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十勝川相生中島地区川づくりワークショップ|平成16年度 アンケート調査結果

十勝川相生中島地区川づくりワークショップ

  • 十勝川相生中島地区川づくりワークショップ
  • アンケート調査結果
はじめに
ワークショップで検討した川づくり案に、より広範な地域住民の考えを反映することを目的としてアンケート調査を実施しました。
1.相生中島地区について
相生中島地区の川づくり案
図1 相生中島地区の川づくり案
十勝川と札内川の合流点付近にある相生中島地区は、河川が湾曲し、低水路が狭く、付近に樹木が繁茂していることから洪水時に安全に水を流すことができず、治水対策が求められています。一方、帯広市街地近郊において広大で豊かな自然環境が残る地域でもあり、これらの自然環境に配慮した川づくりが必要です。そこで、ワークショップによる計画づくりを平成14年度から16年度の3ヵ年実施してきました。その結果、治水・環境・利用面に対する基本的な方向性について、以下のようにまとめられました。
・40年に1度の規模の洪水に耐えうる新たな水路造成による流下能力の向上。
・新たな水路掘削に伴い伐採されるハルニレ等の移植なども含めた自然環境の保全。
・水路内への池の造成等により、カヌー等のアウトドア活動による自然体験や自然学習の場として利用できるように活用に配慮。
2.評価手法について
(1)選択した評価手法
ワークショップで検討した川づくり案がどの程度評価されているかを把握するため、川づくり案の全体評価と、川づくり案を構成している各要素(河畔林・整備方法・のり面等)についての評価を実施しました。川づくり案全体としての評価はCVM調査を用い、川づくり案構成要素の評価はコンジョイント分析調査を用いました。
(2)評価手法の概要
1)CVM
CVM(Contingent Valuation Method)は仮想市場法、仮想評価法などといわれることもあり、仮想的に市場を作り、市場がない財や現存していない財を金額化して評価する手法です。調査対象者に「仮想の計画」を提示し、その実現のために支払ってもよいと考える金額(支払意思額;WTP:willingness to pay)を回答してもらうことより価値を推計します。簡単な例を示すと
(問)・・・・に対してあなたはいくら支払ってもよいと考えますか?
(答)・・・・円
この問いによって得られた金額をもとに評価対象者の数を乗じて、算出した総額から環境や行政サービスの価値を推計します。

2)コンジョイント分析
 コンジョイント分析(Conjoint Analysis)は、調査対象とする製品や計画案の好き嫌いを人々に尋ねることによって、その製品(あるいは計画案)が持っている特徴の中でどの項目をどの程度重視しているかを、統計的に推定する手法です。主にマーケティング・リサーチや計量心理学の分野で発展してきた手法で、環境評価には1990年代に入ってから応用が開始されました。多数の要因によって構成される「プロファイル」(製品や計画案のスペック)を被験者に提示して、プロファイルの好ましさを採点してもらったり、好ましいプロファイルを選択してもらうことで、要因別に価値を推定します。例を示すと以下の通りです。
 
問:次に示す川づくり案1~4について、100点満点で得点を付けて下さい。
  川づくり案1 川づくり案2 川づくり案3 川づくり案4
岸辺部の樹木 自然重視 治水重視 自然重視 治水重視
水路部の樹木 治水重視 自然重視 自然重視 治水重視
水路部の池 活用重視 活用重視 自然重視 自然重視
岸辺部の道路 自然重視 活用重視 自然重視 活用重視
得 点 70/100点 10/100点 100/100点 20/100点
この問で回答された得点から、各要因の重要度(得点への貢献割合)および、各要因の水準(選択肢)の効用を計測します。

3.調査内容
(1)評価対象と調査票の内容
  本調査は、これまでのワークショップでとりまとめられた相生中島地区川づくり事業の価値(CVM調査)と川づくり事業の方針・重点項目(コンジョイント分析調査)を把握することが目的です。調査票は、相生中島地区の現況と整備後の仮想イメージの説明、個人属性についての質問とそれぞれの目的に応じた以下の質問で構成しました。

