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北海道における水素社会の実現に向けて パネルディスカッション

パネルディスカッション  「北海道における水素社会の実現に向けて」

コーディネーター パネラー
近久 武美氏 谷 義勝氏 大田 裕之氏 三谷 和久氏 白野 暢氏 桜田 昌之氏
北海道大学
大学院工学研究院教授
イワタニガスネットワーク(株)
開発担当部長
(株)東芝
次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム統括部長
トヨタ自動車(株)
技術統括部主幹
北海道
環境生活部環境局地球温暖化対策室長
国土交通省
北海道局参事官
近久
 それでは、最初に国土交通省、北海道庁、それに続いて企業3社からお話をいただきます。

桜田
 国土交通省北海道局では、第7期北海道総合開発計画を進めており、その中に水素について産学官連携による研究開発等を促進することを謳っています。
 水素の使い方として産業用、民生用、環境や交通の面からの取組がありますが、私どもは国土交通省ですので、まちづくりの面からアプローチできないかと考えています。
 水素を道内でたくさん供給できるようになれば、まず地元で地産地消する。例としては、FCVによる地域交通や民生用エネファーム、分散型の集落が多いためそれを賄う燃料電池、更には地域熱電供給、水素から電力に戻して北本連系を使って本州に供給することも可能になると考えます。
 本日は全道から多くの自治体の参加がありますが、水素の取組にどんどん挑戦する自治体が出てくることを期待しています。国土交通省としてはそれらの取組を支援するプラットフォームを、北海道も交えて作っていく考えです。

白野
 北海道は全国一高い再生可能エネルギーのポテンシャルに加え、室蘭市を中心に水素関連企業が集積しています。水素の利活用は、4大都市圏が先行していますが、関東以北では唯一室蘭市を中心に水素関連企業の集積を高度に生かすことが可能と考えます。日本が成熟した水素エネルギーの利用技術を今後世界に展開していくことを目標に、エネルギー使用量の多い先進諸国や北方圏諸国に水素技術を進めていくためには、寒冷地向けの技術開発が必要であり、その実証試験には北海道が最適と考えます。また、水素を作り、残りのCO2をCCSで地中に固定、貯留するシステムも北海道は全国よりも可能性が高いのではないか。あるいは、大量の畜産バイオマスをメタンにして発電し、一旦メタンから水素にすることにより、使いたい時に熱や電気にして、農業生産の現場にも使えるのではないか。
 これらの色々な可能性を追求し、北海道の優位性を生かしながら、低炭素で安心、安全な水素社会北海道を目指していく考えです。

