現在位置の階層

  1. トップページ
  2. 治水課
  3. 釧路湿原自然再生協議会 トップページ
  4. 第5回水循環小委員会 議事要旨

第5回水循環小委員会 議事要旨

第5回(平成17年11月2日)

  • タイトル画像

第5回水循環小委員会 議事要旨

現地見学を踏まえた意見交換について

 現地見学のポイントについての説明が事務局より行われた後、現地見学を踏まえた意見交換が行われた。

(委員)
地下水位観測計器設置諸元は、形式を記述する程度で良いのではないか。必要な情報として、観測機器設置断面図に柱状図を併記した方がいいと思う。

(委員)
湿原内の河川と地下水位の関係が重要である。特に湿原の場合、表面の水移動は非常に大事な情報である。是非、湿原内の河川の水位観測を行ってもらいたい。
自然河川だけでなく、右岸堤の堤内排水の水位なども測定した方がいいと思う。この堤防が湿原内の水循環にどのような影響を与えているか把握する必要があると思う。

(事務局)
釧路川本川では河川水位の観測も行っている。また、遊水地右岸堤の堤内排水路近傍には地下水位計が設置されており、そのデータは堤内排水路の水位を把握する上で参考値にできると考えている。

(委員)
幌呂川地区の湿原再生についてなにか具体的な計画があれば教えてほしい。
被圧地下水が釧路湿原にどのように寄与しているのか教えてほしい。

(事務局)
幌呂川地区の湿原再生については、現在調査検討中で、まだ実施の段階に入っていない。この地区をどのように再生するか、現在議論しているところである。
地下水と植生との関係については検討に着手した段階で、まだ把握できていない。

(委員)
被圧地下水の寄与に関して、夏期は河川の氾濫もあることから、地下水のボリューム的な寄与率は低くなると思う。しかし、冬期の河川氾濫が起こらない季節は、被圧地下水のボリューム的な寄与率が大きくなると思う。
特に釧路湿原の場合には、熱が果たす役割を無視できないと思う。タンチョウが冬期間も湿原で採餌できるひとつの理由として、地下水から供給される熱が大きな役割を果たしていると考えられる。被圧地下水の年間のボリュームと熱量の賦存量を計測しているのか確認したい。今すぐ使わないにしても、そのようなデータも蓄積しておく必要があると思う。

(事務局)
水温を測定している地点もあるが、冬期間は計測しておらず、熱の賦存量も把握していない。

(委員長)
地下水がどの程度動いているかまだ分からないので熱の賦存量も分からないと思うが、最終的には必要になってくると思う。不圧、被圧の地下水量を概略把握したときに、その熱量、賦存量もまとめてもらいたい。

(事務局)
これからボーリング調査を実施する地点もあるので、そこでの状況を見て必要な調査として検討したい。

(委員)
幌呂川地区の変遷の詳細、この地区をどのように復元しようとしているのか、具体的な資料があれば示してもらいたい。

(事務局)
変遷については、まとめた資料があるので、次の機会に説明したい。変遷と現状を踏まえてこの地区の再生について検討していきたいと考えている。

(委員)
農地開発が行われ、放棄されてからの変化を把握することで、人間がどこまで関与し、どこまで自然の復元力に委ねるか検討する際のいいデータが取れると思うので、きちっと示してもらいたい。

「釧路湿原周辺の地質と地下水」研究発表について

 第3回目の勉強会として「釧路湿原周辺の地質と地下水」と題して許 成基 博士(株式会社レアックス)から話題提供いただき、テーマに沿った意見交換が行われた。

(許博士:発表内容抜粋)
被圧地下水がどの程度釧路湿原に寄与しているのかについては、全く分かっていない。昨年、ボーリング調査を5箇所実施して、内部の地下構造を概ね把握したところであるが、深部の地下水位については観測を始めたばかりである。

水は、湿原が誕生して消滅するまでのあらゆる段階で湿原と密接に関係している。湿原が湿原として維持されるには、水との関わりを知ることが大事で、水収支を把握する目的は、この各段階における水が果たす役割の量的な実態を明確にすることである。

水収支を詳細に把握することで、現状の湿原が理想状態であればその状態を維持する方策を、過去のベストの状態を再現したければその方策を、また、現状が末期症状であればその再生方法を模索する材料を提出することができる。

既往の研究成果を見ると、年間の有効降水量800ミリメートル のうち地下水涵養量が770ミリメートル 程度という報告があり、その量は大変多い。この地下に浸透した水が河川に戻り、またあるいは海に直接入っていくが、現状ではこの量的な実態が全く分かっていないので、今後調べていきたいと考えている。

地下水は、帯水層の中に入っている。帯水層は、垂直的にも水平的にも有限であるが、その地層が大きな単位帯水層となり、それが地下水盆となる。北海道内の大きな地下水盆として、根釧平野、帯広の扇状地、石狩平野、支笏湖東側の火山灰台地、上川盆地、名寄盆地などが挙げられる。

