十勝川相生中島地区川づくりワークショップ|ワークショップのまとめ
十勝川相生中島地区川づくりワークショップ
十勝川相生中島地区川づくりWS とりまとめ
- 平成17年2月 十勝川相生中島地区川づくりWS事務局
1.十勝川相生中島地区川づくりワークショップとは
十勝川相生中島地区は十勝川と札内川の合流点付近に位置し、河川が湾曲し、低水路が狭く、付近に樹木が繁茂していることから洪水時に安全に水を流すことができず、治水対策が求められています。一方で市街地に近接し、広大で豊かな自然環境が残されている地域です。
平成9年の新河川法成立により、河川管理の目的として「治水」、「利水」に加え、「河川環境」(水質、景観、生態系等)の整備と保全が位置付けられました。また、河川整備に関する計画は地域住民の意見を踏まえて定めていくこととなり ました。このような背景のもと、平成14年度から「十勝川相生中島地区川づくりワークショップ(以下WS)」を開催し、相生中島地区の今後の川づくりについて、地域住民、学識経験者、周辺自治体、河川管理者が一緒になって検討を行ってきました。
WSでは、平成16年度までの3年間にわたって意見交換や現地視察を行い、相生中島地区における治水上の課題や現地の自然環境を確認した上で、課題解決の方法や望ましい姿について、十勝川相生中島地区川づくり案としてとりまとめました。また、とりまとめた川づくり案について、周辺の帯広市・音更町・幕別町の住民を対象にアンケート調査を実施したところ、地域住民の考え方とWSの考え方が一致していることを確認しました。
平成9年の新河川法成立により、河川管理の目的として「治水」、「利水」に加え、「河川環境」(水質、景観、生態系等)の整備と保全が位置付けられました。また、河川整備に関する計画は地域住民の意見を踏まえて定めていくこととなり ました。このような背景のもと、平成14年度から「十勝川相生中島地区川づくりワークショップ(以下WS)」を開催し、相生中島地区の今後の川づくりについて、地域住民、学識経験者、周辺自治体、河川管理者が一緒になって検討を行ってきました。
WSでは、平成16年度までの3年間にわたって意見交換や現地視察を行い、相生中島地区における治水上の課題や現地の自然環境を確認した上で、課題解決の方法や望ましい姿について、十勝川相生中島地区川づくり案としてとりまとめました。また、とりまとめた川づくり案について、周辺の帯広市・音更町・幕別町の住民を対象にアンケート調査を実施したところ、地域住民の考え方とWSの考え方が一致していることを確認しました。
- 図 上空から見た相生中島地区
2.十勝川相生中島地区の現状
帯広市、音更町、幕別町にまたがる、十勝川相生中島地区の自然環境と河川整備の状況は以下のようになっています。
○自然環境の現状
十勝川(相生中島地区)は、河畔林、草原、池など多様な環境がみられ、多くの生物が確認されています。しかし、ゴミの投棄や砂利の採取などにより、必ずしも自然環境が守られているとはいえません。
○自然環境の現状
十勝川(相生中島地区)は、河畔林、草原、池など多様な環境がみられ、多くの生物が確認されています。しかし、ゴミの投棄や砂利の採取などにより、必ずしも自然環境が守られているとはいえません。
○河川整備の現状
十勝川相生中島地区は、この付近で十勝川が大きく蛇行しているため、洪水時に水を安全に流すことができず、市街地を含めて広範囲にわたり被害が想定されます。
十勝川相生中島地区は、この付近で十勝川が大きく蛇行しているため、洪水時に水を安全に流すことができず、市街地を含めて広範囲にわたり被害が想定されます。
3.十勝川相生中島地区川づくりWSメンバーの構成
WSメンバーは、公募メンバー(地域住民20名)、ファシリテータ※(学識経験者)、行政メンバー(周辺自治体)、専門メンバー(河川管理者)、補助メンバー、事務局などで構成されました。WSのファシリテータは、北海道大学大学院の加賀屋誠一教授、帯広畜産大学の柳川久助教授、東京工業大学の今村彰秀非常勤講師の3名です。公募メンバーについては、北海道新聞社帯広支社及び十勝毎日新聞社に広告を出して募集を行いました。
なお、WSは3つのグループ(A・B・C)に分かれて討議を行いました。
※ファシリテータ:WSの進行役
なお、WSは3つのグループ(A・B・C)に分かれて討議を行いました。
※ファシリテータ:WSの進行役
- 表 WSの構成メンバー
4.十勝川相生中島地区川づくりWS活動内容
十勝川相生中島地区川づくりWSは、以下のように合計11回(現地視察を含む)のWSとアンケート調査1回が行われました。
5.十勝川相生中島地区WSでの主な意見
十勝川相生中島地区川づくりWSでは、活発な意見交換が行われました。3年間の主な意見・提案は下記の通りです。
<平成14年度の主な意見>
【相生中島地区の現状・印象】
○市街地近郊に豊かな自然環境があり重要だ。
○十勝川のダイナミックさを感じた。
○びっくりするくらいの量のゴミがある。
【川づくりの考え方】
○河畔林は非常に重要だと思うので、それを含めて30年、50年後を見据えた計画作りが必要だ。
○相生中島地区を工事しないでもよい方法はないのか?
