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第6回湿原再生小委員会 議事要旨

第6回(平成22年9月2日)

  • 釧路湿原

第6回湿原再生小委員会 開催要旨

議事1:幌呂地区湿原再生について

 事務局より、幌呂地区湿原再生について説明が行われた後、内容について協議が行われた。

(委員)
○ 湿原再生の目標とするリファレンスサイトの状況をもう少し詳しく説明してもらいたい。

(事務局)
○ A区域のリファレンスサイトであるB区域の植生は、ハンノキが大部分を占めており、その中に一部ヨシ、ホザキシモツケ、ヤナギ等が生育している。地下水面の平均的な深さは、地表面から20センチメートル程度となっている。

(委員)
○ 広里地区でも掘り下げ試験を行っている。
○ 湿原を再生することについて適切な表現が無かったということなのかもしれないが、A区域、B区域、C区域ともに、地下水位変動幅が大きいため、平均地下水位はリファレンスサイトと同じ傾向にあっても、このような地下水位変動幅では湿原と呼ばれるような群落は難しいと思う。
○ A区域のリファレンスサイトとしているB区域を湿原と表現するのは、植物生態学の観点からは厳しいのではないか。
○ 言葉の問題だとすると、日本ではまだ定着していないが、湿原に該当する湿生自然草原ではなく、湿生二次草原と言われるホザキシモツケやナガボノシロワレモコウといった高茎湿生草原の再生と表現すれば、整合性が出てくると思う。
○ 泥炭地としての湿原と言うと、「低層湿原」や「高層湿原」しかないが、そのような湿原のイメージにはならない。
○ ただし、農地と湿原の境界部分に、高茎湿生草原のような群落があることは自然再生を行う上で十分な意味を持つと思う。
誤解を招かないような表現を用いることが大切である。
○ 平均地下水位だけではなく、水位変動を考慮することが必要である。

(委員長)
○ 「湿原再生」と4文字で表現するのではなく、どのような湿原植生を再生するのか正確に表現すべきで、例えば高茎湿生草原や湿生二次草原を再生すると表現した方がより的確だというご指摘である。
○ 地下水位については、平均値だけではなく、変動幅についても注目する必要があるということである。

(委員)
○ 「冠水頻度の減少」が幌呂地区における変化の原因の1つとして挙げられているが、これについてもなにか対策が必要ではないか。
○ 広里地区の掘り下げ試験の結果も参考にした方が良いのではないか。
○ 現地植生回復試験の方法であるが、試験区が連続した状態では、浅い試験区から深い試験区へ表流水が流れ込むことになる。表流水のことが考慮されていないのであれば、今後考慮された方が良いと思う。

(委員)
○ 排水路や河川が近くにある場合、地下水位の変動幅が大きく、湿原の中に水路等がない状況が続くような場所では、地下水位の変動幅は小さいと考えられる。全体の計画を考える場合は、地下水位を観測している地点だけでなく、それ以外の場所についても考えていくことが必要である。
○ 試験区は、水路の近くに設けられているので、地下水位の変動幅は大きいと思われる。
○ コンター図を見ると、水位が急勾配になっているように見える。地下水はそんなに急勾配にならないと思うので、地表面が勾配を持っているのかもしれない。そうだとすると、試験地の地下水面だけに着目して掘り下げ深度を検討すると、問題が生じる可能性がある。
○ この区域は、水路等の影響で複雑な地下水位になっているかもしれないので、地下水位コンター図等で表す方が対策を考える上では良いと思う。

(事務局)
○ この図は、地表面から地下水面までの深さを計測した結果を整理したものである。今回のコンター図は、北から南、資料の図では右から左に向かって地表面が下がっていることを示した図である。
○ 地盤掘り下げを行う場合は、一律に掘削深度を決めるのではなく、地下水位を把握しながら場所により掘削深度を変えていくことを検討したい。

(委員)
○ 表土を掘り下げて地表面を地下水面に近づけるという発想だと思うが、排水路の水位を上げることにより地下水位を上げる方法もあると思う。そのような方法は検討していないのか。

(事務局)
○ 湿原再生A区域の隣接地は、営農中である。このため、地下水位を上げる方法は、隣接農家の方から理解を得られないことから、表土を掘り下げて地表面を地下水面に近づける方法を考えたものである。

(委員)
○ 茅沼地区でも、地下水のシミュレーションを行って周辺農地への影響について分析を行っていたと思う。
○ A区域の下流側(南側)は、農地から離れており、土地も傾斜していると考えられることから、どの程度まで行うと農地に影響が生じ、どの程度までであれば影響が生じないのか、シミュレーションにより予測してはどうか。

(委員長)
○ 水路の水位を上げることにより、周辺の地下水位を上げることができる。農地に隣接する場所では難しいと思うが、農地への影響が生じない下流側であれば、地下水位を上げる対策について検討しても良いのではないかというご意見である。今後の検討の参考にしてもらいたい。