1)CVM調査
 洪水時に市街地を守るため、図2のように、中州の中央部に水路を新設し、かつ事業は治水・利水とのバランスを 取って実施するという前提のもと、シナリオでは、国が財源が確保できなくなり、帯広市・音更町・幕別町の全世帯から新たに20年間負担金を集めて洪水の発生頻度の抑制や被害の軽減のために、「十勝川相生中島地区川づくり事業」を実施するか、または十分な負担金が集まらない場合は、事業が実施されないと仮定した。その上で、回答者の世帯が支払ってもよいと思う負担金額(支払意思額)を、12種類の金額表から選んで回答してもらいました。
十勝川(相生中島地区)川づくり事業を行うため今後20年 間にわたり毎年負担金を集めるとしたら、
あなたの世帯は賛成していただけますか。いずれか1つに○をつけてください。
 ただし、十分な負担金が集まらない場合は、川づくり事業は実施されません。また、お支払いされる
分だけ、あなたの世帯で自由に使えるお金が減ることを忘れないで下さい。

 

  1)賛成   円   2)反対   3)わからない
  (下記の金額表からお選びください)

「金額表」
0円 100円 200円 300円
5,000円 10,000円 15,000円 20,000円
20,000円を超える場合は具体的な金額をご記入ください。
図2 CVMのシナリオと金額表
 
2)コンジョイント分析調査
 川づくり事業のポイントである「岸辺部の河畔林」、「水路部の樹木」、「水路部内の利用」、「岸辺部の道路」について、「自然重視」と「治水・活用重視」の2通りの整備方法(水準)を設定し、それらを組み合わせた川づくり案それぞれに対して、100点満点で回答者に得点をつけてもらいました。川づくり案のパターンは合計16通り作成されますが、それらを実験計画法に基づいて8通りの川づくり案に集約しました。ただし、一人の回答者に、8通りの川づくり案に対する得点を聞くことは負担が大きく、回答の正確性が低下するおそれがあるため、1つの調査票では4通りの川づくり案について得点を尋ねることにし、合計6パターンの調査票を作成し、調査対象者に無作為にいずれかを配布しました。 
 
表1 川づくりの要因と水準
要因 水準1 水準2
岸辺部の河畔
自然重視
(ハルニレ等の樹木を移植する)
治水重視
(ハルニレ等の樹木を移植しない)
 水路部の樹木 自然重視
(水の流れに支障のない範囲で残す) 
治水重視
(樹木を全て伐採して草地にする) 
水路部内の池  自然重視
(自然の状態に任せつつ釣り等もでき
る) 
 治水重視
(カヌーなどで人が積極的に活用する)
岸辺部の道路   自然重視
(自然環境に配慮した散策路を整備す
る)
治水重視
(スムーズに移動できる車道を整備する)  
表2 調査票のパターン
  1案 2案 3案 4案 5案 6案 7案 8案
調査票1        
調査票2        
調査票3        
調査票4        
調査票5        
調査票6        


(2)調査の実施
 調査対象は、整備対象地区の相生中島地区周辺自治体の帯広市、音更町、幕別町の1市2町とし、これを母集団としました。統計的に安定した結果を得るためにはCVM調査(支払カード式)、コンジョイント分析調査(評点式)とも分析に用いる有効回答を200程度は確保する必要があるため、予想回収率を20%程度と予想して、各調査について1,000世帯に発送することとしました。無作為抽出により各調査1,000世帯、合計2,000世帯を抽出し、アンケート調査を郵送により実施しました。また、調査票の回収率を向上させるため、調査対象者全員に調査協力の御礼を兼ねた督促状を発送しました。

