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第8回水循環小委員会 議事要旨

第8回(平成21年3月23日)

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第8回水循環小委員会 議事要旨

第4期水循環小委員会の委員長および委員長代理の選出

 第4期水循環小委員会の委員長および委員長代理として、第3期に引き続き藤間委員を委員長に、井上委員を委員長代理に推薦する案が事務局より示された。会場からの「異議なし」という発言により第3期に引き続き藤間委員が委員長に、井上委員が委員長代理に選任された。

議事1:水循環小委員会の目標と検討の進め方

 事務局より、水循環小委員会の目標と検討の進め方について説明が行われた。

議事2:水循環検討会の成果報告、議事3:今後の調査・検討予定について

(委員)
泥炭は水を通しづらいために湿原になったと理解していた。泥炭の下に上部細礫層があり、さらにその下に中部泥層があるという説明であったが、泥炭と上部細礫層に水分が溜まっていると考えて良いのか。泥炭と上部細礫層の水の関係について補足説明をお願いしたい。

(事務局)
中部泥層を境界として、その上と下の地層に水頭が異なる地下水が存在している。中部泥層の上にある泥炭層と上部細礫層については、相互に水のやりとりがある。

(委員)
資料2ページでは、地下水の流れが3層に分かれているが、釧路湿原の場合は2層に分かれていると理解して良いのか。

(事務局)
資料2ページの図は、一般的なイメージ図である。釧路湿原の地層を分析したところ、最上部層、上部細礫層、中部泥層、下部礫層に区分することができた。資料 2ページと釧路湿原の地層を対比すると、最上部層と上部細礫層の地下水が「表層地下水」、下部礫層の地下水が「深層地下水」に区分される。

(委員)
「表層地下水」という表現をはじめて聞いたが、一般的な表現なのか。

(事務局)
ここでは、泥炭層の地下水を「表層地下水」と表現した。

(委員)
「表層地下水」と表示すると違う水をイメージしてしまうので、注釈を付けた方が良いと思う。

(委員)
この部分については、水循環検討会でも議論した。「表層地下水」と表現しているが、表層水と表現しても良いくらいである。湿原の植物が吸い上げているような水をイメージしている。表面で一番動いている水に当たる。
泥炭下層の地下水が「浅層地下水」に当たり、水の動きは緩やかだと考えられるが、無視できない水である。

(委員)
説明の中で、浅い層の地下水という表現を用いていたが、「浅層地下水」と表現に統一した方が良いと思う。

(委員長)
中部泥層が無ければ、下部礫層と上部細礫層の地下水位がほぼ一定になるはずである。しかし、観測データを見ると、下部礫層の地下水位が地表面より高くなっている。このことは、下部礫層の地下水がかなりの圧力を受けていることを意味している。
資料では、下部礫層の地下水を「深層地下水」と定義している。地下水位が異なることから、地下水の流れも違うであろうと推測し、「深層地下水」に対して浅い深度の地下水を「浅層地下水」と分けて考えているものである。
泥炭層の地下水は、水平方向には流れやすいが、鉛直方向には流れづらいという特性を持っている。表層部については、「表層地下水」より「表層水」と表現した方がより正確な表現だと考えられる。

(委員)
上部細礫層と最上部層の透水性はどの程度異なるのか。

(事務局)
資料14ページに透水係数の表を掲載している。透水係数は、最上部層は1×10-4センチメートル/秒、上部細礫層は1×10-3センチメートル/秒という違いがある。

(委員)
透水性が一桁違うということであるが、これは計算上の設定だと思う。
資料7ページの図で上部細礫層の地下水位が地表面付近に分布している状況を見ると、最上部層と上部細礫層の地下水は一体となって挙動しているのではないか。

(事務局)
最上部層と上部細礫層の地下水は一体になっていると考えて、三次元の地下水位シミュレーションを実施する方針である。

(委員長)
最上部層と上部細礫層の間には明確な遮断物が無いため、ピエゾ水頭は同じになる。このため、同じ圧力下で解析を行うことになるが、透水係数が違うので、透水係数の特性を考慮してモデル化を行う考えである。

(委員)
サロベツ湿原と釧路湿原では泥炭の性質が異なると考えられるが、橘委員のサロベツ湿原での研究成果を見ると、地表面から深度50センチメートル程度の地下水が被圧しているという結果が示されている。関連する事項としてお知らせしておきたい。

(委員長)
最も大事なことは、地層によって地下水を分けて考えるということである。今後、地表に近い浅層地下水を対象として解析を行い、地下水の量・質について検討を行っていくことになる。

(委員)
シミュレーション結果で示されている湧水量と地下水流入量は、試行錯誤的に計算されたものか。

(事務局)
既往文献を調べると、各地質の透水係数がある範囲で示されている。この範囲内で透水係数を変更し、調和する透水係数を設定していることから、透水係数については試行錯誤的な計算により設定しているということになる。
今回のシミュレーションで計算条件として与えているものは、降水量だけである。それ以外のパラメーターを文献値等から設定して計算した結果が湧水量と地下水流入量である。

(委員)
シミュレーションを実施する場合は、境界条件を設定する必要がある。どのような条件を与えて地下水を流しているのか。地下水流入量は、通常は与条件になるのではないか。
水収支は、湿原域だけではなく、まずは流域全体を対象に計算すべきではないか。それにより、降水量に対して河川水として流れ出てくる量が明らかになる。その他、一部は蒸発散し、一部は地下に浸透していくことになるが、それらを仮定して計算していくのがシミュレーションの手順になるのではないか。

(事務局)
資料で示した水収支の計算結果は、釧路川流域全体を対象として計算した結果である。今回の計算では、湿原域の境界条件は設定していない。流域の分水嶺が境界になるので、境界条件はゼロということになる。

