札内川技術検討会(第2回)
議事次第
場所:とかち館 1階 丹頂の間
1. 開会
2. 議題
(1)平成23年9月出水による変化について
(2)河道内樹林化の原因分析について
(3)礫河原再生の方策について
3. 閉会
資料
議事概要
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第2回札内川技術検討会の様子(帯広市内,とかち館にて)
第2回札内川技術検討会が平成24年3月13日(火曜日)に開催されました。
【第2回検討会の議題】
- 平成23年9月出水による変化について
- 河道内樹林化の原因分析について
- 礫河原再生の方策について
氏名
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所属等
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泉 典洋 | 北海道大学大学院 工学研究院 教授 |
斎藤 新一郎 | 環境林づくり研究所 所長 |
中村 太士 | 北海道大学大学院 農学研究院 教授 |
藤巻 裕蔵 | 帯広畜産大学 名誉教授 |
丸山 純孝 | 帯広畜産大学 名誉教授 |
柳川 久 | 帯広畜産大学 教授 |
渡邊 康玄 | 北見工業大学 教授 |
【委員からの主な意見】
・今回の出水で変化が生じなかった箇所も、仮に洪水継続時間がもっと長かった場合、平面的な流路変動の状況が変わり、樹木流出等が生じたかもしれない。
・洪水時には樹木に礫が当たり、幹が傷つくので、幹の状況により洪水時の状況を推測する方法もあると思う。
・一般的に、無次元掃流力(τ*)が 0.05を上回ると河床材料が動き出すと言われている。しかし、平成23年9月出水により河床撹乱が発生した箇所のτ*は、概ね0.07以上となっている。札内川では、τ*=0.07が、より確実に河床材料を動かし得る目安となるだろう。
・ケショウヤナギも重要であるが、20年ほど前まで中札内付近で一般的に見られたエゾノウワミズザクラとトカチスグリの生育地の回復を図りたい。流下断面が不足している箇所では間伐と枝打ちにより樹林を疎らにすれば良い。ケショウヤナギは50年に1回くらい大洪水が無いと更新がうまくいかず、やがて消失してしまう恐れがある。
・平成初期と現況の植生等を比較し、どのような自然を回復すれば良いのか検討していく必要がある。礫河原の減少だけでなく草原と低木からなる灌木草原の減少についても着目していく必要があると思う。
・札内川の礫河原には、牧草由来と考えられるクサヨシが繁茂している箇所がある。このような外来種の問題についても議論していく必要がある。
・野生動物は河畔林を移動路として利用しており、農家の近くでもシカやクマが頻繁に出没しているようだ。河畔林管理については、クマ等の出没なども考慮して検討する必要がある。
・河道内樹林化が、農作物の被害や人とクマが遭遇するリスクを高めている可能性がある。
・航空写真によると、平成17年頃までは礫河原が維持されているが平成21年は顕著な砂州樹林化が見られる。これは、平成18年頃からの年最大流量の減少傾向が影響していると考えられる。また、融雪期も含めて流量減少が続くとすれば礫河原の再生は難しいと思う。
・札内川の流量が減少したことで樹林化が進行したが、今後、洪水を受けることで礫河原が再生することも考えられ、今年9月の洪水による河道変化について分析すると良い。
・樹林化の原因の一つとして、札内川ダムによる流量調節や供給土砂の減少が考えられる。工学的な判断を行う上で、流量だけではなく土砂の情報も重要。
・オノエヤナギは6月上旬から下旬、ケショウヤナギは6月下旬から7月中旬に種子散布され、着床して発芽する。その時期に浸水すると枯死するので、札内川ダムからの擬似融雪放流により樹林化を抑制することができると思う。
・ケショウヤナギは比高の高い場所に生育する。比高の高い場所ではオノエヤナギ等は生育できず、ケショウヤナギが他のヤナギ類との競争に勝って群落を形成する。
・植物の生活史を考えるうえで融雪出水は確かに重要だが、形成された樹林を流出させるのは夏期の出水だと思う。融雪出水と夏期出水の両方について考えていく必要があると思う。
「礫河原再生の方策」に関する意見○ 自然再生の目標について
・制約条件がある中で行う自然再生にはどうしても限界がある。我々が目指すのは、札内川ダムがあることを前提とした、かつての札内川のミニチュア版のようなイメージだと思う。
・礫河原更新システムの再生が非常に大事なことである。以前の河川環境そのものではなく、以前の河川環境が維持されていた更新システムを再生することを目標にしてはどうか。
○ 礫河原再生の方法について
・はじめに、札内川ダムからの擬似融雪放流を実験的に実施し、それでうまくいかなかった場合は、先生方に助言を仰いで色々な方法を検討すれば良いと思う。
・120m3/s規模の疑似融雪放流は、礫河原再生に対して期待できる。しかし、既に密林状態となっている樹木群を礫河原へ再生させるためには最初に人為的な手助けをする必要がある。
・流路変動が発生するようなきっかけをつくってから継続時間を長くした擬似融雪放流を実施することにより、瞬間的な放流より大きな効果が得られることも考えられる。
・疑似融雪放流を長い時間行うことにより、側岸侵食による礫河原の更新をより期待できる。
・オノエヤナギやエゾノキヌヤナギの種子の寿命は3日程だが、ケショウヤナギは20日後でも健全に発芽する。ダムからの擬似融雪放流が遅れても、オノエヤナギ等の芽生えを流すことができれば、タネ播きをすることによりケショウヤナギの発芽、定着が期待できる。
・ツルヨシは栄養繁殖させることが出来る。増殖したものを移植しても良いと思う。
・緩勾配の礫河原の造成、礫河原以外に灌木草原の回復を図る考え方は、河川環境を鳥類の生息場所として維持する観点から非常に良いと思う。
・ダムからの擬似融雪放流を行う場合、念のため、鳥類の利用状況等を確認したうえで放流できればなお良いと思う。
・これまでに、ダムの弾力運用による放流が実施された事例はあるが、今回計画されているような季節的な変動を模倣した放流はおそらく初めてで、良い事例になると思う。
○ 試験施工計画について
・試験施工は、試験施工区と対照区の条件の違いを明確にして、試験施工を実施することによる変化について仮説をたて、それをモニタリング調査により検証していく計画として実施していくのが良いと思う。