分布の変化などの問題が生じている。それは地表の改変により地表流の流れ方が変化し、その影響が不圧地下水に及んだ結果だと考えている。少なくとも、深層地下水と浅層地下水は切り離してよいのではないか。

(委員長)
最初から三次元解析ありきではなく、二次元で浅層の地下水を表したらどうなるのか検証することにより、三次元解析を行う上でも状況が良くなるというご意見だと思う。

(事務局)
いまご指摘いただいたやり方については、これから検討し、その上で計算を行う前に手法を示したいと考えている。

(委員長)
釧路湿原と同じような湿原の形成で、苫小牧地方に勇払原野がある。勇払原野では、火山灰が帯水層を形成している。地層の変化があまりないので、二次元で解析を行うことで明快に現実の地下水の流れを説明することができた。
水理地質構造を図にすると単純そうであるが、勇払原野で適用できたモデルを用いて釧路湿原を対象に解析を行うと、地質構造の複雑さのために釧路湿原では全く適用することができなかった。
深度方向に積分したものがある値に集中すれば二次元で解くことが可能であるが、釧路湿原ではそれは当てはまらない。私としては、困難ではあるが三次元の方がよいと思う。
浅層地下水の厚さがそれほど厚くなく、卓越した水の流れを解くのであれば2次元で十分だと思うが、透水係数をどのように分布させれば良いのか、私自身が明確な基準を持っていない。
ただし、いまの委員のご指摘も踏まえ、三次元で行う前に二次元で行った方がきっちりとした結果がでると思う。

(事務局)
浅層の厚さなど、湿原の物理条件に合うのかという問題もあると思う。モデルの特徴と湿原の物理条件を比較し、必要に応じて計算を行わせて頂きたい。

(委員)
シミュレーションに関しては、小委員会の中にワーキングをつくるか、業務の中に検討会をつくるなどして綿密に検討してはどうか。

(委員長)
私自身もそのことを考えていたが、当小委員会が協議会のワーキンググループであり、その中にワーキングをつくることについては如何なものかと気にしていた。
しかし、いま委員から提案されたことを踏まえ、シミュレーションを行うのであれば、やはりワーキングをつくった方がよいと思う。この会議の中で全ての意見を吸い上げるのは不可能だと思う。
どのような形でも構わないが、ワーキングについて事務局として検討して頂きたい。

(事務局)
専門家や学識者の方による技術的な話になると考えられることから、どのような形式になるかは分からないが、細かい内容から相談できる場を設けたいと思う。
そこである程度の方向性をつかむことができた段階で、小委員会で議論いただくということを考えていきたい。

(委員長)
水循環小委員会でワーキングをつくるか、もしくは開発局の業務として検討委員会を設置し、地下水位シミュレーションのモデル化について討議することについて、委員会としてお認め頂きたい(「異議なし」との発言あり)。
ワーキングをつくることについて委員会として承認されたので、事務局としてどちらかの形でワーキングの設定をお願いしたい。

議事4:今後の調査・検討予定

 事務局より、今後の調査・検討予定について説明が行われた。

(委員長)
特に意見が無ければ、本日の小委員会はこれで閉じたいと思う。

その他

 事務局より、年度内に次回の釧路湿原自然再生協議会を開催する予定であることが説明された。

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