札内川技術検討会(第4回)
議事次第
場所:とかち館 1階 丹頂の間
1. 開会
2. 報告
(1)札内川懇談会の開催概要
(2)札内川におけるケショウヤナギのレポート
(3)試験施工区でのヤナギ類定着状況調査結果(速報)
3. 議題
(1)ヤナギ類の定着状況について
(2)札内川自然再生(礫河原再生)計画書(案)について
(3)平成25年度の試験施工計画(案)について
(4)モニタリング計画(案)について
4. 閉会
資料
議事概要
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第4回札内川技術検討会の様子(帯広市内,とかち館にて)
第4回札内川技術検討会が平成24年10月31日(水曜日)に開催されました。
【第4回検討会の議題】
- ヤナギ類の定着状況について
- 札内川自然再生(礫河原再生)計画書(案)について
- 平成25年度の試験施工計画(案)について
- モニタリング計画(案)について
氏名
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所属等
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泉 典洋 | 北海道大学大学院 工学研究院 教授 |
斎藤 新一郎 | 環境林づくり研究所 所長 |
中村 太士 | 北海道大学大学院 農学研究院 教授 |
藤巻 裕蔵 | 帯広畜産大学 名誉教授 |
丸山 純孝 | 帯広畜産大学 名誉教授 |
柳川 久 | 帯広畜産大学 教授 |
渡邊 康玄 | 北見工業大学 教授 |
オブザーバー | (独法)土木研究所寒地土木研究所 |
【委員からの主な意見】
・ケショウヤナギは初期成長が大きい。ヤナギ類の実生〔みしょう〕(芽生え直後のヤナギ類)が10本あり、そのうちケショウヤナギが1本でも生き残る。少しでも生えていれば心配はない。
・母樹を含め、ケショウヤナギを中心とした個体群の内容を調べておく必要があると思う。
・放流の影響のほかに、施工の有無による影響があるため、横断図等でどの程度の施工をしたのか示した方が良い。
・掘削して裸地にしたことが重要だったのか、河道がある程度撹乱された効果なのか、掘削していない場所も含めて整理し、検討してもらいたい。
・実生は、次の出水等で流されるかもしれず、親木に育つ保証はない。ケショウヤナギの生存、世代交代について議論していくうえで、実生の定着に気をとらわれすぎない方が良い。
・ダムは放流量120m3/sの範囲でどのような操作が可能なのか、その中でケショウヤナギが子どもから親になるまでの生活環〔せいかつかん〕が形成されるのか、どのくらいのバランスで生育するのかを確認していくことが必要である。
■「札内川自然再生(礫河原再生)計画書(案)」に関する意見・ケショウヤナギがモザイク的に分布していることが重要である。実生が定着する場所だけではなく、供給源となる母樹がどのような位置に生育しているのか把握する必要がある。
「平成25年度の試験施工計画(案)」に関する意見・平成24年度の試験施工で効果があらわれなかった区域については、その理由を探ることも新たな方法を導き出す糧になると思う。試験施工区の河道形状の変化だけではなく、定性的で良いので、上流側の河道の影響等を広域的に判断する必要がある。
・事務局側も、無次元掃流力以外の基準をどうやって持ち込むべきか、どうやるべきかよくわからない状態だと思う。シミュレーションである程度の再現性をもって、より効果的な掘削箇所を仮説的に提示し、実際に検証する流れが良いと思う。
・細かい技術は現場で試行錯誤しなければいけないが、シミュレーションにより検討できる範囲はあると思う。例えば、iRICで傾向をつかむことが考えられる。
・シミュレーションによる定量的な評価は非常に難しい。傾向を見るという考え方が良い。
・ここを掘削するよりはこちらを掘削した方が良いという相対的な評価でも、より確からしさが出ると思う。