(委員)
○ 湿原再生区域外であるが、A区域の上流・西側には、細長い湿地がある。そこから、水量豊富で良好な水が流れ出ているが、A区域に入った段階で排水路を通じて流出してしまっている。湿原再生区域のみで考えるのではなく、上流側との連携を図った対策も必要ではないか。

議事2:広里地区湿原再生について

 事務局より、広里地区湿原再生について報告が行われた。内容は、旧農地区域の湿原への再生、ハンノキ林の取り扱いについて調査検討結果の説明がなされた。その後委員による意見交換と検討が行われた。

(委員長)
○ 広里地区については、湿原再生の手法について試験結果を報告していただいた。また、広里地区に分布するハンノキ林の成立要因と、ハンノキ林をコントロールするとした場合の試験結果について報告いただいた。
○ 質問、助言などいただきたい。

(委員)
○ 旧農地区域の重要な結果と環境省の今後の取り組みについて、要点を説明いただきたい。

(事務局)
○ 地盤掘り下げ試験については、水位変動の幅をコントロールすることができず、リファレンスサイトの植生であるヨシ・ムジナスゲ植生の湿原への再生は、短期間においては難しいということがわかった。新たに水位変動の幅が小さく、水位を上げる手法の検討が必要となる。旧雪裡川の通水や堰上げという手段も以前に検討したが、隣接する農地に対して地下水位の上昇という影響が予測されたことから、隣接する農地の水位を上げずに、広里地区の旧農地区域側の水位だけを上昇させ、水位変動の安定化を図るような手法を検討していかなければいけないと考える。
○ ハンノキについては、水位変動が小さくハンノキの実生や稚樹の根圏が冠水しないという場所が、ハンノキの発芽・定着しやすい環境であるということが実験からわかった。年輪調査からは、ハンノキの定着時期と湿原火災の時期が一致することがわかった。湿原火災が起こった場合に、光条件などが変化し、ハンノキの実生が定着しやすい環境となり、その後急激にハンノキ林が拡大したと推測された。湿原火災によるどの現象がハンノキ林拡大の要因になっているか解明していく必要があり、追跡調査をおこないたいと考えている。
○ ハンノキ林の拡大要因が解明されれば、広里地区での拡大したハンノキ林をどのように取り扱うか管理方法を検討していきたい。
○ 管理方法の一つの手段として、これまで伐採試験を実施したが、広域な面積のハンノキ林を伐採により管理していくことは非常に労力がかかる。ハンノキの定着は水位の影響を強く受けるということを踏まえた管理手法も合わせて検討していく必要があると考えている。
○ 補足説明であるが、ここで判明したハンノキの発芽定着の条件は、広里地区や温根内地区といった釧路湿原南部地域における結果であり、釧路湿原全てのハンノキ林についてではないということを付け加えたい。

(委員長)
○ 幌呂地区でも指摘があったが、掘り下げて地盤を地下水位面に近づけるという手法については、広里地区で試験を行った結果、一定の見解が出ていることから、幌呂地区でも参考にしていただきたいという意見があった。今後は相互に検討し合いながら更に精査していただきたい。

議事3:釧路湿原の面積について

 事務局より釧路湿原の面積について調査検討報告が行われた。内容は、過去の経緯及び釧路湿原面積の算定作業に関して説明がなされた。
その後委員による意見交換と検討が行われた。

(委員長)
○ 釧路湿原自然再生協議会でかねてから懸案であった現在の釧路湿原の面積について、湿原植生の分布面積を算定しその結果を報告いただいた。
○ 意見、助言いただきたい。

(委員)
○ 広里地区の旧雪裡川を挟んで東側で、湿原植生が残っている短冊形の範囲が面積に含まれていないようだが何か理由があるのか。
○ 阿寒川が釧路川から切り離されて放水路になったと聞いているが、いつの事であったのか。
1921年の時点で仁仁志別川が釧路湿原の面積に入っているが、阿寒川が釧路川水系ではないという判断で、釧路湿原の面積から阿寒川が外されているとすると、阿寒川の支流であった仁仁志別川の扱いについての議論がもっと必要ではないか。

(事務局)
○ 広里地区の東側の部分については、手元の資料では詳細が分かりにくいため、確認して後日回答したい
○ 阿寒川の切り離し時期については釧路開発建設部から回答していただきたい。
湿原面積に入れる必要があれば修正して湿原面積を決めていきたい。

(委員)
○ 確か大正9年より以前に釧路川に切り替えていた時期があったが、大正9年の洪水の時に太平洋に直接流れるようになったと記憶している。

(委員長)
○ 阿寒川について大正9年以前に太平洋への切り替えが起こったとすると、釧路湿原の面積に関して仁仁志別川はどのように考慮したらよいか。

(委員)
○ 仁仁志別川は大正9年以前も阿寒川の支流ではなく釧路川の支流であったということか。

(委員)
○ あのあたりは何度となく切り替えが繰り返されたりしていたので年代によって違うが、調べて後ほど説明したい。

(委員)
○ 協議会として阿寒川は釧路湿原から外しておくという話であったので、阿寒川と仁仁志別川の関係も整理しておくことが良いかと感じた。仁仁志別川が釧路湿原とは連続した湿原にはなっていないので、現在の湿原面積に連続した湿原から外れているということに関しては依存はない。