○人が散策やサイクリング等ができるような方法が良い。
【相生中島地区の現状・印象】
○市街地近郊に豊かな自然環境があり重要だ。
○十勝川のダイナミックさを感じた。
○びっくりするくらいの量のゴミがある。
【川づくりの考え方】
○河畔林は非常に重要だと思うので、それを含めて30年、50年後を見据えた計画作りが必要だ。
○相生中島地区を工事しないでもよい方法はないのか?
○人が散策やサイクリング等ができるような方法が良い。
<平成15年度の主な意見>
【治水】
○水路は直線ではなく、曲げてしまえばどうか。
○水路の幅が広すぎるのではないか。
【環境】
○撹乱が起きても許可される場所というのはあまり残ってはいない。システムを守っていきたい。
○治水ということも重要だが、景観も重要だし、丹頂やオジロワシが繁殖できるような場所を造るといった視点も必要だ。
【活用】
○エコツーリズムの考え方で、歴史や自然を学び、楽しめる場所にしたい。
【治水】
○水路は直線ではなく、曲げてしまえばどうか。
○水路の幅が広すぎるのではないか。
【環境】
○撹乱が起きても許可される場所というのはあまり残ってはいない。システムを守っていきたい。
○治水ということも重要だが、景観も重要だし、丹頂やオジロワシが繁殖できるような場所を造るといった視点も必要だ。
【活用】
○エコツーリズムの考え方で、歴史や自然を学び、楽しめる場所にしたい。
<平成16年度の主な意見>
【川づくり案】
○私たちの考えた川づくり案は地域住民と同じ傾向であり、自信になった。(住民アンケート結果より)
○水路を造る時期によって、その後の自然環境が異なると考えられるので、最適な掘削時期を検討してはどうか。
○ハルニレ林を残すために、水路の幅や場所を工夫するなどフレキシブルな水路の造成が必要だ
【WSの課題と今後の取組み】
○50年後、100年後の相生中島地区のイメージまで考えられればよかった。
○今後は流域全体を巻き込んで川づくりを考えていく体制作りが必要だ。
【川づくり案】
○私たちの考えた川づくり案は地域住民と同じ傾向であり、自信になった。(住民アンケート結果より)
○水路を造る時期によって、その後の自然環境が異なると考えられるので、最適な掘削時期を検討してはどうか。
○ハルニレ林を残すために、水路の幅や場所を工夫するなどフレキシブルな水路の造成が必要だ
【WSの課題と今後の取組み】
○50年後、100年後の相生中島地区のイメージまで考えられればよかった。
○今後は流域全体を巻き込んで川づくりを考えていく体制作りが必要だ。
6.WSでとりまとめられた十勝川相生中島地区川づくり案
WSで、治水・環境・活用面を考慮しながら、望ましい相生中島地区の姿を検討した結果、川づくり案は以下のようにとりまとめられました。
○川づくり案の内容
この川づくり案では、洪水時に市街地を守るため、下図のように、中州の中央部に幅400m程度、深さ2m程度の水路を新設します。平常時は、川の水が現在と同じように流れ、増水時のみ新水路に水が流れます。なお、今回の案は洪水時の安全性を段階的に向上させる途中のもので、将来には新たな治水対策を追加する必要があります。
○川づくり案の内容
この川づくり案では、洪水時に市街地を守るため、下図のように、中州の中央部に幅400m程度、深さ2m程度の水路を新設します。平常時は、川の水が現在と同じように流れ、増水時のみ新水路に水が流れます。なお、今回の案は洪水時の安全性を段階的に向上させる途中のもので、将来には新たな治水対策を追加する必要があります。
○基本方針
この川づくり案の基本的な考え方は以下の通りです。
(1)洪水時に安全に水が流れる形状とします。
(2)岸辺部、水路部の河畔林は、洪水時の水の流れに支障のない範囲で現状の樹林帯を残します。