(委員)
計算の再現性のチェックは、河川流量で行ったのか。

(事務局)
河川流量で再現性のチェックを行った。

(委員)
河川流量の流入・流出が合うような流域モデルをつくり、湿原境界部から入ってくる河川水、湧水、地下水を算出したという理解で良いか。

(事務局)
そのとおりである。

(委員)
1980年以前の地下水位シミュレーションを実施した場合、その計算結果の妥当性の検証方法を教えてもらいたい。

(事務局)
1980年のデータは観測されていないため、検証することができない。そこで、現在観測されているデータの再現計算を行い、妥当性の検証を行った上で過去の推定計算を行うという手順になる。

(委員)
現状の再現計算を行う際、パラメーターを決めてキャリブレーションを行う。次に、そのモデルを用いて、観測データがある別の期間の計算を行い、計算結果と観測データの対比により妥当性の評価を行う。その上で、観測データが無い期間の予測計算を行うことになる。
キャリブレーションを行い、妥当性の検証を行った上で予測計算を行うという 3段階の手順になる。

(委員長)
観測データが無い場合は、そのような手順で行うことになる。1980年の計算結果について、信頼性を数値で示すことはできない。

(委員)
資料16ページのシミュレーション結果を見ると、流入量と流出量のバランスがとれている。うまくバランスがとれた条件があるのか。また、流入、流出のバランスがとれたときのこの地区の水のストック量は、どのように考えれば良いのか。
一方、調査・観測結果を見ると、流入量と流出量がアンバランスになっている。また、地下水流入量・流出量が?となっているのに合計の流入量・流出量が示されている意味を教えてもらいたい。

(事務局)
シミュレーション結果の流入量と流出量が同じなのは、流入量と流出量が一致するように計算しているからである。
調査・観測結果は、湧水量の一部および地下水流入量・流出量が不明な状態であるが、現在観測されている結果に基づいて推定した流入量・流出量の合計を示したものである。観測結果であるため、流入量・流出量に違いが表れている。

(委員)
アンバランスになっていれば、その地区の水量が上下することになる。上下する水量はどの程度だと理解しておけば良いのか。

(事務局)
理論的には、流入量と流出量は同じになる。しかし、全てを観測することはできないので、調査・観測結果の流入量と流出量は違う値になっている。これに対し、シミュレーションは理論的に計算しているので、流入量と流出量が一致している。
シミュレーション結果と調査・観測結果の流入量と流出量がそれぞれ概ね合っている点が評価の対象であり、シミュレーション結果の流入量と流出量が一致していることについてはあまり意味が無いことだと考えている。

(委員長)
自然界で流入量・流出量のアンバランスが生じると、湿原の地下水位が上下したり、河川水量が増減したりすることになる。
資料16ページのシミュレーション結果は、入ってきたものが溜まらずに出て行くと仮定して湧水量や地下水流入量を推定したものであり、今まで不明であった水量のオーダーを把握する目的で計算した結果である。
シミュレーションや調査・観測の結果は、現時点では実現象と結びつけるレベルになっていない。

(委員)
資料にハンノキ林拡大前の1977年の植生図が示されている。この時代は、栄養塩は湿原にはあまり入っていなかったと考えられる。今後、物質循環メカニズムの検討を行う予定になっていたが、その目標も1980年になるのか。

(委員長)
栄養塩と植生の直接的な因果関係を把握することができれば、栄養塩の拡散状況を推定することで植生変化の原因を推定することが可能になると考えられる。しかし、現時点では栄養塩と植生の直接的な相関関係がはっきりしていないため、今の委員の質問に回答することはできないと思う。

(委員)
植生変化まで推定できるか分からない。水のモデルが完成した場合、流域からの負荷の流出状況をモデル化することが可能になると思う。
その段階になれば、流域の土地利用状況の変化、点源負荷の増減、河川改修等が釧路湿原の水質環境にどのような影響を与えたのか推定することが可能になると思う。ただし、過去のデータが無い以上、推定結果の信頼性を数値で表すことはできない。

(委員)
こうではないか、という仮説をシミュレーションの与条件として計算を行い、その結果と観測データを比較することにより、立てた仮説の検証を行うことができるようになるのではないか。

(委員長)
シミュレーションモデルの有効性が証明された場合、水循環小委員会は最も大切な時期に入ることになる。

(委員)
地下水流入量は、中部泥層の上部の水のみを対象とした計算結果なのか。

(事務局)
中部泥層を境界として、その上と下で水のやり取りの無いことが分かったので、上部の水のみを対象にして計算を行った。

(委員)
中部泥層が分布していない範囲に降った雨の量は、上と下の層に何らかの割合で配分しているということか。

(事務局)
湿原を網羅的に調査した結果、ほぼ全域に中部泥層が分布していることが分かった。そのことも考慮し、中部泥層の上部の水のみを対象とした。

(委員)
計算領域は流域全域ということであったが、流域全域に中部泥層が分布しているということか。

(事務局)
流域全域を対象とした計算では、流域に降った全ての水を取り込んで計算を行っている。その点、訂正させていただきたい。

(委員)
流域全域であるが、湿原域については、中部泥層の下部の地下水はモデルに入っていないということではないのか。

(事務局)
流域全域を対象とした計算では、流域に降った全ての水が計算の対象であり、中部泥層の下部の地下水についても、モデルに組み込んで計算を行っている。

(委員長)
水循環検討会は4回行った。その結果を、1回の小委員会の限られた時間で全て解釈することは困難なことである。
疑問点や意見については、小委員会の後でも事務局に問い合わせいただき、各委員が本日の説明を深く理解していただければと思う。

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