大田
 
 日本の未利用風力の5割は北海道にあるという環境省の報告があります。仮に風況が7.5mの所に、ウィンドファームを建てた場合、約20GW、大型の原発6基分の電気が作れます。ところが、実際にはそのうち3%の0.6GWしか繋げられない。問題はいくつかあり、水素であれば解決できるのではないかと考えます。
 一つは水素貯蔵システムです。太陽光や風力は気象条件によって不安定なものですから、なかなかグリッドに入れられない。これを水の電気分解で水素に変える。グリッドに流れている深夜電力や余剰電力も一旦水素に変える。そして、工場、学校、住宅の電力需要の高い時に貯めた水素を燃料電池で電気に変えて安定した電力として送るというものです。
 もう一つ、風況が良い地域が送電網から離れていること、小さな道内電力需要だと作っても売れないという問題を解決するのが北海道水素サプライチェーンです。供給側として電力網に繋がらないオフグリッドのウィンドファーム(3MW×130基)を建てた場合、1日当たり50tの液体水素が作られます。北海道にはこれを50か所置けるポテンシャルがありますので、水素のガス製造量に換算すると年間100億立方メートルの水素が得られます。需要側としては燃料電池を工場、ビル、家庭に設置し、電気と燃料電池で出てくる熱を温水として供給する。もう一つは都市ガス、LPG、灯油、その大部分を消費する暖房、煮炊きの熱エネルギーが水素でできる。それから燃料電池への供給。換算値ですが100億立方メートルを全部電気の形で使うと、2.6GWのパワーが出ます。これは道内の発電量の約3割、灯油に換算すると道内消費の約44%、道内の車両が全部FCVに変わったとしても道内の水素で賄うことができます。
 系統の余った電気、小水力発電、地熱発電などから水素を作り、液体水素としてタンクローリーで運ぶというサプライチェーンを作ることが、未利用の再エネルギーを使いこなす一つの方策だと思います。
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 水素は石炭、石油、天然ガス、それから苛性ソーダ分解、循環工業の副生ガスとして出てきます。ただし、その際水素とともにCO2が必ず発生します。化石燃料と水素を考えていく上では水素とCO2はコインの裏表にあるということを念頭に置いて、今後エネルギー計画を組み立てていく必要があります。
 今後注目していかなければと思っているのは、食品廃棄物の処理によるバイオガスです。ここから約2億~3億㎥の水素が取れると思います。それと家畜の糞尿です。北海道では非常に大きなポテンシャルを持っていると思います。仮に50万頭の乳牛がいると、その糞尿から約7億㎥の水素ができると見ています。
 北九州で水素タウン実証プロジェクトを行いました。水素型の燃料電池の耐久性や水素
の配管を街の中に都市ガスのように地下埋設して、はたして安全に供給できるかどうかを実証実験しました。結果は問題なく水素は社会の中で使えます。これらから得た色々な知見を基に新しい機器、システム開発に向けて取り組んでいます。

三谷
  自動車メーカーとして目指すべき持続可能な社会とは、エネルギーの安全保障と環境維持の両面で安全安心な社会です。その両面を備えている水素というエネルギーは社会を変えていくポテンシャルがあると信じて開発を進めています。
 命を乗せている商品としては、やはり安全性と信頼性というのがベースにあります。それに何を乗せて走らねばならないかというと、大気汚染、CO2、石油の将来の不安、こういった課題をクリアしていかなければ自動車産業は生き残れないと考えています。
 自動車用のパワートレーンの多様化ということで、省石油という概念でものづくりを行っています。その範疇でHVができました。ただそれだけではいけない。そこから派生する技術としてEV、PHV、そして今日の話題であるFCVです。FCVは、ゼロエミッションや燃料の多様化にも対応できて、走りそのものもすごく楽しいというものができあがりましたが、それらはモーターで駆動している以上全部EVでこなせます。ただし、FCVには航続距離が長い、水素の充填時間が3分程度と短い、氷点下での始動性も良好という使い勝手の良さがあります。北海道のような寒冷地でEVというのはなかなか難しいのではないかと思いますが、FCVは市場が形成されるポテンシャルを持っていると思います。
 
近久
 日本だけが先行して燃料電池自動車の開発を行っても技術がガラパゴス化してしまうのではありませんか。
 
三谷
 現在FCVを開発できるのは世界に6社、そのうち3社が国内メーカーです。開発にあたっては欧米のメーカーと一緒に行っており、世界基準調和といったルール作りも日本主導で進める下地ができています。
 
近久
 世界には褐炭から水素を作り、液体水素で日本に送るというポテンシャルがある状況です。北海道で水素を作ってビジネスにしていこうと考えた場合、海外から入ってくる水素との関係や競争力など、将来の水素価格を含めたイメージについてどのようにお考えでしょうか。
 
 これから先、石油価格が下がるというシナリオはなかなか描きにくい中で、我が国固有の再生可能エネルギーをいかに使用していくか。社会資本としてキャペックスの処理ができれば、コストは下がっていく可能性があると考えています。
 また、水素価格は政府のロードマップに30円/Nm3位と載っていてそれを実現しようと動いていますが、これぐらいの価格はできるかなと思います。
 