釧路川流域がひとつの大きな地下水盆であるが、まずは釧路湿原をひとつの地下水盆ととらえて水収支を把握したいと考えている。

不圧帯水層は気圧に同期しているが、被圧帯水層は大気圧に遮断されており、別の圧力を受けている。

地下水盆は、帯水層、難透水層および不透水層などが集まってつくられており、地質学的には堆積盆と全く同じということになる。

堆積盆の下には不透水性の基盤があり、釧路湿原の場合は根室層群や浦幌層群がこの基盤に該当する。堆積盆の中を流れる水は、局所流動系、中間流動系、広域流動系の 3つに区分することができる。降水が地下に涵養して遠い距離を流れて流出するものを広域流動系、降水が地下を通ってすぐ近くの河川にそのまま流れてくるものを局所流動系、その中間を中間流動系と言う。

堆積盆を把握するということは、地質を把握するということになる。地質学は層序学から出発しているが、これには“地層累重の法則”、“交差の法則”、“古生物層序の法則”という3つの法則がある。調査を行い、これら法則に基づいて分析を行うことで地質図をつくることができて、また、堆積盆の形を把握することもできる。

昨年度から行っている調査結果に基づいて作成した地質図および地質層序表を見ると、湿原周辺で確認されている最も古い地層が根室層群という約6,600万年前の地層である。

釧路湿原周辺では、樽前C と呼ばれる火山灰など、降下年代が分かっている火山灰が複数分布しており、この火山灰を追跡することでその上下に分布する地層の年代も分かってくる。

根室層群は、ほとんどが砂が固まってできたものであるが、水理地質学的には難透水層あるいは不透水層に区分される。根室層群の上に浦幌層群、釧路層群という地層が分布しており、釧路層群は下から東釧路層、達古武層、塘路層に区分することができる。午前中、露頭でも確認した達古武層は非常に良好な帯水層である。

塘路層はほとんど粗粒の砂でできており、斜交層理が発達している。斜交層理は、水が行きつ戻りつしながら堆積したことを示すもので、浅い海岸で堆積したものと考えられる。

釧路湿原の北方に目を転じると、火山灰と砂と泥で形成された数十メートルの高さを持つと推定されるクチョロ火山灰層が分布している。クチョロ火山灰層の実態は分かっていないが、達古武層を形成する堆積物を供給した地層であることが大体分かっている。つまり、南方が海であったときに、北方では火山灰が堆積する環境であったことを示すもので、釧路湿原の北と南は異なる発達の仕方をしたと推定される。

地質そのものの調査に加え、湧水点の調査も実施している。湧水の量、水温、pH、電気伝導度とその時の気温を測定している。この結果を分析して地下水コンター図をつくり、大局的な水の流れを推定するとともに、測定結果と土地利用状況などを複合的に対比することで、流動形態とともに水の性質や水質変化の要因を推定することもできるようになる。

(委員)
河川によって、電気伝導度が上流で高くて下流が低い場合がある。この原因は把握できているのか。

(許博士)
電気伝導度が上流の源流部付近で高いのは、草地での肥料散布の影響を受けたものと考えている。下流に行くに従って、肥料などの汚染物質がないところを流下することにより、きれいな水に希釈されて電気伝導度が低くなっていると考えている。

(委員)
草地の影響を受けているようなところは、表面の影響を受けやすいから、当然水温も高くなると考えてもよいのか。

(許博士)
現在はそのように考えているが、確認には詳細な調査が必要だと考えている。

(委員)
温根内周辺や広里の方は、深部の地下水に塩分が多く含まれている。地質や地下水の関係から、この塩分の供給源が分かれば教えてほしい。

(許博士)
水収支をきちんと把握するためには、海水の影響を考えなければいけない。上流に向かって塩水くさびが入ってきており、湿原にも当然関係していると考えられる。
昨年度の調査で、湿原内のD5という地点で80メートル程度掘削したときに、地表から12メートル程度上まで水が噴出したが、その地下水にも塩分が含まれていた。その地層は水理地質基盤の浦幌層群で、水を通さない地層であることから化石水の可能性もあると考えている。

(委員)
広里周辺での塩水くさびの大まかな深度を教えてほしい。

(許博士)
塩水くさびは、釧路川の河床勾配と水の流れ方によってどこまで到達しているか決まってくるものだ。

(事務局)
広里付近まで塩水が到達していたと思う。

(委員)
広里の調査地の近くに旧雪裡川が流れているが、旧雪裡川沿いでは塩分はあまり検出されていない。雪裡川と十二線川の中間付近の塩分濃度が一番高いということが分かってきた。
塩分濃度分布とハンノキ分布はある程度関連しているという説もあるので、塩分濃度の高い地下水の供給形態は重要な情報になると考えている。そこで昔、海であった頃に閉じ込められたものが滲みだしているのか、それとも塩水くさびが深いところから入ってきているのか知りたいと考えている。

(委員)
サロベツでは、地下60メートル程度のところで地下水の流動が潮汐の影響を受けているという研究結果も出ている。直接海から入る塩水くさびは大きな勾配持っているはずなので、奥までは入らないと考えられる。
閉じ込められたものだとすると、6,500年程度前のものということになる。その間の降水量から推測すると、地形的な要因で化石水として残っている可能性はあるものの、定常的なものとして残っているとは考えにくい。

(委員長)
許先生は、釧路湿原をかなり研究されているので、今後も適切なアドバイスを頂きたいと考えている。

その他について

事務局より、第9回釧路湿原自然再生協議会の開催日程を確定次第告知する旨連絡があった。

現在位置の階層

  1. トップページ
  2. 治水課
  3. 釧路湿原自然再生協議会 トップページ
  4. 第5回水循環小委員会 議事要旨