表3 調査概要
調査実施期間  平成16年8月~9月
母集団  帯広市・音更町・幕別町の全域(104,048世帯,平成16年5月末時点)
調査方法  郵送配布郵送回収
抽出概要  抽出単位:世帯
 抽出原簿:住民基本台帳
 抽出方法:層化無作為抽出
回答者  20歳以上の住民
表4 調査対象地域の人口、世帯数及び調査対象者数
自治体名 総  計 世帯数 対象者数
(CVM)
対象者数
(コンジョイント)
帯広市 172,195 77,466 720 720
音更町 42,295 16,700 175 175
幕別町 25,558 9,882 105 105
合 計 240,048 104,048 1,000 1,000
注1)人口及び世帯数は平成16年5月末時点の住民基本台帳
注2)調査対象者数は各市町の人口比をもとに計算
4.調査結果
(1)回収状況
  CVM調査とコンジョイント分析調査の回収数は、それぞれ352、356でした。そのうち、CVM調査においては事業に賛成する者の金額の明示がなかった回答や事業への賛否で「わからない」を選択していて立場を明示しなかった回答、コンジョイント分析調査においては提示されたプロファイルの点数に漏れがあった回答など、分析に不適な調査票を除いた、実際に分析に用いた回答(有効回答)の数は、それぞれ276と300でした。
表6 アンケート調査の回収状況
  配布数 回収数
(回収率%)
有効回答数
(有効回答率%)
CVM調査 1,000 352(35.2%) 276(27.6%)
コンジョイント調査 1,000 356(35.6%) 300(30.0%)

(2)CVM調査結果
  CVM調査において、正確な支払意思額(評価額)を計測するためには、バイアスを除去することが重要となってきます。例えば、負担金を徴収しての事業の実施を「国や地方自治体が税金を使って実施すべきだから」という理由で反対している場合には、負担方法には反対しているが、事業自体には一定の評価をしている回答者も相当範囲でいることが考えられ、これらの回答者を分析時に除くことにより、より正確な支払意思額を計測することが可能となります。このようなバイアスのかかっている回答を以降「バイアス回答」と呼び、有効回答からバイアス回答を除いた回答を「正常回答」と呼びます。本調査での正常・バイアス回答の分布状況は表7の通りです。
  有効回答からバイアス回答を除いた正常回答について支払意思額代表値を算出したところ、1世帯あたりの年間支払意思額は2,185円、バイアス回答も含めて平均値を算出した有効回答全体での計算の場合は1,386円)でした。1世帯あたりの20年間の総支払意思額は30,885円(有効回答19,538円)、地域住民全体の20年間の総支払意思額は約32億円(有効回答約20億円)となりました。
表7 回答の分類
回収数 有効回答 無効回答 有効回答のうち
正常回答 抵抗回答
352 276 76 175 101
表8 支払意思額代表値
  正常回答 有効回答
1世帯当たりの年間支払意思額 2,185円 1,386円
20年間の総支払意思額(1世帯あたり) ※1 30,885円 19,538円
地域住民全体の20年間の総支払意思額
(帯広市・音更町・幕別町) ※2
32億1,000万円 20億300万円
 ※1:1世帯あたりの年間平均支払意思額×20年(4%社会的割引率※3)
 ※2:1世帯あたりの年間平均支払意思額×調査対象地区全体の世帯数×20年(4%社会的割引率※3)
 ※3:現在と将来の価値の差を利子率で調整するもの

(3)コンジョイント分析調査結果
1)評価の内訳、影響の大きさ(要因分析)
  各川づくり案に対する評点は、各要因について「自然重視」をダミー変数化すると各川づくり案は表9のようになり、各川づくり案の得点は以下のようにモデル化できます。

表9 各要因をダミー化した川づくり案
川づくり案 岸辺部の河畔林
 W1
水路部の樹木
W2
水路部内の池
W3
岸辺部の道路
W4
1案 1(自然) 0(治水) 0(活用) 1(自然)
2案 0(治水) 1(自然) 0(活用) 0(活用)
3案 1(自然) 1(自然) 1(自然) 1(自然)
4案 0(治水) 0(治水) 1(自然) 0(活用)
5案 0(治水) 0(治水) 0(活用) 1(自然)
6案 1(自然) 1(自然) 0(活用) 0(活用)
7案 0(治水) 1(自然) 1(自然) 1(自然)
8案 1(自然) 0(治水) 1(自然) 0(活用)
    川づくり案1の得点:y1=W1×1+W2×0+W3×0+W4×1+C
    川づくり案2の得点:y2=W1×0+W2×1+W3×0+W4×0+C
    川づくり案3の得点:y3=W1×1+W2×1+W3×1+W4×1+C
    川づくり案4の得点:y4=W1×0+W2×0+W3×1+W4×0+C
    川づくり案5の得点:y5=W1×0+W2×0+W3×0+W4×1+C
    川づくり案6の得点:y6=W1×1+W2×1+W3×0+W4×0+C
    川づくり案7の得点:y7=W1×0+W2×1+W3×1+W4×1+C
    川づくり案8の得点:y8=W1×1+W2×0+W3×1+W4×0+C
    注)W1~W4は係数(重要度)、Cは定数