・シミュレーションの分野でも、札内川を対象とした場合のノウハウを蓄積していくことにより、数年後にはもう少し精度高く比較できるようになると思う。何か検討する前に数値計算を毎回行い、現地の現象と計算結果との比較を続けていくことが良いと思う。
・平成25年度の試験施工候補地については、最も確実性がある箇所を見極めたうえで、それに合わせて詳細な観測をするなど、観測計画も含めて立案していった方が良いと思う。
・樹木伐採の時期は、できるだけ鳥類の繁殖期を外すような配慮が必要だと思う。継続的に毎年伐採を行うのであれば、前の年の繁殖が終わった後に伐採した方がベターだと思う。
・ダム放流により冠水する区域では、ヤナギ類の伐採により流速が早くなるため、侵食されて根も流出する可能性があり、良いと思う。しかし、冠水しない区域で伐きり株を残すと、河岸崩壊しない限り、伐り株から萌芽ほうが再生(ひこばえ)して元の林に戻ってしまうと思う。
・無次元掃流力0.05の基準は良いが、場当たり的にならないよう、プラスアルファの基準をきちんと持って試験施工を行っていく必要がある。それを一歩進めるためにも、目星をつけるレベルのシミュレーションを行っていく方がより良いと思う。
・ある程度大きく施工した方が、礫河原ができるかどうかはっきり結果が出ると思う。そのためにも、きちんとした理屈を持って取り組んでほしい。
■「モニタリング計画(案)」に関する意見○モニタリング計画(案)について
・河道形状の変化は、非常に細かい変化になると思う。コスト等の面で可能ならば、普通の測量ではなく、レーザープロファイラーで観測した方がより詳しく変化が分かる。
・鳥類に関して、中長期的な全体調査の方法はこれで良いと思うが、調査は10年間隔ではなく5年間隔にした方が良いと思う。また、調査地点が少ないと、調査結果が全体の結果に大きく影響するため、測定誤差を考慮して調査地点を増やした方が良いと思う。
・河川水辺の国勢調査はインベントリー調査(生物目録作成調査)で、事業等のモニタリングとは異なる。モニタリングは、評価軸を設定し、それを継続してチェックしていくことにより事業の成否を判断するものである。河川水辺の国勢調査結果によりその判断を行うことができるのか、もう一度吟味した方が良い。
・河川水辺の国勢調査は、調査項目により調査時期がずれるため、昆虫類と鳥類の関係がみられない等の問題が起こるので、気をつけてもらいたい。
・ヤナギ類については、種子散布時期が早いタイプと遅いタイプの見分けを行う必要がある。また、実生数をカウントするだけではなく、2年目の成長量を見ることが大事である。ほとんど伸びていない実生は消滅し、伸び続けている実生は生き残る可能性が大きい。
・他の会議で、魚類の専門家がこの取り組みに注目している。「札内川懇談会」には魚類の専門家がいるので、その意見も取り入れ、将来的には魚類の産卵床の視点でモニタリングを行っていくことも大切だと思う。
・モニタリング計画に、どこまで到達したら我々の取り組みとして成功と言えるのか示されていない。定性的で良いので、札内川の健全な礫河原の姿を描いておけば、モニタリング計画がもう少し引き締まると思う。
・どのようなケショウヤナギのバランスであれば良いのか、そろそろ考えていきたい。シフティングモザイクが維持される礫河原面積目安等を持っておけば、理想より遠い、あるいは近づいてきたという議論を行うことができる。理想から離れ、危機的な状況に入った場合は、違う方法を考えて改善していくなど、PDCAサイクルで管理していけば良い。
○水位・流量観測計画(案)について
・主流路の流心付近の流速が相対的に速くなる影響は、浮子で観測する場合は避けられない。札内川は水深が浅いため、場所によって流速が相当違う。
委員長まとめ ~第5回検討会に向けて~
今後の予定について
・モニタリング計画については、定性的で良いので、望ましい姿を示し、今回の取り組みの達成度等を評価できるようにしてもらいたい。それが重要だと思う。