(3)水路部については、自然環境や洪水対策に配慮しながら池や散策路を整備して、人が自然とふれあえる場所にします。
(4)岸辺部の道路整備については、できるだけ自然に手を加えないように配慮して行います。
この川づくり案の基本的な考え方は以下の通りです。
(1)洪水時に安全に水が流れる形状とします。
(2)岸辺部、水路部の河畔林は、洪水時の水の流れに支障のない範囲で現状の樹林帯を残します。
(3)水路部については、自然環境や洪水対策に配慮しながら池や散策路を整備して、人が自然とふれあえる場所にします。
(4)岸辺部の道路整備については、できるだけ自然に手を加えないように配慮して行います。
7.アンケート調査の実施とその結果
WSで検討された十勝川相生中島地区川づくり案について、周辺地域住民の評価や考え方の相違点を把握するために2つのアンケートを実施しました。
<実施内容>
(1)期間:2004年8月10日~9月24日
(2)対象者:帯広市(1,440世帯)、音更町(350世帯)、幕別町(210世帯)の合計2,000世帯
(3)方法:十勝川相生中島地区川づくり案の総合評価と部分評価
調査1)川づくり案総合評価に関する調査(総合評価)
川づくり案に関して、地域住民がどの位の金額的な価値を見出しているかを調査
調査2)川づくり案の内容評価に関する調査(部分評価)
川づくり案の整備方法に関して、自然と治水・活用の優先すべき項目を調査
(4)回収率:調査1(35.2%)、調査2(35.6%)、合計(35.4%)
<調査1の結果>
一世帯当たりの支払意思額は2,185円、地域住民の20年間の総支払意思額は約30億円となり、近年実施されている他の調査と比較すると高めの支払意思額を示していました。このことから、WSで検討された川づくり案に対して地域住民から一定の評価が得られていることを確認しました。
<調査2の結果>
十勝川相生中島地区川づくり案においては、水路部の樹木、岸辺部の道路が他の要因に比べて重要視されていました。また、いずれの要因でも治水・活用重視よりは自然重視の方針を希望していることがわかりました。
また、アンケート調査結果とWSでの検討内容を比較すると、細かい差異は見られましたが全体的にWSでの意見は地域の意見と一致していることが分かりました。
<実施内容>
(1)期間:2004年8月10日~9月24日
(2)対象者:帯広市(1,440世帯)、音更町(350世帯)、幕別町(210世帯)の合計2,000世帯
(3)方法:十勝川相生中島地区川づくり案の総合評価と部分評価
調査1)川づくり案総合評価に関する調査(総合評価)
川づくり案に関して、地域住民がどの位の金額的な価値を見出しているかを調査
調査2)川づくり案の内容評価に関する調査(部分評価)
川づくり案の整備方法に関して、自然と治水・活用の優先すべき項目を調査
(4)回収率:調査1(35.2%)、調査2(35.6%)、合計(35.4%)
<調査1の結果>
一世帯当たりの支払意思額は2,185円、地域住民の20年間の総支払意思額は約30億円となり、近年実施されている他の調査と比較すると高めの支払意思額を示していました。このことから、WSで検討された川づくり案に対して地域住民から一定の評価が得られていることを確認しました。
※支払意思額とは 調査対象(ここでは川づくり案での整備)に対して「○○円くらいなら支払ってもいい」と考えられる金銭 的価値のことです。調査1では対象者に支払意思額を尋ねることによって川づくり案の価値を評価し ています。 |
十勝川相生中島地区川づくり案においては、水路部の樹木、岸辺部の道路が他の要因に比べて重要視されていました。また、いずれの要因でも治水・活用重視よりは自然重視の方針を希望していることがわかりました。