この式に各回答者の各川づくり案に対する評点を代入し、重回帰を実施した結果、W1~W4と定数Cは表10のようになりました。
表10 回帰結果
岸辺部の河畔林
 W1
水路部の樹木
W2
水路部の池
W3
岸辺部の道路
W4
定数C
5.27 10.43 6.19 9.85 42

この重要度W1~W4から回答者がそれぞれの水準によりどのくらい得点(効用)が変化するかを表した数値を効用値と言い、各属性で平均がゼロになるように集計されます。本調査では、各要因の水準は2つであり、各要因でダミー化した水準の「自然重視」の効用値がWk/2、もう一方の水準「治水/活用重視」が-Wk/2となります。これをグラフ化した図3を見ると、調査回答者は各要因に対して自然重視の傾向が見られました。また、各要因がどのくらい評点に影響を与えているかという寄与率(相対的重要度)を以下の計算式により算出した結果が図4であり、地域住民は「水路部の樹木」と「岸辺部の道路」を、相対的に重要視しているといえます。
  • 寄与率
  • 水準別重要度(効用値) 図3 水準別重要度(効用値)
  • 寄与率グラフ 図4 寄与率
(4)調査結果と属性の関係
 CVM調査において支払意思額に差異のあった属性について、評価の重点がどこに置かれているかを把握するため、属性別にコンジョイント分析を実施し、重要度を算出しました。その結果、どの属性でも「自然」と「治水・活用」では自然をより評価しており、回答者全体と同様の傾向が見られたほか,以下のようなことが分かりました。
・「治水の重要度」に対する認識と「水防活動経験の有無」によって、全体とは異なる評価傾向が見受けられる。
・治水を「非常に重要」だと考える層と「水防活動経験がある」層は岸辺部にハルニレなどを移植して岸辺部の河畔林を保護することに対する評価が他に比べて高い。
・「水防活動経験者」は水路部の樹木に関しては自然重視ではあるものの他の属性に比べてその重要度は非常に低く、より治水重視の回答者が多い。
表11 属性による重要度
    岸辺部の河
畔林
水路部の樹
水路部の池 岸辺部の道
年代 50代~ 5.085 9.815 6.156 10.716
~40代 4.459 10.449 5.598 7.535
世帯人数 3人以下 4.544 9.284 5.908 10.062
4人以上 4.635 10.968 5.654 7.763
治水の重要度 非常に重要 6.592 9.64 6.432 9.979
非常に重要以外 2.369 10.416 5.405 8.166
水防活動の経験 経験あり 10.012 5.756 7.735 16.173
経験なし 3.506 10.692 5.698 7.844
河川への訪問頻度 1年に1度以上 5.104 10.153 6.241 9.884
数年に1度以下 3.156 9.477 4.487 6.989
全体  4.538 9.957 5.806 9.143
アンケート調査のまとめ
本調査では、相生中島地区の川づくりについて行ったワークショップの内容を受けて、CVM調査及びコンジョイント分析調査を用い、相生中島地区近隣住民の川づくりに対する評価の計測を行ったこの結果、CVM調査では川づくり案に対して、20年間の地域全体の総支払意思額が約32億円となり、一定の評価が得られたものと考えられます。また、コンジョイント分析調査では、基本的には自然保護がより重視されているものの治水にも相当の評価をしていることが分かり、ワークショップでの考え方と同じ傾向の回答が得られました。
今後は、ワークショップで得られた方向性とともにこれらアンケート結果を踏まえ、川づくり案を具体化するため技術的検討を進めていく予定です。
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