近久
 水素価格が30円/Nm3となると風力発電も相当安くならないといけないと思います。

大田
 ロードマップによると2050年の天然ガス火力が約30円/Nm3です。この価格の定義は港湾で水素を引き揚げて近くの火力発電所に供給することを想定した価格です。北海道内で各家庭が水素業者に支払う価格が約50円/Nm3と見ていますが、これは港湾部で30円/Nm3の水素をタンクローリーなどで北海道の内陸部に輸送した際には20~30円のコストが上乗せされます。これを考えると、北海道内で作った水素は、2050年の想定での30円/Nm3の天然ガスと競争力があると思っています。
 また、風力発電の電気コストですが、日本は非常に高いのですが、海外では風力はもう高くないのです。風力は水素を作るには適した電力だと思っていますし、北海道での水素サプライチェーンは筋が良い考えだと思います。

三谷
 地産地消型の自然エネルギーを使い、あまり運ばなくともよいと考えると対抗できる気もします。
 
近久
 地産地消の社会づくりを進めるためには行政の役割は非常に重要ですが、水素に関しての行政ビジョンをお願いします。
 
白野
 今のところ、平成27年度には、北海道が目指す水素社会の考え方、ビジョンやできればその実現に向けたロードマップのようなものを取りまとめられたらと考えております。国土交通省とも相談しながら、その取りまとめのための協議、議論の場について、年度末に向けて検討していきたいと考えています。
 
桜田
 長い目で見ていくのが大切です。太陽や風などの持続するエネルギーを資源に活用していく方向を国土交通省としても持ち続けて、学識関係者の方々、北海道ほか関係機関、各企業の皆様と連携して検討の母体を作って取組を進めていきたいと考えています。
 
近久
 会場からの質問をお受けします。
写真
会場
  北海道のポテシャルとして熱需要が大きいことがあげられます。電力と水素あるいは熱との交換性が高くなることは非常に需要が大きくなると思いますがその辺のお話と、水素の値段はわかりましたが、設備投資はどれくらいになるのでしょうか。
大田
 北海道は水素を作って電気に戻すよりも、熱利用として使った方がいいと思います。設備投資費用については、直接は答えられませんが、例えば都市ガスを使っているエネファームは現在約130万円です。10年動かして電気だけ使うのと同じです。エネファームは改質器が必要ですが、純水素の場合それは不要ですので、今より導入しやすいと思います。
 
近久
 補足しますと、水素からコージェネレーションで電気と熱を作って、電気は系統に戻したり自家消費する、その熱を暖房に使用する。このようなシステムが北海道に適しているということかと思います。
 水を電気分解すると、水素のほかに酸素もできますが、酸素の利用法はないのでしょうか。 
 
 酸素を燃料電池の発電側に使って効率を上げることができないだろうかと思います。また、養殖や健康、医療など生活エリアで使われている所に酸素を持っていって、それを付加価値として回収できれば、水素のコストは下がってくると考えられます。
 
大田
 例えば、オゾン化してそれを廃棄物処理に使うという案があります。現在は水素だけの価格で勝負して安い水素は作れないのですが、もし酸素の利用がお金になるのであればものすごく楽になります。

近久
 ビジネスとして水素社会が出来ていくのは10~15年の長いスパンの問題であり、地道にしっかり考えていかないといけないのだろうと思います。
 パネラーの皆様からご紹介がありましたように、水素社会のポテンシャルは高いと感じます。また、日本のGDPを上げる起爆剤になるポテンシャルが一番高いのはエネルギーであると思います。エネルギーに関するお金は、現在そのほとんどが海外に出ています。これを国内で循環するような仕組みにすれば、GDPが上がる需要としてポテンシャルを持っていると思います。そのようなサイクルをどのように作るか、これは行政の手腕にかかっていると思います。その辺の行政の舵取りも期待しまして、今日のシンポジウムのまとめとさせていただきたいと思います。
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開発監理部 開発連携推進課

  • 電話番号:011-709-2311(内線5455・5419)
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