また、アンケート調査結果とWSでの検討内容を比較すると、細かい差異は見られましたが全体的にWSでの意見は地域の意見と一致していることが分かりました。
8.これまでの十勝川相生中島地区川づくりWSをふりかえって
これまでの十勝川相生中島地区川づくりWSでの成果と今後の課題は以下の通りです。
<WSの成果>
○治水・環境・活用を考慮した川づくり案の作成
今回のWSでは、地域住民、学識経験者、周辺自治体、河川管理者が共に、必要な治水対策に加え、相生中島地区の恵まれた自然環境の保全方針や今後の活用方針についても考慮した川づくり案をとりまとめることができました。また、アンケート調査結果から、住民の考え方とWSの考え方が一致していることを確認しました。
○川づくりにおける十勝方式の確立
地域住民がより主体的に計画づくりに参加するプロセスを導入できたこと、また、アンケート調査による川づくり案の評価すなわち計画の事前評価を行ったことなど、計画の段階からの積極的な住民参加のプロセス(十勝方式)を確立できたと考えています。
<今後の課題>
○維持管理での官民のパートナーシップの確立川づくり事業とは、その理念から具体的な川づくり案の作成、実施、さらに管理・運営までの総合的なプロセスによって形成されます。したがって、住民参加は単に計画への意見を出すことだけではなく、川づくり事業の管理・運営の段階的、総合的なプロセス全てに参加することが必要だと考えています。
よって、本川づくりでも、計画及び事業実施前の段階で終わるのではなく、事業実施中、そして完成後の維持管理まで含めた総合的なプロセスが必須であり、総合的な住民参加システムを構築・確立していくことが必要と考えています。
<WSの成果>
○治水・環境・活用を考慮した川づくり案の作成
今回のWSでは、地域住民、学識経験者、周辺自治体、河川管理者が共に、必要な治水対策に加え、相生中島地区の恵まれた自然環境の保全方針や今後の活用方針についても考慮した川づくり案をとりまとめることができました。また、アンケート調査結果から、住民の考え方とWSの考え方が一致していることを確認しました。
○川づくりにおける十勝方式の確立
地域住民がより主体的に計画づくりに参加するプロセスを導入できたこと、また、アンケート調査による川づくり案の評価すなわち計画の事前評価を行ったことなど、計画の段階からの積極的な住民参加のプロセス(十勝方式)を確立できたと考えています。
<今後の課題>
○維持管理での官民のパートナーシップの確立川づくり事業とは、その理念から具体的な川づくり案の作成、実施、さらに管理・運営までの総合的なプロセスによって形成されます。したがって、住民参加は単に計画への意見を出すことだけではなく、川づくり事業の管理・運営の段階的、総合的なプロセス全てに参加することが必要だと考えています。
よって、本川づくりでも、計画及び事業実施前の段階で終わるのではなく、事業実施中、そして完成後の維持管理まで含めた総合的なプロセスが必須であり、総合的な住民参加システムを構築・確立していくことが必要と考えています。
<謝辞>
十勝川相生中島地区川づくり案の検討にあたり、本WSの趣旨を理解し快く協力して頂き、終始熱心な意見交換をしていただいたメンバーの方々に心より感謝致します。本当にありがとうございました。
十勝川相生中島地区川づくり案の検討にあたり、本WSの趣旨を理解し快く協力して頂き、終始熱心な意見交換をしていただいたメンバーの方々に心より感謝致します。本当にありがとうございました。
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