(委員)
○ 最大郭=湿原という考え方はコンセンサスを得られているものなのか。

(事務局)
○ 湿原再生小委員会の委員の方々の意見を踏まえ環境省で作業を行っているので、コンセンサスは得られているという認識で進めている。

(委員)
○ 協議会にも図るのが良いと思う。あとで修正となると大変な作業になる。

(事務局)
○ 今回の湿原再生小委員会で了承が得られれば、次回の協議会で議論してもらう予定である。その後、今回の算出方法について協議会で了承が得られれば、釧路湿原自然再生の目標とするラムサール条約登録湿地に登録された年代の湿原面積について算定していきたい。

(事務局)
○ 先程の質問にあった阿寒川の切り替えについては、大正7年、1918年に釧路川から切り離されていた。

(委員)
○ 植生図から湿原として選択した範囲と、土地利用図から湿原として選択した範囲と違いがでたと思うが最終的にどのように判断して調整したのか。

(事務局)
○ まず植生図を使って湿原植生である範囲を抽出した。植生図がない部分については、土地利用図を使用した。土地利用図では人為的な地域以外を抽出し、航空写真で湿原植生を判読した。

(委員)
○ 土地利用図から抽出する時に、湿生林についてはどのような扱いをしているか。

(事務局)
○ 写真判読でわかる部分については湿原に入れているが、写真判読でわからない部分については湿原に入れていない。もう少し詳しく調べて回答したい。

(委員長)
○ 今いただいた意見を踏まえて、手法、位置などを精査して次回の小委員会に報告してもらいたい。

議事4:5年目の施策の点検について

 事務局より5年目の施策の点検について説明が行われた。その後委員による意見交換と検討が行われた。

(委員長)
○ 5年目を迎えた釧路湿原自然再生協議会では、各小委員会において5年目の施策について点検する手法を検討することが討議された。
湿原再生小委員会では今回事務局から、振り返り点検シートによる検討が提案された。
○ 意見、指摘などいただきたい。

(委員)
○ 点検シートは良いと思うが、これをいつまとめて、いつ提出され、いつチェックされるのかよくわからないので教えていただきたい。

(事務局)
○ 今回の小委員会の終了後に作業にとりかかり、次回の小委員会までに粗々の形が出来たら示すことができると考えている。今年度の最後の協議会で報告したいと考えている。

(委員)
○ それでは事業による目標設定と今後5年間の方針の検討とあるので、次回の小委員会までは事業は何も動かないと考えてよろしいか。

(事務局)
○ 点検シート案の中身について、どのような書きぶりになるかというのを今年度中に小委員会の中で議論いただきたいと考える。小委員会の開催が間に合わなければ資料を委員のみなさんに配布して判断いただくような形も考えたい。

その他

(委員長)
○ 全体を通して意見、指摘をお願いしたい。

(委員)
○ 協議会の発足から調査や研究、議論が進められてきたこの5年間で、地域の気候にも大きな変化があり、特に今年は大変暑い夏となった。湿原流域の乾燥化の影響もあるのかもしれないが、エゾシカによる農業被害や林業被害が大きくなっている。また、釧路市街地近隣でヒグマが確認されたり、海岸沿いの益浦地区にまでエゾシカの生息地が広がったりと、釧路湿原の周辺で野生動物の生息状況が変わってきているようである。対象範囲が広くなって大変かもしれないが、釧路湿原と野生動物の関わりについても協議をしてもらいたい。

(委員)
○ 湿原再生小委員会では、湿原生態系の再生も目標に掲げているが、実は泥炭も生態系の一部である。この認識が今までの議論の中で抜けていると考える。これまで、植物を戻すために泥炭を掘り下げてしまえという話であったが、一度ストップして、泥炭も生態系の一部であるという認識を持っていただきたい。

(委員長)
○ 湿原の再生を考えるときには、個々のものだけではなく湿原の生態系の再生ということに視点を置く必要がある。基盤である泥炭そのものも生態系の一部であることから、掘り下げなど作業対象に生態系の一部が含まれるような作業については、検討しつつ進めていく必要があると指摘いただいた。

(委員)
○ 施策の振り返りについて、平成17年から数えると今年度は6年目なので、今後4年間の方針を今年度末までに確認して、来年度からの方針を検討して、来年度から実行に移すという理解で良いか。

(事務局)
○ 全体構想が2005年、平成17年の3月なので、実際に動き始めたのが平成18年からということで考えると、今年が5年目にあたり、来年が6年目と考えている。

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